エスコン(8892)2027年3月期 中間決算分析――売却が上期に集まったと読みました

エスコン(8892)2027年3月期 中間決算分析――売却が上期に集まったと読みました 日本株

分譲マンションを建て、商業施設を建てて売る会社

エスコンは不動産の会社です。いちばん身近なのは「レ・ジェイド」という分譲マンションで、初めて家を買う人に向けたものが中心です。関西を軸に、北海道や名古屋でも建てています。

もう一つの柱は、商業施設や賃貸マンション、ホテル、物流倉庫を開発して、投資家に売る仕事です。地域の買い物客が使う「tonarie」というショッピングセンターも、この会社が手がけています。売った物件をグループの会社が預かって運用し、手数料を受け取る仕組みもあります。

売らずに持ち続けて、家賃を受け取る物件もあります。この半年には、山形のサッカークラブの運営会社もグループに加わりました。建てる、売る、預かる、貸す。今回は、このうちどこで稼いだ半年なのかを追いました。

売上は6割近く増え、営業利益は2倍を超えました

2026年10月27日に出た中間決算です。

今回前年同期増減率
売上高555億2,300万円351億8,100万円+57.8%
営業利益105億7,800万円49億500万円+115.6%
経常利益68億7,800万円23億8,000万円+189.0%
純利益49億2,000万円18億5,800万円+164.8%

通期予想は、4月24日に出したものから変えていません。

半年の利益のほとんどが、7月から9月に出ていた

7月28日に出た第1四半期は、経常損益が10億1,700万円の赤字でした。そこから3か月で、累計は大きな黒字に変わっています。

4月〜6月7月〜9月中間期の累計
売上高100億2,700万円約454億9,600万円555億2,300万円
営業利益5億8,800万円約99億9,000万円105億7,800万円
経常利益△10億1,700万円△10億1,700万円から約78億9,500万円の黒字へ68億7,800万円

約の付いた数字は、中間期の累計から第1四半期を私が引いたものです。

半年分の営業利益のうち、4月から6月は6億円に届いていません。残りのほぼ全部を、7月から9月の3か月で稼いだことになります。物件を売る商売は、引き渡した月に売上がまとめて計上されるので、四半期ごとの振れは大きくなります。

開発事業の85億円は、特別目的会社への売却の区分に入っていた

事業ごとに並べると、伸びたのはほぼ開発事業だけです。

事業売上高 今回売上高 前年同期利益 今回利益 前年同期
住宅分譲194億2,900万円184億900万円32億300万円31億7,300万円
不動産開発246億5,100万円62億3,600万円86億3,800万円15億8,300万円
不動産賃貸84億400万円88億8,100万円36億700万円42億2,100万円
資産管理10億9,300万円9億5,200万円6億3,200万円4億9,700万円

引っかかったのは、セグメント情報の注記で、売上を中身ごとに分けた行です。開発事業の売上246億5,100万円のうち、85億3,000万円が「その他の収益」の行に入っています。前年同期、この欄は空欄でした。

その行の注記を前年と比べると、今期の文面にだけ一つの決まりの名前が足されています。「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」に基づく物件売却収入等、という一文です。物件を、そのために作った特別目的会社へ移したとき、それを売却として扱ってよいかを決める決まりです。

短信の5ページ目の説明文とつなげると、売り先の一つは、子会社のエスコンインベストメントパートナーズが組成する私募ファンドです。商業施設と複数の商業底地をそこへ売った、と書いてあります。資産管理事業の説明には、私募ファンドの物件取得に伴う手数料が増えた、ともあります。

売ったのもグループ、器を作ったのもグループ、預かって手数料を受け取るのもグループです。……売り手と器の作り手が、同じ屋根の下にいる。この会社が自分で書いている商売の形どおりではありますが、ファンドへの出資の額や売却の条件までは、決算短信には書かれていません。

