オリンパス(7733)2027年3月期 第1四半期決算分析――借りて還元する形が気になる

オリンパス(7733)2027年3月期 第1四半期決算分析――借りて還元する形が気になる 決算を読む

胃カメラ、大腸カメラと呼ばれている消化器の内視鏡を作っている会社です。健康診断で胃の検査を受けたことのある方なら、口や鼻から入っていく細い管の先のカメラを覚えていると思います。あの本体と、そこに通して使う処置具、そして病院に置いた機器の修理や保守までを商売にしています。買うのは国内外の病院で、使うのは消化器内科の医師です。

もう一つの柱が外科向けで、泌尿器科や呼吸器科で使う内視鏡、手術中に組織を切ったり止血したりする機器を売っています。私の世代にはカメラの会社という印象が残っていますが、いまの短信に載っている事業はこの二つだけです。稼ぎ頭が消化器の内視鏡で、外科向けはまだ赤字、という形が今回もそのまま出ています。

この決算で何が起きたか

8月7日に出た第1四半期決算です。売上が2割近く増えて、営業利益は7割以上増えました。

項目今回前年同期増減率
売上高2,404億円2,065億1,200万円+16.4%
営業利益289億5,100万円165億9,700万円+74.4%
経常利益—(IFRSのため記載なし)
純利益191億200万円89億9,100万円+112.5%

数字の並びだけなら文句のない四半期です。ただ、前年の営業利益には一度きりの収入が入っていて、今年には入っていません。その差し引きが表の外にあります。

前年の一時収入60億円が消えて、なお増益

短信の3ページ目に、営業利益の内訳が載っています。前年の第1四半期には、株式会社エビデントとのライセンス使用許諾の対価として59億9,500万円が「その他の収益」に入っていました。今年は同じ項目に重要な取引はありません。ここだけで約60億円、今年のほうが不利な比べ方です。

調整後営業利益は、営業利益からその他の収益と費用を除いた数字で、会社側の主な指標です。並べるとこうなります。

前年同期今回増減
営業利益165億9,700万円289億5,100万円+123億5,400万円
その他の収益・費用等の合算36億5,500万円△28億4,500万円△65億円
調整後営業利益131億8,800万円306億7,600万円+174億8,800万円
うち為替の影響+45億900万円

調整後の増益は174億8,800万円でした。そこから、短信に載っている為替の効果45億900万円を引きます。残るのは約129億8,000万円です。前年の調整後営業利益が131億8,800万円ですから、為替抜きの増え幅が前年の利益とほぼ同じ大きさです。つまり、為替を除いても利益がほぼ倍になった計算です。これは私の引き算です。

倍になった中身は、売上総利益が216億9,800万円増えたのに対して、販売費及び一般管理費が28億4,400万円しか増えていないことにあります。売上が2割伸びて、経費は2%ほどしか伸びていません。研究開発費と人件費が減ったからだと書いてありますが、前年の研究開発費の額は短信に載っていないので、いくら削ったのかまでは分かりません。

現金が3か月で700億円近く減った

引っかかったのは損益ではなく、貸借対照表の一番上です。現金及び現金同等物が1,880億3,800万円から1,185億4,500万円へ減っています。3か月で694億9,300万円の減少です。営業キャッシュ・フローは143億3,400万円のプラスなので、減った理由は本業の外にあります。

3か月の主な出入り金額
自己株式の取得△600億円
配当金の支払い△330億3,300万円
BioProtect社の買収△431億7,200万円
有形固定資産の取得△162億5,300万円
社債・借入金による調達+779億5,000万円
(うち短期借入金・コマーシャル・ペーパー)+579億5,000万円

自社株買い600億円は、5月13日に立会外で一日で終えています。取得価額の上限600億円をその日に使い切りました。同じ四半期に短期で579億5,000万円を借りています。長期の借入金利も上がっています。前年の第1四半期に借りたときは0.938%から1.55%の間でした。今年5月に借りた200億円は違います。金利は2.23%と2.61%でした。

