はじめに
KOAは、抵抗器を作っている会社です。抵抗器は、電気の流れを弱めたり、電圧を整えたりする部品です。基板の上に何十個、何百個と並んでいて、一つひとつは米粒より小さく、値段もわずかです。それでも、これが無いと電子機器は正しく動きません。
買い手は、自動車や産業機器、通信機器を作るメーカーと、部品を仕入れて各地に届ける商社です。車が電気で走るようになり、運転を手助けする仕組みが増えるほど、一台に載る電子部品は増えます。工場の中心は長野にあり、国内で作って海外へ送る形の会社です。
売上は2割増、純利益だけが経常利益を追い越した
2026年10月23日に出た中間決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 436億2,900万円 | 346億3,400万円 | +26.0% |
| 営業利益 | 37億3,900万円 | 13億500万円 | +186.4% |
| 経常利益 | 39億8,300万円 | 16億1,800万円 | +146.2% |
| 純利益 | 58億2,000万円 | 11億5,400万円 | +404.1% |
売上が2割以上増えて、営業利益はほぼ3倍です。ただ、純利益が経常利益を上回っています。ここに引っかかりました。
純利益を押し上げたのは、中国の工場移転の補償金
理由は短信の4ページ目に書いてあります。中国の子会社、興和電子(太倉)有限公司が工場を移すことになり、政府からの移転補償金30億9,800万円を特別利益に計上しました。
6ページ目の損益計算書では、税金を引く前の利益が70億3,700万円です。そのうち補償金が4割強を占めます。30億9,800万円を70億3,700万円で割った、私の計算です。工場の移転に伴うお金で、抵抗器を売って生まれた利益ではありません。
補償金のうち、現金で入ったのは9億100万円
8ページ目のキャッシュ・フロー計算書には、移転補償金の受取額が9億100万円とあります。計上した30億9,800万円から、この9億100万円を引きます。約21億9,700万円が、まだ入っていないことになります。残りがいつ入るのかは、決算短信には書かれていません。
営業キャッシュ・フローは51億1,600万円で、前年同期の48億2,200万円を上回りました。ただ、ここから補償金の9億100万円を引くと約42億1,500万円です。補償金を外せば、前年より少ない計算になります。
前年より少なくなった理由は二つあります。一つは、売上債権が21億7,900万円増えたことです。もう一つは、法人税等の支払額が前年同期の4億6,000万円から17億5,800万円に増えたことです。売掛金は半年で159億5,800万円から180億1,800万円になりました。
売上が2割以上増えた半年なので、売掛金が膨らむのは自然な動きです。税金も、前の期に稼いだぶんを払っているものです。現金の伸びが鈍い理由ははっきりしていて、悪い兆しとは受け取りませんでした。
お金の使い道も変わっています。有形固定資産の取得は、前年同期の54億9,700万円から17億1,100万円に減りました。そのうえで、長期借入金を44億8,400万円返しました。手元の現金は減りましたが、借入金を返した結果です。自己資本比率は58.4%から62.6%に上がっています。
受注が、売上を100億円近く上回っている
短信の最後、10ページ目に受注の表があります。この半年の受注高は532億600万円で、前年同期の1.5倍ほどです。売上高の436億2,900万円を引くと、約95億7,700万円の差があります。
……売った以上に、注文が来ている。
| 地域 | 受注高 | 前年同期比 | 受注残高 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 168億1,900万円 | 151.1% | 92億2,500万円 | 185.3% |
| アジア | 207億6,300万円 | 171.6% | 94億7,100万円 | 247.0% |
| アメリカ | 75億8,200万円 | 134.8% | 31億2,900万円 | 189.3% |
| ヨーロッパ | 80億4,100万円 | 118.0% | 14億1,500万円 | 131.6% |
| 合計 | 532億600万円 | 149.1% | 232億4,100万円 | 201.4% |
受注残高は全体で前年同期の約2倍、アジアは2.5倍近くです。どの地域も前年を上回っていて、一つの地域だけが膨らんだ形ではありません。
9ページ目のセグメント情報では、日本の利益が9億100万円から25億円に増えました。日本は海外の子会社向けにも226億6,200万円を売っています。海外の注文が増えると、国内の工場に仕事が戻ってくる作りです。
会社は、需要の広がりと円安を理由に挙げています
4ページ目の説明では、中国の自動車向け、欧米と中国の商社向け、アジアのAI関連機器向け、日本の産業機器向けがそろって伸び、円安も効いたとしています。原材料価格は上がったものの、売上の増加で補えた、という説明です。
地域ごとの受注の表と合っているので、需要の話はそのまま受け取ります。円安のほうは、そのままとはいきません。売上のうち為替で増えた分がいくらかは、決算短信には書かれていません。営業外では為替差損が6,300万円から2億1,200万円に増えていて、為替の効き方は一方向ではありません。
営業利益は半分に届かず、下期に上期以上を見込む
| 中間期の実績 | 通期予想 | 進捗率 | 下期に必要な額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 436億2,900万円 | 915億円 | 約47.7% | 約478億7,100万円 |
| 営業利益 | 37億3,900万円 | 83億1,000万円 | 約45.0% | 約45億7,100万円 |
| 純利益 | 58億2,000万円 | 96億6,000万円 | 約60.2% | 約38億4,000万円 |
約の付いた数字は、通期予想と中間期の実績から私が引き算・割り算したものです。
営業利益は半分に届いていません。下期に必要な45億7,100万円から、上期の37億3,900万円を引きます。下期は上期より8億円ほど多く稼ぐ前提です。受注残が前年の倍ある以上、上期より売上が増えるという見込みは、受注の表と食い違いません。
純利益が6割まで来ているのは、補償金が入ったからです。表紙によると、今回は通期予想と期末配当予想を修正しています。年間配当は前期の32円から78円の予想です。修正前の数字と理由は同じ日の別の発表にあり、そちらはまだ開いていません。
私はどう読んだか
純利益は、補償金を外して考えます。そのうえで私は、営業利益の伸びは需要が増えた結果だという見方をしています。理由は、受注が売上を上回り、受注残がどの地域でも前年より厚くなっているからです。
心配性なので、下振れを先に挙げておきます。営業利益の進捗率が半分に届いていないこと、そして円安の効き方が見えないことです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
移転補償金の残り約21億9,700万円が、いつ、貸借対照表のどの科目に入っているのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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