利益の裏で、現金は土地と建物の仕入れに回っていた

今回前年同期
営業活動によるキャッシュ・フロー△136億4,100万円△50億9,200万円
うち棚卸資産の増加△110億5,100万円△3億7,100万円
うち預り金の減少△68億2,200万円△27億5,900万円
財務活動によるキャッシュ・フロー181億9,500万円151億6,500万円

営業活動のキャッシュ・フローは前年同期に続いてマイナスで、幅は広がりました。この会社にとっての棚卸資産は、建設中のマンションや開発中の土地です。貸借対照表の仕掛販売用不動産は、半年で2,807億6,400万円から2,951億600万円へ増えています。

説明文によると、この半年でマンション用地と収益不動産の用地を合わせて10か所ほど取得しています。来期以降に売る物件の仕入れなので、マイナスそのものは不動産開発では珍しくない、と私は考えました。持っていた賃貸物件の一部、36億5,300万円分を販売用に振り替えたことも注記に出ています。持つ側から売る側へ移した、ということです。

足りない現金は借入で埋め、利息は1年前より10億円重くなった

借入金と社債は、半年で228億4,600万円増えました。支払利息は36億1,200万円でした。前年同期の25億7,500万円から、10億円あまり増えています。営業利益と経常利益の差は、ほとんどこの利息です。

1年以内に返す長期借入金も、487億6,000万円から700億300万円へ増えました。10月30日にはアーク不動産(現・北浜リアルティ)の株式を110億円で取得する予定です。資金には自己資金と銀行からの借入金を充てる、と書いてあります。

会社の説明は、掛川の開発案件とファンドへの売却

開発事業が伸びた理由として、会社は静岡県掛川市の開発案件の売却、私募ファンドへの商業施設と商業底地の売却、子会社が持つ賃貸物件の売却を挙げています。住宅分譲の増益は平均販売単価の上昇、賃貸の減益は物件を売って稼働物件が減ったため、と説明しています。

この説明は、注記の数字と食い違っていません。賃貸が減った理由と開発が増えた理由が、同じ「売却」でつながっているからです。ただ、売り先の器の中身が分からないので、開発事業の利益の質には留保を付けて受け取っています。

残り半年は、前年の下期より4分の1ほど少なく見込んでいる

通期予想中間期まで進捗率残り半年に必要な額
売上高1,450億円555億2,300万円38.3%894億7,700万円
営業利益265億円105億7,800万円39.9%159億2,200万円
経常利益200億円68億7,800万円34.4%131億2,200万円
純利益140億円49億2,000万円35.1%90億8,000万円

進捗率と必要額は、表紙の予想から私が割り算と引き算をした数字です。

4つとも半分に届いていません。ただ、住宅分譲は通期910戸の引渡し計画のうち、この半年に引き渡したのは253戸で、残りの650戸あまりが下期に集まっています。11月の北広島197戸、2月の大阪梅田145戸が大きいところで、契約は9月末で計画の84.7%まで済んでいます。

前年の下期と比べると、予想の形がはっきりします。通期予想の営業利益265億円は、前年比+1.5%です。そこから逆算すると、前年の通期はおよそ261億円だったことになります。そこから前年の上期49億円を引くと、前年の下期はおよそ212億円でした。残り半年に必要な159億円は、それより4分の1ほど少ない額です。

利益が増えた半年ではなく、売却が早く来た半年

私はこの上期を、通期の利益が増えた話ではなく、物件を売る時期が上期に集まった話だと考えています。理由は、前年同期の2倍を稼いだあとも通期予想を動かさず、下期は前年より少ない営業利益で組み立てているからです。通期で見れば、ほぼ前年並みの計画です。

心配性なので、頭に残っているのは利益より借入のほうです。売るたびに次の土地を仕入れる商売なので、利息は毎期、利益の手前で引かれていきます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

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預り金が半年で68億2,200万円減った理由は、決算短信からは読み取れませんでした。


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全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

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