技術書の棚にある本を作っている会社です
この会社は、プログラミングやネットワークの入門書、IT資格の参考書を出している出版社を傘下に持つ持株会社です。書店の技術書のコーナーに行けば、たいてい何冊かは並んでいます。買う人は、仕事で必要になった技術者か、これから資格を取ろうとしている人です。
事業はそれだけではありません。IT企業に向けたマーケティングの手伝い、ソフトウェアやスマートフォン向けコンテンツの開発、技術者向けの研修、医療系の人材紹介。ここまでが人と知識を売る商売です。
そしてもう一つ、有価証券と不動産への投資運用を、事業として持っています。余った資金の運用ではなく、決算で一つの事業として数えられています。この並びを頭に入れておくと、今回の短信は読みやすくなります。
売上は前年並みで、利益だけが跳ねています
10月22日に出た中間決算です。2026年4月から9月までの半年をまとめたものです。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億3,400万円 | 34億5,200万円 | -0.5% |
| 営業利益 | 7億5,200万円 | 3億8,800万円 | +93.9% |
| 経常利益 | 7億6,200万円 | 3億600万円 | +148.8% |
| 純利益 | 5億1,600万円 | 2億200万円 | +154.8% |
売上はほとんど動いていないのに、利益は倍近くになっています。営業利益率は1割強から2割強へ上がりました。売る量が増えて儲かった決算ではありません。中身が入れ替わっています。何がどう入れ替わったのかは、この表には出ていません。
増えた利益のほぼ全部が、投資運用から出ています
短信11ページ目のセグメント情報を、前年と並べました。
| 事業 | 売上(今回) | 売上(前年同期) | 利益(今回) | 利益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|
| 出版 | 17億3,900万円 | 19億5,300万円 | 2億1,900万円 | 2億2,300万円 |
| コーポレートサービス | 2億6,100万円 | 3億400万円 | 400万円 | △2,200万円 |
| ソフトウェア・ネットワーク | 2億9,400万円 | 4億2,900万円 | △200万円 | 3,500万円 |
| 教育・人材 | 4億7,600万円 | 5億2,400万円 | 6,400万円 | 1億1,500万円 |
| 投資運用 | 6億6,200万円 | 2億4,000万円 | 5億9,500万円 | 1億8,600万円 |
| 5事業の合計 | 34億3,400万円 | 34億5,200万円 | 8億8,200万円 | 5億3,800万円 |
利益の合計は、全社の費用を引く前の数字です。ここから本社費用などを差し引いて、営業利益7億5,200万円になります。
5事業の利益合計は、5億3,800万円から8億8,200万円へ増えました。増加額は3億4,400万円です。投資運用だけを見ると、1億8,600万円から5億9,500万円へ増えています。こちらの増加額は4億900万円です。全体の増え方より、投資運用1つの増え方が大きいのです。投資運用の増加額から全体の増加額を引くと6,500万円。つまり投資運用を除く4事業は、合計では6,500万円利益を減らしています。これは私の引き算です。
売上のほうは、4事業がそろって減っています。出版が1割以上、ソフトウェア・ネットワークは3割以上減りました。全体の売上が横ばいに見えたのは、投資運用が2億4,000万円から6億6,200万円へ増えて、その減少分を埋めたからです。
……いや、これはもう、一つの事業の決算を見ているのと変わらない。
引っかかったのはそこです。ただ、同じ表の中で前向きに読んだところもあります。出版は売上が1割以上減ったのに、利益は2億2,300万円から2億1,900万円で、ほぼ横ばいに踏みとどまっています。コーポレートサービスは2,200万円の赤字から400万円の黒字に戻りました。
経常が営業よりさらに伸びたのは、為替の裏返しです
経常利益の伸びは+148.8%で、営業利益の+93.9%より大きくなっています。損益計算書の営業外の欄を見ると、理由が分かります。
前年の同じ半年は、為替差損6,500万円が営業外費用に入っていました。今回はそれが消えて、代わりに為替差益2,300万円が営業外収益に入っています。合わせて8,800万円ぶん、ひっくり返ったわけです。
営業利益の増加は、7億5,200万円から3億8,800万円を引いた額です。3億6,400万円になります。経常利益の増加は、7億6,200万円から3億600万円を引いた額で、4億5,600万円です。差は9,200万円で、為替の振れ8,800万円でほぼ埋まります。前年に損を出した側にいて、今年は得をした側にいた、というだけの話です。
営業活動の現金は、マイナスから戻っています
キャッシュ・フロー計算書を見ると、営業活動による現金は、前年の7,000万円の流出から、今回は5億7,400万円の流入に変わっていました。税金を引く前の利益7億6,100万円が土台です。
もう一つ効いているものがあります。先に筋を言うと、売掛金の回収です。受取手形・売掛金及び契約資産は、3月末の15億7,900万円から9月末の12億9,300万円へ減りました。その差額2億8,600万円が現金として入ってきています。売上が減った事業が多いので、請求の残りも減ったことになります。
手元の現金及び預金は29億8,600万円から32億700万円へ。利益が出て、現金も増えています。ここまでは財務諸表の数字です。
会社はどう説明しているか
短信4ページ目で、会社は投資運用についてこう書いています。安定的な投資運用量の増加にともなう配当金収入の増加に加え、割高となっている保有株の一部売却を進めたことが主な理由、と。同じ日に出た説明会資料でも、一部保有株式の売却を進めたという書き方です。
出版については、市場に合わせた構造改革を推進したとあります。コーポレートサービスは受注の質の見直しとコスト削減、ソフトウェア・ネットワークは開発市場の変化、教育・人材はIT研修の軟調と人材コストの増加。各事業の説明はそれぞれ付いています。
そのまま受け取れるのですが、一つだけ留保します。投資運用の売上6億6,200万円のうち、配当金収入がいくらで、株を売って得た分がいくらなのか。その内訳は短信にも説明会資料にも書かれていません。配当は持っている間ずっと入ってきますが、売却で立つ利益は売れる株がある間だけです。内訳が見えないと、この利益が来年も同じ形で出るのかどうかは決められません。
通期予想は据え置きで、下半期は減る置き方です
| 項目 | 中間期までの実績 | 通期予想 | 進み具合 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億3,400万円 | 67億円 | 51.3% |
| 営業利益 | 7億5,200万円 | 11億円 | 68.4% |
| 経常利益 | 7億6,200万円 | 10億円 | 76.2% |
| 純利益 | 5億1,600万円 | 7億円 | 73.7% |
進み具合は、実績を通期予想で割った私の計算です。売上はちょうど半分ですが、利益はどれも7割前後まで来ています。経常はもう8割に近い。
それでも会社は予想を動かしませんでした。10月19日に公表したものから変更はない、と短信4ページ目に書いてあります。
残りの半年にどれだけを見込んでいるのか、計算してみます。通期予想の営業利益11億円から、中間期の7億5,200万円を引きます。残り半年の営業利益は3億4,800万円です。前年はどうだったか。説明会資料にある前期の通期営業利益9億5,500万円から、前年の中間期3億8,800万円を引くと、前年の下半期は5億6,700万円でした。3億4,800万円は、そこから4割近く低い水準です。経常と純利益では、見込んだ額が前年の同じ半年の半分を下回ります。
上期に出た株の売却益が、下期にも同じだけ出るとは考えていない、ということです。この据え置きは強気ではありません。
私はどう読んだか
収益性が上がったことは事実として受け取ります。利益率も1株利益も、半年で倍以上になりました。自己株式の取得も進んでいて、中間期までに2億300万円を買い、期中平均の株式数は1,613万株から1,513万株へおよそ100万株減っています。
そのうえで、私は慎重な側の見方をしています。理由は、増えた利益の出どころが投資運用の一事業に偏っているからです。人と知識を売る4つの事業は、売上がそろって減っています。株を売れば利益は立ちますが、同じことを毎期続けられるとは短信からは読めません。
出版が売上の減少に対して利益を守った点は、今回いちばん前向きに読んだところです。この踏みとどまりが構造改革の成果として続くのか、一度きりなのかは、次の決算で見ます。
出典:決算短信(会社発表)
投資運用の売上のうち、配当金収入と株の売却で得た分がそれぞれいくらなのかは、短信にも説明会資料にも書かれておらず、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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