はじめに
百貨店の地下、食品売り場の一角に、量り売りのサラダが並んでいる店があります。仕事帰りに寄って今夜の一品として買って帰る人、実家に顔を出すときの手土産に揚げ物を詰めてもらう人。あの店を運営しているのがロック・フィールドです。サラダを看板にした店と、コロッケを看板にした店を、業態を分けて出しています。
自分の工場で作った総菜を、自分の店で売る商売です。ですから相手は、家で夕飯を食べる人です。原材料と人件費が上がればそのまま利益に響きますし、財布の紐が固くなればそのまま客数に出ます。総菜の会社の決算は、その両方をどう捌いたかの記録になります。
この決算で何が起きたか
9月4日に出た第1四半期、5月から7月までの3か月の数字です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 126億7,500万円 | 124億7,100万円 | +1.6% |
| 営業利益 | 1億8,000万円 | 1,000万円 | — |
| 経常利益 | 2億600万円 | 4,200万円 | +383.5% |
| 純利益 | 9,900万円 | △1,000万円 | — |
売上はほぼ横ばいで、営業利益は前年の1,000万円から1億8,000万円へ増えています。ただ、売上126億円に対して営業利益1億8,000万円ですから、倍率で驚く決算ではありません。
増えた利益は、原価が減った分です
1ページ目の表では、利益がどこから増えたのか分かりません。8ページ目の損益計算書を開くと、売上原価が前年より減っていました。売上が2億円増えたのに、原価が800万円減っています。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 124億7,100万円 | 126億7,500万円 |
| 売上原価 | 53億5,000万円 | 53億4,200万円 |
| 売上総利益 | 71億2,000万円 | 73億3,200万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 71億900万円 | 71億5,200万円 |
| 営業利益 | 1,000万円 | 1億8,000万円 |
売上総利益は2億1,200万円増えました。表の73億3,200万円から71億2,000万円を引いた差です。販管費のほうは4,300万円しか増えていません。営業利益の増加分およそ1億7,000万円は、ほぼ全部が粗利の側から来たことになります。営業外でも特別利益でもなく、原価と売価の差が広がったわけです。ここまでは損益計算書の数字です。
4ページ目に業態別の表があります。看板のRF1のうちサラダは前年の98.9%、フライは98.6%と、主力の2つが前年を割っています。伸びたのは「その他惣菜」で、1割ほど増えました。会社は「商品設計・販売価格の見直し」と書いています。単価を上げて、売れる数が少し減り、原価率が下がった、と私は読みました。
8月からの3か月を、会社は赤字と置いています
ここが今回いちばん引っかかったところです。1ページ目の下のほうに、第2四半期累計の予想が載っています。営業利益は1億7,600万円です。第1四半期だけで1億8,000万円を稼いでいます。上期予想の1億7,600万円からこれを引くと、8月から10月の3か月は400万円の赤字という置き方になります。経常利益も同じです。上期予想は2億1,300万円で、第1四半期は2億600万円でした。引き算をすると、8月から10月の3か月で700万円です。
この予想は、5ページ目によれば2026年6月10日に公表したものです。6月10日は、この第1四半期が始まって40日ほどのところです。四半期の前半を実際に見たうえで上期1億7,600万円と見込み、第1四半期が1億8,000万円で終わったあとも、変えていません。
前年と並べると、この予想の珍しさがはっきりします。表紙の上期予想には+109.9%と増減率が付いています。1億7,600万円を2.099で割り戻すと、前年の上期累計はおよそ8,400万円です。前年の第1四半期は1,000万円でしたから、差し引きで前年の8月から10月はおよそ7,400万円の黒字だったことになります。
| 営業利益 | 第1四半期 | 8月から10月 | 上期累計 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 1,000万円 | 約7,400万円 | 約8,400万円 |
| 今年 会社予想 | 1億8,000万円 | △400万円 | 1億7,600万円 |
約の付いた数字は、上期予想の増減率+109.9%から私が割り戻したものです。
前年に7,400万円稼いだ3か月を、今年は赤字と置いています。……いや、これは変だ。理由は、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに何か書いてあるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。言えるのは、短信には理由が無い、までです。
現金が減ったのは、毎年この時期の形です
