画面越しにクレーンゲームを動かす会社
サイバーステップホールディングスは、オンラインのクレーンゲーム「トレバ」を運営しています。スマートフォンやパソコンの画面越しに、どこかに並んでいる本物のクレーンゲーム機を操作して遊ぶものです。取れた景品は、実物が家に届きます。短信にも景品の仕入れや配送の話が出てきます。ゲームセンターに行く時間のない人が、子どもを寝かせたあとに遊ぶ。そういう場面を想像すると分かりやすいと思います。
ほかに「テラビット」というゲームもあります。最近は商品の企画・卸売、AIを使った販売の支援、タレントのマネジメント、防災関連と、子会社を作ったり買ったりして手を広げています。トレバで身につけた景品の仕入れ方を生かして、実際の店舗を開く準備も進めています。
売上は8割増え、赤字はほぼ倍に
2026年10月15日に発表された、2027年5月期第1四半期(6月から8月)の決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8億6,400万円 | 4億8,200万円 | +79.1% |
| 営業利益 | △5億9,600万円 | △3億2,400万円 | — |
| 経常利益 | △6億1,100万円 | △3億5,300万円 | — |
| 純利益 | △6億3,100万円 | △3億1,000万円 | — |
売上は8割近く増え、赤字はほぼ倍に広がりました。1株あたりの赤字は15円05銭から7円71銭へ縮んでいます。ただしこれは、期中の平均株式数が前年同期のおよそ4倍になったためです。赤字の総額は膨らんでいます。前の期に新株予約権の行使や新株の発行で資金を集めたので、株数が増えました。
赤字が広がった分の大半は、本社の費用でした
事業ごとの数字は、短信の後ろのほうにあるセグメント情報の注記に載っています。
| 今回 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| オンラインゲーム事業の売上高 | 6億7,300万円 | 4億3,700万円 |
| オンラインゲーム事業の損益 | △7,000万円 | △1億9,600万円 |
| エンターテインメント事業の損益 | — | △600万円 |
| その他の損益 | △1億5,700万円 | — |
| 全社費用 | △3億6,800万円 | △1億2,200万円 |
| 営業損益 | △5億9,600万円 | △3億2,400万円 |
出どころはセグメント情報の注記です。「その他」は前の期の途中にできた区分なので、前年同期の欄はありません。
トレバが入っているオンラインゲーム事業は、売上が5割増えて、赤字は3分の1ほどまで縮みました。本業が悪くなって赤字が広がったのではありません。
引っかかったのは表のいちばん下、全社費用の行です。どの事業にも配分されない費用で、注記では管理部門の費用だと説明されています。つまり本社の費用です。これが1億2,200万円から3億6,800万円へ増えていました。前年同期の3倍です。
営業赤字は前年同期より2億7,200万円広がりました。5億9,600万円から3億2,400万円を引いた数字です。同じ期間に全社費用は2億4,600万円増えています。3億6,800万円から1億2,200万円を引きました。2億4,600万円を2億7,200万円で割ると、赤字の広がりのおよそ9割を本社の費用が占めていることになります。
全社費用の内訳は、決算短信には書かれていません。子会社が4社増えれば、経理や管理の手間も増えます。短信の追加情報には、前の期に買った子会社TRUXiAで消費税と法人税等の未納が見つかり、すでに納めたとあります。買った会社の面倒を見るのにも費用がかかる、と私は受け取りました。
売上の伸びに、粗利がついてきていない
売上は3億8,200万円増えました。一方で売上総利益(粗利)は2億9,700万円から3億4,700万円になりました。増えたのは5,000万円だけです。売上原価が1億8,500万円から5億1,700万円へ膨らんだからです。前年同期の3倍近くです。
売上に対する粗利の割合は、6割強から4割ほどに下がりました。前年同期は2億9,700万円を4億8,200万円で割りました。今回は3億4,700万円を8億6,400万円で割っています。品物を仕入れて卸す商売のように、原価の重い事業が加わったためだと推測しています。事業ごとの原価は短信に無いので、確かめられません。
販売費及び一般管理費は6億2,100万円から9億4,300万円になりました。3億2,200万円の増加です。粗利の増加分の6倍以上です。売上が増えても赤字が広がるのは、この差のせいです。
