はじめに
通販で届く段ボール箱、スーパーの裏で潰されている箱。あれの多くをこの会社のグループが作っています。ほかにもティッシュ、おむつ、新聞用紙、感熱紙、牛乳の紙パック。紙と名の付くものを、ほぼ全部やっている会社です。
原料は木なので、ニュージーランドやブラジルに自分の森を持ち、そこでパルプまで作っています。売上のかなりの部分を海外で稼いでいるところが、製紙会社の中では珍しいと思っています。
私が普段この会社で見るのは、値上げが通っているかどうかです。紙は原料と燃料の値段に振り回される商売なので、上がった分を売り値に乗せられるかで利益が決まります。今回もそこを最初に探しました。
読んだのは、2026年8月5日に出た第1四半期の決算短信です。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,685億800万円 | 4,574億4,200万円 | +2.4% |
| 営業利益 | 38億8,100万円 | 37億300万円 | +4.8% |
| 経常利益 | 56億2,900万円 | △35億5,400万円 | — |
| 純利益 | 31億6,200万円 | △51億5,700万円 | — |
1ページ目だけなら「立ち直った四半期」に見えます。ただ、営業利益がほぼ動いていないのに経常が92億円も改善するのは、本業の外で何かが起きたということです。
経常の黒字は、為替差益が作ったものでした
10ページ目の損益計算書には、営業外収益に為替差益57億1,300万円が載っています。前年の同じ場所には、逆に為替差損50億9,200万円がありました。行が入れ替わっただけで、振れ幅は108億円です。経常利益の前年差92億円は、ほぼこれで説明が付きます。
ただし同じページの営業外費用に、デリバティブ評価損31億6,700万円もあります。為替の予約で反対の動きが出たのだと考えていますが、短信にはそこまで書かれていません。57億1,300万円から31億6,700万円を引きます。為替まわりで残ったのは25億円ほどです。
値上げの効いた2事業と、それを食った2つの損失
本業の中身は5ページ目にあります。営業利益をセグメント別に前年と並べると、こうなります。
| セグメント | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 生活産業資材 | 2億円 | 58億円 |
| 機能材 | 28億円 | 40億円 |
| 資源環境ビジネス | 24億円 | 16億円 |
| 印刷情報メディア | △3億円 | △33億円 |
| その他 | △13億円 | △42億円 |
| 調整額 | △2億円 | △1億円 |
| 合計 | 37億円 | 39億円 |
出どころは短信4ページ目と5ページ目の表です。
生活産業資材の58億円が、この四半期でいちばん大きな動きです。理由は段ボールの価格修正と、王子ネピアの生産体制の見直しだと5ページ目にあります。値上げは通っている。機能材も、通販向けのヒートシール紙などが売れて増益です。生活産業資材は2億円から58億円へ増えました。差し引きで56億円です。機能材は28億円から40億円へ増えました。こちらは12億円です。2つを足すと68億円の増益です。
ところが同じ表の下半分で、ほぼ同じ額が消えています。資源環境で8億円、印刷情報メディアで30億円。その他でも29億円が消えました。足すと67億円の減益です。調整額の動きまで含めて差し引くと、2億円しか残りません。
「その他」の42億円の損失に、説明の段落がありません
ここが引っかかりました。印刷情報メディアの損失には理由が書いてあります。新聞用紙と印刷用紙の需要減、チップの価格上昇、中国の江蘇王子製紙での価格下落。
一方で「その他」の損失42億円には、セグメント別の概況の中に説明の段落そのものがありません。その他に入っているのは商事、物流、バイオリファイナリー事業、エンジニアリング、不動産、コーポレート関連業務です。
13ページ目の注記を前年と見比べると、今回の注1には「バイオリファイナリー事業」という言葉が増えています。ここまでは短信に書いてあることです。29億円膨らんだ損失の一部は、新しく名前が足されたこの事業のものかもしれない、と私は読みました。
現金の動きは追えませんが、借り方が変わっています
キャッシュ・フロー計算書は作成していない、と12ページ目にあります。第1四半期はそういう会社が多いので、驚きはしません。代わりに9ページ目の貸借対照表を前期末と並べました。
コマーシャル・ペーパーが670億円から1,290億円へ増えています。未払法人税等は309億7,900万円から48億6,000万円へ減りました。法人税を払ったからだと6ページ目にあります。同じ3か月で自己株式を230億円買い、配当も払っています。
3か月で稼いだ営業利益は39億円ですから、これらの出費を稼ぎで賄えたはずがなく、短い借入で埋めたことになります。……いや、これは金額の順番としては自然だ。税金と還元は待ってくれない。
純有利子負債は797億円増えて9,606億円です。ネットD/Eレシオは0.9倍です。目標は1.0倍以内とあるので、余裕は薄くなっています。
会社はどう説明しているか
4ページ目の説明文では、中東情勢で原材料が高くなったが、生産体制の再構築と価格修正で吸収した、という書き方です。構造改革の話も具体的です。ニュージーランドの子会社で段ボール原紙から撤退し、豪州の包装事業を売り、2026年6月には板紙加工工場を閉めたとあります。
ここはそのまま受け取ります。理由は、生活産業資材の58億円がその結果として出ているからです。
留保を付けるのは、業績予想の節です。決算短信の7ページ目には「2026年5月15日に公表した予想に変更はありません」としか書かれていません。なぜ据え置けるのかの説明は、決算短信にはありません。表紙に決算補足説明資料は有りとありますが、そちらはまだ読んでいません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
営業利益は39億円でした。通期予想600億円の6.5%です。3か月なら4分の1が目安なので、かなり下にいます。第2四半期累計の予想は120億円です。そこから今回の39億円を引くと、7月から9月の3か月で81億円が要ります。そして下期は、600億円から120億円を引いた残りです。480億円になります。
前年と並べると、この置き方の重さがはっきりします。
| 営業利益 | 上期 | 下期 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 約167億円 | 約179億円 | 約346億円 |
| 今年 会社予想 | 120億円 | 480億円 | 600億円 |
約の付いた数字は、表紙の増減率、通期+73.5%と上期△28.3%から私が割り戻しました。600億円を1.735で割ると約346億円になります。120億円を0.717で割ると約167億円です。差し引きで、前年下期が約179億円です。
上期は前年より減る置き方なのに、下期は前年の2.7倍です。値上げの効果が本格的に乗るのが下期なのか、閉めた工場の分が効くのか、その両方なのか。それを裏付ける文は短信には見つけられませんでした。
私はどう読んだか
良い数字と消えた数字が、同じ大きさで入っている決算でした。どちらを重く見るかで受け取り方が変わります。
私は「値上げは本物だが、通期の絵はまだ描けていない」側の見方をしています。理由は、増えた58億円は説明が付くのに、消えた42億円のほうには説明が無いからです。説明の付かない損失は、次の四半期にも残るものとして読んでいます。消える前提に立てるだけの材料が、短信の中に無いからです。そのまま、下期に480億円という数字だけが置かれています。
心配性なので、下期の480億円より先に、その他の42億円のほうが頭に残りました。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260803507155.pdf
「その他」セグメントの損失42億円が、どの事業から出たものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント