日本酸素ホールディングス(4091)2027年3月期 第1四半期決算分析――売却益を抜いて読みました

日本酸素ホールディングス(4091)2027年3月期 第1四半期決算分析――売却益を抜いて読みました 決算を読む

空気から取り出したガスを、工場と病院へ届ける会社

日本酸素ホールディングスは、空気から酸素や窒素、アルゴンを取り出して売る、産業ガスの会社です。製鉄所は鉄を溶かす工程で酸素を使います。化学工場は、窒素で設備の中を満たして火が出ないようにします。半導体の工場では、回路を作る工程で「電子材料ガス」と呼ばれる特殊なガスが欠かせません。病院で使う医療用の酸素も、この商売に入ります。

ガスは重くてかさばるので、使う場所の近くで作るのが基本です。この会社も日本、米国、欧州、アジア・オセアニアのそれぞれに、生産と販売の拠点を持っています。

もう一つ、魔法瓶の「サーモス」もこの会社です。水筒やスープジャーを買ったことのある人は多いと思います。消費者が店で直接手に取る商品は、ここだけです。

表の上では、利益が5割増えた四半期

2026年7月29日に出た、第1四半期(4月から6月)の決算です。

今回前年同期増減率
売上収益3,617億6,300万円3,147億5,800万円+14.9%
営業利益647億3,100万円455億4,700万円+42.1%
経常利益———
純利益437億1,600万円283億9,500万円+54.0%

この会社は国際会計基準(IFRS)で決算を作っているため、経常利益の欄がありません。純利益は、親会社の株主に帰属する四半期利益です。

売上は1割半の増加なのに、営業利益は4割、純利益は5割増えています。利益の伸びが売上よりずっと大きい。この差がどこから来たのかを探しに、後ろのページへ進みました。

営業利益の中に、本社の土地を売った124億円がある

短信の最後の「追加情報」に、答えが書いてありました。本社移転に伴って土地を譲渡し、固定資産売却益124億2,400万円を計上しています。同じ移転で、本社建物の減損損失18億9,100万円も出ています。

この会社は、こうした一度きりの損益を除いた「コア営業利益」も出しています。今回は546億8,800万円で、前年同期から2割増です。表の営業利益647億3,100万円から、このコア営業利益を引きます。差は100億4,300万円で、その大半が土地の売却益です。

土地は一度売ればそれきりです。純利益の5割増も、この売却益を含んだ数字です。ここから先は、表の営業利益ではなくコア営業利益で考えます。

為替を除くと、本業の伸びは1割ほど

コア営業利益の2割増にも、まだ円安の分が入っています。会社は説明文の中で、米ドルもユーロも前年より1割余り円安になったと書いています。その分で売上収益が約269億円、コア営業利益が約42億円多く表示されている、とも自分で書いています。

これを引いてみます。546億8,800万円から、円安の分の約42億円を除きます。残りは約504億8,800万円です。前年同期の456億2,000万円と比べて増えたのは約48億6,800万円で、伸び率にすると約1割になります。2割増のうち半分近くは、円の値打ちが下がった分だったわけです。これは私の引き算です。

1割でも弱い数字ではありません。……ただ、表の「5割増」から来ると、ずいぶん静かな話になる。

地域で分けると、日本だけが減益

地域売上収益増減率セグメント利益増減率
日本967億1,600万円−0.7%120億7,300万円−9.7%
米国991億2,100万円+18.0%149億8,500万円+30.8%
欧州978億7,800万円+18.8%189億9,000万円+18.4%
アジア・オセアニア588億8,900万円+39.2%71億2,200万円+106.9%
サーモス91億2,100万円+5.5%18億9,700万円+10.3%

売上収益は外部の顧客への売上、セグメント利益はコア営業利益の基準です。増減率はいずれも前年同期比です。

地元の日本だけが、売上も利益も減っています。説明文によれば、ガスは電子材料ガスの出荷が増えて増収でした。減ったのは、エレクトロニクス関連の機器・工事のほうです。ガスは売れていて、設備を納める側の仕事が細った形です。

