壁の中に隠れる電気工事の会社
関電工は、建物に電気を通す工事を請け負う会社です。オフィスビルや工場、病院を建てるときに、照明やコンセントの配線を引きます。電力会社から受け取った電気を建物の中で使える形に変える設備も据え付けます。完成すると壁や天井の裏に隠れて、誰の目にも触れなくなる仕事です。
もとは東京電力の系列で、電柱から家へ電気を届ける配電線のような、電力会社の工事も手がけます。ただ、今は電力会社向けよりも一般の建物の仕事のほうがずっと多くなっています。太陽光で発電した電気を売る事業も持っています。
工事を発注するのはビルの持ち主や建設会社です。私たちが直接お金を払う相手ではありません。それでも、朝に職場で照明のスイッチを押したとき、私たちはこういう工事会社の仕事に触れています。
売上は少し、利益は大きく伸びた半年
10月30日に発表された、2027年3月期の中間決算です。4月から9月までの半年分にあたります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,515億3,400万円 | 3,406億3,800万円 | +3.2% |
| 営業利益 | 439億2,000万円 | 379億円 | +15.9% |
| 経常利益 | 450億4,300万円 | 389億4,900万円 | +15.6% |
| 純利益 | 290億9,000万円 | 264億500万円 | +10.2% |
売上の伸びはわずかなのに、営業利益は15.9%増えています。この差がどこから来たのかが、今回の話です。
100億円増えた売上に、原価がほとんど付いてこなかった
損益計算書で最初に引っかかったのは、原価の行です。売上にあたる完成工事高は、前年同期より108億9,600万円増えました。一方で完成工事原価の増加は、13億1,200万円にとどまっています。……ほとんど動いていない。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 完成工事高 | 3,406億3,800万円 | 3,515億3,400万円 |
| 完成工事原価 | 2,865億5,400万円 | 2,878億6,600万円 |
| 完成工事総利益 | 540億8,400万円 | 636億6,800万円 |
| 粗利率 | 約15.9% | 約18.1% |
| 販売費及び一般管理費 | 161億8,300万円 | 197億4,700万円 |
| 営業利益 | 379億円 | 439億2,000万円 |
約の付いた粗利率は、完成工事総利益を完成工事高で割った私の計算です。
工事の会社では、売上が増えれば材料費も人手も一緒に増えるのが普通です。増えた売上がほぼそのまま粗利に残ったのは、珍しい形です。販管費も35億6,400万円増えましたが、営業利益は60億円以上増えました。ここまでは損益計算書の数字です。
原価を下げた可能性があるものを1つ確かめておきます。工事損失引当金で、見込まれる赤字工事に備えて積んでおくお金です。この半年で14億8,700万円減りました。
粗利は540億8,400万円から636億6,800万円へ増えています。仮にこの引当金の減少分が全額原価を押し下げていたとして差し引いても、粗利は80億円以上増えた計算になります。しかも前年同期のキャッシュ・フロー計算書を見ると、同じ引当金が17億4,400万円減っていました。この科目の減少は前年にもあったので、前年との差を説明するものにはなりません。
7月から9月だけを取り出しても、利益率は落ちていない
中間期の数字は、4月から6月の3か月と、7月から9月の3か月を足したものです。7月31日に出た第1四半期の数字を引けば、後半の3か月だけを取り出せます。
| 4月〜6月 | 7月〜9月 | |
|---|---|---|
| 完成工事高 | 1,580億4,300万円 | 約1,934億9,100万円 |
| 営業利益 | 197億1,900万円 | 約242億100万円 |
| 営業利益率 | 約12.5% | 約12.5% |
7月〜9月の数字は、中間期の数字から第1四半期の数字を引いたもので、利益率はそれぞれ私が割り算しました。
3か月ずつに分けても、利益率は同じ水準です。利益率の改善は春だけの出来事ではなく、半年を通して続いていたことになります。
現金の増加は回収の時期、前受金の増加は受注の厚さ
キャッシュ・フロー計算書は、短信の9ページ目にあります。営業キャッシュ・フローは514億3,300万円で、前年同期の338億800万円を大きく上回りました。
いちばん大きい項目は売上債権の減少で、388億7,800万円です。3月末までに完成した工事の代金を、この半年で回収したことによるものです。前年同期にも337億8,700万円の減少があり、毎年この時期に起きる動きです。
もう一つ、受注の話につながる科目があります。未成工事受入金で、工事が終わる前に発注者から受け取ったお金です。これが半年で359億9,200万円から431億9,100万円へ増えました。
4ページ目の説明文には、関電工単体の新規受注高が4,421億4,800万円で、前年同期比113.8%と出ています。先の仕事が積み上がり、その前払いが入ってきている、と私は受け取りました。
純利益の伸びが小さいのは、税金の割合が上がったため
純利益の伸びが営業利益の伸びより小さいのは、税金の割合が上がったためです。今回は、法人税等が145億6,600万円、税金等調整前中間純利益が450億600万円です。前者を後者で割ると約32.4%になります。前年同期は、法人税等が116億8,500万円、税金等調整前中間純利益が393億1,300万円でした。同じように割ると約29.7%です。
10ページ目の注記には、税金は通期の見込みの実効税率を掛けて計算している、とあります。その税率が上がった理由は、決算短信には書かれていません。前年同期には固定資産売却益が4億8,300万円あり、それが今回は無くなったことも、伸びを小さくしています。
会社の説明は、金額が並ぶだけ
短信4ページ目の「経営成績の概況」には、完成工事高や営業利益の金額と前年同期比が並んでいるだけです。利益率が上がった理由も、どの分野の工事で稼いだのかも、決算短信には書かれていません。事業ごとの数字の表も、この短信には載っていません。
表紙には「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに説明があるのかもしれません。私はまだその資料を読んでいません。業績予想については、「2026年4月28日発表の予想値から変更しておりません」の一文だけです。
下期は、前年並みの見込みのまま
| 中間期の実績 | 進捗率 | 下期に必要な額 | 下期の前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,515億3,400万円 | 約45.1% | 約4,284億6,600万円 | 約6.7%増 |
| 営業利益 | 439億2,000万円 | 約48.8% | 約460億8,000万円 | 約1.9%増 |
| 経常利益 | 450億4,300万円 | 約49.8% | 約454億5,700万円 | 約1.2%減 |
| 純利益 | 290億9,000万円 | 約44.8% | 約359億1,000万円 | 約3.3%減 |
約の付いた数字は、表紙の通期予想と中間期の実績から私が引き算・割り算したものです。下期の前年比は、通期予想の増減率から前年の通期を割り戻し、そこから前年の中間期を引いて前年の下期を出して比べています。
利益は、どの段階でも通期予想の半分近くまで来ています。売上が半分に届いていないのは、年度末に完成する工事が多い業種なので、それ自体は不思議ではありません。
気になるのは下期の見込みです。上期に営業利益を15.9%伸ばした会社が、下期は営業利益をほぼ横ばいとし、経常利益と純利益は前年を下回ると見込んでいます。
予想は4月のまま、と私は考えています
この見込みについては、2つの受け取り方があります。4月に作った予想をそのまま残しているだけなのか、下期に何か悪い材料を見込んでいるのか。
私は前者の見方をしています。理由は、利益率の改善が7月から9月まで途切れずに続いていて、前受金と受注もそろって増えているからです。原価が増えない形が半年続いたあとで、下期だけ崩れる筋は、短信の数字からは出てきません。
それでも会社は予想を変えませんでした。工事の会社は、期末に追加の原価が出ることがあります。心配性なので、その点は頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
粗利率が上がった工事が、建物の工事と電力会社の工事のどちらに多かったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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