12億5,000万円の仮払金が、3か月で消えた
貸借対照表を5月末と8月末で並べると、資産の中身が大きく入れ替わっていました。
| 2026年5月末 | 2026年8月末 | |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 36億3,400万円 | 28億4,000万円 |
| 仮払金 | 12億5,000万円 | 0 |
| のれん | 6億9,800万円 | 12億4,200万円 |
| 保証金 | 9,200万円 | 5億7,700万円 |
| 商品 | 2,700万円 | 3億9,600万円 |
| 有形固定資産 | 100万円 | 1億9,100万円 |
仮払金は、お金はもう払ったものの、何の支払いなのかがまだ確定していないときに使う科目です。経理にいたころ、月末になるとこれを正しい科目に振り替える作業に追われました。12億5,000万円という額は、ふだん目にする仮払金の大きさではありません。
それが8月末にはゼロになっています。同じ3か月で、のれん、保証金、商品、建物などの有形固定資産が増えました。注記によると、HOMEGAMEブランドのCAP事業を譲り受けたことで、のれんが6億7,000万円増えています。この金額は、まだ暫定の計算です。
仮払金が何の支払いだったのかは、決算短信には書かれていません。前の期のうちに、事業の譲り受けや店舗のための保証金として払っていたお金が、この四半期で本来の科目に振り替えられた、と私は読みました。保証金が6倍になったのは、実際の店舗を開く準備と話が合います。
現金は3か月で7億9,400万円減り、28億4,000万円になりました。どこへ出ていったのかを確かめようと最後のほうまでめくると、キャッシュ・フロー計算書は「作成しておりません」の一文で済まされていました。第1四半期は作らなくてよい決まりなので、珍しいことではありません。ただ、この会社については、いちばん見たかった表です。
会社の説明は「先行投資の段階」
会社は短信の説明文で、新しい事業は「事業基盤の構築に向けた先行投資段階」にあると書いています。前の期まで6期続けて大きな営業損失を出しています。このため継続企業の前提に重要な疑義があり、重要な不確実性も認められる、とも書いています。監査法人の期中レビュー報告書にも、同じ内容が記されています。
対応策として挙げているのは4つです。資金を集めること、既存のゲームで稼ぐ力を高めること、経費を削ること、事業を絞り込むことです。経費については、外注先の見直し、営業所の縮小と使っていない区画の転貸、役員報酬の削減と、具体的に書かれています。
……削ると書いた同じ短信で、本社の費用は3倍になっている。
トレバについての説明は、数字と合っています。セグメントの赤字は実際に縮みました。一方で、全社費用がなぜ増えたのかは、決算短信には書かれていません。事業の売却も視野に入れると書きながら、この四半期にも子会社を1社作り、事業を1つ譲り受けています。説明のこの部分は、割り引いて聞いています。
通期予想も配当予想も、未定のまま
2027年5月期の業績予想は「合理的な業績予想の算定が困難」として未定です。配当予想も未定で、前の期の配当はゼロでした。予想が無いので、進捗率は出せません。
会社が今回示したのは、この3か月の実績だけです。実店舗をいつ開くのか、追加の資金調達をいつ、どの方法で行うのかは、決算短信には「最適な手法により進める」とあるだけで、時期や規模は示されていません。表紙を見ると、決算補足説明資料の作成も説明会の開催も「無」となっています。
私の見方
赤字が広がった理由については、2つの考え方があります。新しい事業に先にお金をかけている段階で、事業が育てば赤字は縮む、という考え方。もう一つは、事業を増やしたことで本社そのものが重くなった、という考え方です。
私は後者の見方をしています。理由は、赤字の広がりの9割が、どの事業にも配分されない本社の費用だからです。先行投資なら、まずは新しい事業の区分である「その他」の赤字に表れるはずです。トレバの改善は本物ですが、その上に載っている本社の費用が、改善分を上回るペースで増えています。
心配性なので、次の決算でもまず全社費用の行を確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
全社費用3億6,800万円の内訳と、12億5,000万円の仮払金が何の支払いだったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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