アジア・オセアニアの利益が倍になったのも、全部が中身の伸びではありません。前期に取得したオセアニアの産業ガス事業が、今期は最初から数字に入っています。欧州も、前期に取得したスペインのホームケア事業の売上が加わっています。買った事業の分は、前年と並べれば必ず増えて見えます。

営業キャッシュ・フローの増加分、半分は受け取った配当

キャッシュ・フロー計算書では、営業キャッシュ・フローが547億5,100万円の収入で、前年同期の416億9,200万円から3割増えています。土地の売却代金126億7,500万円は投資のほうに入っていて、営業の側には混ざっていません。ここまではきれいな数字です。

引っかかったのは、その内訳の「配当金の受取額」の1行でした。前年同期の5億8,500万円が、今回は70億1,900万円です。増えたのは64億3,400万円です。営業キャッシュ・フローの増加分130億5,900万円の、ほぼ半分がこの1行です。

配当を70億円受け取ったのに、損益計算書の金融収益は11億4,300万円しかありません。持分法で数えている投資の残高も、3か月で減っています。持分法の関連会社から受け取った配当で、損益計算書を通らないお金だ、と私は読みました。ただ、どの会社からの配当なのかは、決算短信には書かれていません。

会社は「数量と価格」と説明している

会社が挙げた理由は3つです。出荷数量の増加、コストの上昇を販売価格に転嫁する「価格マネジメント」、そして地域ごとの生産性向上の取り組みです。

米国と欧州については、「為替による影響を除いても増益」とわざわざ書いています。ここはそのまま受け取ります。為替を除いても全体で1割伸びているという先ほどの計算と、食い違わないからです。

気をつけておきたいのは欧州の数量です。欧州はガスの出荷数量が減ったと書かれていて、増収は為替と値上げ、それに取得した事業の分です。量が減って、値段で稼いでいる地域があることは覚えておきます。

残り9か月は、前年より少し低い置き方

通期予想は5月11日に出したものから変わっていません。

第1四半期 実績通期予想進み具合
売上収益3,617億6,300万円1兆3,800億円約26%
コア営業利益546億8,800万円2,080億円約26%
営業利益647億3,100万円2,150億円約30%
純利益437億1,600万円1,310億円約33%

進み具合は、第1四半期の実績を通期予想で割ったものです。

1年の4分の1が過ぎて、どれも4分の1を少し上回っています。気になったのは、残りの期間の見込み方です。

コア営業利益4月〜6月7月〜翌3月通期
前期 実績456億2,000万円約1,575億円約2,031億円
今期546億8,800万円(実績)約1,533億円2,080億円(予想)

前期の通期は、表紙にある予想の増減率+2.4%で2,080億円を割り戻した数字です。7月〜翌3月は、通期から4月〜6月を引いています。

第1四半期で2割伸ばしたあとの9か月を、前年より少し低く見込んでいることになります。一度きりの損益の見込みも同じで、営業利益とコア営業利益の予想の差は70億円なのに、第1四半期だけで100億円出ています。なぜそう置いたのかは、短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに理由があるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。

私はどう読んだか

表の5割増は、土地と為替で大きく見えています。本業の伸びは1割ほどです。

そのうえで、通期予想が5月のまま古いのか、後半に悪い材料を見込んでいるのか。私は前者の見方をしています。理由は、第1四半期の伸びが為替と土地を除いても数量と値上げで説明でき、米国と欧州では為替を除いた増益を会社が明言しているからです。

心配性なので、日本の機器・工事の減収と、欧州の数量の減少は、次の決算でも同じ場所を開いて確かめます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260729/140120260729501488.pdf

営業キャッシュ・フローに入った配当金70億1,900万円が、どこから受け取ったものなのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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