10ページ目のキャッシュ・フロー計算書では、営業活動によるキャッシュ・フローが3億7,100万円の支出です。利益は出て、現金は減っています。ただ、前年の同じ時期も1億4,200万円の支出でした。
| 営業CFの主な項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 賞与引当金の減少 | △4億7,400万円 | △4億7,200万円 |
| 売上債権の増加 | △3億3,200万円 | △4億6,000万円 |
| 棚卸資産の増減 | +1,700万円 | △1億1,500万円 |
| 法人税等の支払額 | △3,400万円 | △1億2,200万円 |
| 営業活動によるCF | △1億4,200万円 | △3億7,100万円 |
支出でいちばん大きいのは賞与引当金の減少で、前年もほぼ同じ額がありました。4月に積んだ賞与を夏に払うので、この会社の第1四半期はいつも現金が出ていく形です。減価償却費4億4,900万円は帳簿上の費用で現金は出ていきませんから、賞与の支払いとほぼ相殺されます。ここまでは珍しくありません。
前年より支出が広がった分は、売掛金と在庫と税金で説明が付きます。売掛金と在庫は売上が動いた分、税金は前年より利益が出た分です。手元の現金及び預金は120億2,500万円、借入金は長短合わせて2億5,000万円ですから、心配するところではありません。
会社はどう説明しているか
4ページ目の説明文で、会社は外の環境を先に挙げています。原材料価格と人件費の上昇、それに物価高で続く消費者の節約志向です。そのうえで、中期経営計画の2年目に、経営戦略と人財マネジメントの機能を強めるために組織体制を見直した、と書いています。
利益が出た理由として書いてあるのは、商品設計・販売価格の見直しと、店舗運営効率の向上の2つです。新しい動きは、神戸コロッケをJR東日本の駅で催事として出したことです。軽い設備で出せる店の形を試して、常設店につなげたい、という書き方です。神戸コロッケ全体の売上は7億1,700万円で前年とほぼ同じですから、まだ数字に出る段階ではありません。
私はこの説明を、半分だけそのまま受け取っています。原価が減って粗利が増えたのは損益計算書の数字なので、価格の見直しが効いたことは疑っていません。ただ、値上げの分だけ客が減っていないかどうかは、サラダとフライが前年を割っていることから窺うしかありません。客数や単価の数字は決算短信には載っていないからです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 第1四半期 | 進捗率 | 残り9か月に必要な額 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 521億6,000万円 | 126億7,500万円 | 24.3% | 394億8,500万円 |
| 営業利益 | 5億3,100万円 | 1億8,000万円 | 33.9% | 3億5,100万円 |
| 経常利益 | 5億8,200万円 | 2億600万円 | 35.4% | 3億7,600万円 |
| 純利益 | 3億1,300万円 | 9,900万円 | 31.6% | 2億1,400万円 |
進捗率と残りの額は、表紙の予想から私が引き算と割り算をした数字です。
売上は4分の1で、この時期の目安どおりです。営業利益は3分の1を超えています。通期の営業利益予想は、前期より3割以上減る置き方です。経常利益で見ると、残り9か月は前年の同じ期間の半分しか稼がない計算になります。第1四半期が前年を大きく上回ったあとで、残り9か月を半分と置いています。上期の赤字と同じ向きの話です。
もう一つ、配当のことを書いておきます。利益と配当の釣り合いの話です。年間配当の予想は24円です。予想1株利益は11円98銭ですから、利益の2倍を配当に回す置き方です。5ページ目には、配当で利益剰余金を3億9,200万円取り崩し、純利益で9,900万円戻した、とあります。手元の現金は多いので払えないわけではありませんが、利益が予想どおりなら、今期も剰余金を削って払うことになります。
私はどう読んだか
予想が6月10日のまま古いのか、それとも8月以降に何か悪い材料を見込んでいるのか。この2つのどちらかだと思います。
私は前者だと考えています。理由は、増えた利益が営業外でも特別利益でもなく、売上原価が減って粗利が広がったという本業の側から来ているからです。売価と商品設計の見直しは、3か月で元に戻る種類のものではありません。
それでも会社側は、上期も通期も予想を動かしませんでした。総菜の会社が心配するのは、原材料と人件費と客の財布です。夏の間に値上げの跳ね返りが客数に出始めている、と見込んでいるのかもしれません。心配性なので、頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

値上げのあとで客数がどう動いたかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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