自己株式の取得は借入の金利に見合うかどうかで判断するものだと、財務の仕事で教わりました。……いや、それは私の勤め先の話で、この会社の判断ではない。親会社所有者帰属持分比率は52.8%から49.0%へ下がりました。これだけの利益が出た四半期に比率が下がるのは、稼いだ額より配った額のほうが大きかったからです。

買収のほうも書いておきます。BioProtect社は、前立腺がんの放射線治療のときに直腸を守る、体内で分解するバルーンを作るイスラエルの会社です。支払対価は433億8,000万円でした。受け入れた資産と負債の純額は14億500万円です。差の419億7,500万円がのれんに入りました。この配分はまだ暫定です。

営業キャッシュ・フローの改善は、税金の払いが少なかった分が大半

営業キャッシュ・フローは前年の152億300万円のマイナスから、143億3,400万円のプラスへ変わりました。差は295億円です。法人所得税の支払額は356億4,400万円から136億2,500万円へ減りました。その減った分が、差のうち約220億円を占めます。税引前利益の増加は106億7,600万円なので、現金の入り方が良くなった理由の大半は税金の支払いが少なかったことです。これも私の引き算です。

棚卸資産も142億1,600万円増えています。一方で会社は「一部製品では供給を上回る受注状況が継続」と書いています。足りない製品と積み上がっている製品が別なのだと考えていますが、どの製品かは短信には書かれていません。

損失を広げた関税が、四半期が終わってから一部戻ってきた

外科向けのサージカルインターベンション事業は、営業損失が18億5,600万円から24億400万円へ広がりました。米国関税で原価率が悪化したため、と短信にあります。全社の売上原価率も34.8%と0.2ポイント悪くなっていて、理由は同じ関税です。

ここで短信の最後の注記が効いてきます。連邦最高裁判所が、国際緊急経済権限法に基づく関税を無効と判断しました。それを受けて、米国子会社が還付の手続きを始めました。そして後発事象として、四半期が終わったあとに申請額の一部を受け取ったとあります。原価を押し上げた関税の一部が、決算の締め日の向こう側で戻っている形です。

申請額も受け取った額も短信には無いので、どれだけ戻るのかは読み取れませんでした。通期予想にそれを織り込んでいるのかどうかも、短信からは分かりません。

会社はどう説明しているか

増収の理由は具体的です。北米で被写界深度を広げた技術を載せたスコープの採用が進んだこと、内視鏡用の超音波観測装置に強い需要があること、欧州ではポーランドでEUの補助金を使った案件があり、前期末の受注残の売上計上が進んだこと。製品と地域の名前が並んでいるので、そのまま受け取っています。

留保するのは経費のほうです。研究開発費と人件費の減少が販管費比率を良くしたと書いてありますが、減った額も理由も短信にはありません。売って増えた利益と、削って浮いた利益は、続き方が違います。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は5月12日に出した幅のある形のままで、変更はありません。

通期予想第1四半期進み具合
売上高1兆550億円〜1兆760億円2,404億円約22〜23%
営業利益1,365億円〜1,555億円289億5,100万円約19〜21%
純利益955億円〜1,090億円191億200万円約18〜20%

約の付いた数字は、第1四半期の実績を予想の下限と上限で割った私の計算です。

4分の1に届いていませんが、この会社の第1四半期はもともと軽いようです。営業利益の予想上限は1,555億円で、その横に前期比60.1%増と載っています。この増加率で割り戻すと、前期の通期はおよそ971億円です。前年の第1四半期165億9,700万円は、その17%ほどでした。今年は19〜21%まで来ているので、前年の歩き方と比べれば先に進んでいます。

私はどう読んだか

増益は本物だと考えています。理由は、前年にあった60億円の一時収入が消えたうえで、為替を除いても調整後の利益が倍になっているからです。その源は売上総利益の増加です。粗利率がほぼ変わらないまま売上が2割増えた、という形です。

それでも頭に残るのは現金です。稼いだ額より配った額が大きく、差額を短期で借り、その金利は去年より高い。心配性なので、次の短信では短期借入金の行を最初に確かめることになると思います。

上がるかは知りません。関税がいくら戻るかで外科向けの赤字の見え方が変わるはずですが、それは次の短信を待つしかありません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514227.pdf

米国関税の還付の申請額と、四半期後に受け取った額は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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