宮入バルブ製作所(6495)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の理由が説明と違って読めます

宮入バルブ製作所(6495)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の理由が説明と違って読めます 決算を読む

プロパンガスのボンベを思い浮かべてください。灰色の容器の頭に付いている、ハンドルの付いた金属の栓。あれがバルブです。漏れたら火事になる部品なので、誰でも作れるものではありません。

宮入バルブ製作所は、このLPガス容器用のバルブを主力にしている会社です。素材は黄銅で、短信では「黄銅弁」と呼んでいます。ほかに設備用・車載用の鉄鋼弁と、LNGのような極低温の液体を扱う低温弁も作っています。買うのは容器を作るメーカーや、ガスを供給する事業者で、私たちが店で手に取ることはありません。

黄銅を削って作る仕事なので、削りかすが出ます。この会社はそのかすの売却も売上高に載せています。今回の短信で私が引っかかったのは、そのあたりからでした。

この決算で何が起きたか

8月10日に出た第1四半期の決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高21億1,000万円16億2,700万円+29.6%
営業利益6,800万円2,600万円+160.4%
経常利益6,400万円2,500万円+151.5%
純利益3,900万円1,200万円+207.6%

営業利益率は1.6%から3.2%へ倍になっています。会社は「原価低減努力および製品値上げが奏功した」と書いています。私はそこで一度、手が止まりました。

粗利率は下がっています

損益計算書を開きます。売上総利益は2億5,745万円から3億416万円へ増えました。粗利率を割ってみます。

売上総利益売上高粗利率
前年同期2億5,745万円16億2,785万円約15.8%
今回3億416万円21億1,034万円約14.4%

粗利率は、売上総利益を売上高で割って私が出した数字です。

値上げと原価低減が効いたのなら、粗利率は上がるはずです。……いや、下がっている。売上が4億8,000万円増えたのに、粗利は4,700万円しか増えていません。

では営業利益はなぜ2.6倍になったのか。販売費及び一般管理費が2億3,117万円から2億3,574万円へ、ほとんど動いていないからです。粗利の増加分4,671万円が、ほぼそのまま営業利益の増加分4,214万円になっています。増益の正体は値上げではなく、数量が乗って固定費が薄まったことだ、と私は受け取りました。

黄銅材の価格が上がった分を、値上げで吸収しきれなかったのが粗利率の低下だと考えれば、説明との辻褄は合います。ただ「奏功」の一語で粗利率が下がった事実が隠れているのは、書き方として引っかかります。

売上の6分の1は、削りかすです

4ページ目に内訳があります。製品商品売上高が17億5,800万円、作業屑売上高が3億5,100万円。3億5,100万円を21億1,000万円で割ります。16.6%で、売上の6分の1がかすの売却です。前年より26%増えた理由は、工場の稼働率とかすの価格が上がったからだと会社は説明しています。

黄銅の価格が高いと、原価は重くなり、同時に削りかすの売値は上がります。粗利率が下がっても営業利益が出ているのには、この下支えも一枚かんでいる可能性があります。かすの分の原価がどう計上されているかは、決算短信には書かれていません。

キャッシュ・フロー計算書は、この短信にはありません

第1四半期なので作成していない、と注記にあります。私はそれを読みに行って短信を開くので、無いと分かると少し手持ち無沙汰になります。代わりに貸借対照表を、前期末との差で追いました。

項目前期末今回
現金及び預金3億5,382万円3億6,830万円
原材料及び貯蔵品6億1,463万円7億323万円
買掛金及び契約負債5億7,931万円7億3,186万円
借入金の合計約22億7,935万円約21億6,996万円

約の付いた数字は、短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金を私が足したものです。

材料を8,800万円分買い込み、その支払いはまだ買掛金に残っている形です。現金がほぼ動いていないのは、材料に回ったからだと考えれば珍しくありません。借入金は3か月で1億円ほど減りました。ただ、それでも現金の6倍近い借入金が残っています。支払利息は672万円から882万円へ増えました。営業利益6,800万円に対して、利息だけで1割強です。

稼ぐ以上に配り、株を増やす手段も用意しています

純資産39億6,552万円のうち、土地再評価差額金が16億7,679万円を占めます。利益剰余金は2億3,752万円しかありません。前期末に決めた配当9,600万円を払いました。この四半期の純利益3,900万円を足しても、利益剰余金は5,600万円減っています。今期の予想も、純利益8,000万円に対して前期と同じ額を配る置き方で、配当性向は120%を超えます。表紙の予想から私が割った数字です。

同じ短信の最後に、後発事象の注記があります。7月15日の取締役会で、第三者割当の新株予約権を決め、7月31日に払込が終わったとあります。行使価額修正条項付き、という種類のものです。何に使う資金なのかは決算短信には書かれておらず、7月15日のお知らせを見るように案内されています。そちらはまだ読んでいません。

利益剰余金の薄い会社が、稼ぐ以上に配当し、同時に株を増やす手段を用意した。この並びが、私には引っかかります。

会社はどう説明しているか

売上が増えた理由として、低温弁は減ったが、主力の黄銅弁と、設備用・車載用の鉄鋼弁が増えたと書いています。ここは素直に受け取っています。理由は、内訳の数字と辻褄が合うからです。

損益については、黄銅材価格の高止まりと物価高による経費の上昇を挙げています。そのうえで、原価低減と値上げが奏功した、としています。ここには留保を付けます。理由は、上で見たとおり粗利率が下がっているからです。

予想を据え置いた理由は、原材料価格と円安がこのまま続くこと、世界規模の紛争が広がる可能性があることです。5月13日に出した予想を、当面そのままにすると書いています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

表紙の第2四半期累計の予想は、営業利益5,500万円です。第1四半期がすでに6,800万円あります。5,500万円から6,800万円を引きます。7月から9月の3か月は1,300万円の赤字という置き方になります。

表紙には上期予想の増減率が+20.1%と載っています。5,500万円をその倍率(1.201倍)で割り戻します。前年の上期累計はおよそ4,600万円です。前年の第1四半期は2,600万円でしたから、前年の7月から9月はおよそ2,000万円の黒字だったことになります。

営業利益第1四半期7月〜9月上期累計
前年 実績2,600万円約2,000万円約4,600万円
今年 会社予想6,800万円△1,300万円5,500万円

通期の営業利益1億4,000万円に対しては、3か月で半分近くまで来ています。残り9か月に必要なのは7,200万円で、前年の同じ9か月より15%少ない数字です。

私はどう読んだか

予想が古いのか、第1四半期の数量が続かないと見込んでいるのか。どちらかだと思います。

私は後者だと考えています。理由は、粗利率が下がっているからです。数量が前年並みに戻った四半期には、固定費の薄まりが消えて、利益は元の水準に近づきます。会社側が7月から9月を赤字と置いたのは、その形を見込んでいるからだ、と私は読みました。

一方で、据え置きの理由に挙がっているのは材料と円安と紛争であって、注文が減るとは、決算短信には書かれていません。数量が続くなら、この予想は早い段階で古くなります。私は心配性なので、赤字を置いた側の見方に立っています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260810/140120260810516136.pdf

7月に発行した新株予約権で集める資金の使い道は、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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