日本ファルコムは、家庭用ゲーム機とパソコン向けのロールプレイングゲームを作っている会社です。「軌跡」と「イース」の二つのシリーズが看板で、買うのは続き物を追いかけて何作も遊ぶ人たちです。
国内では自分で製品を作って売り、海外では他社に版権を貸して、現地の言葉に訳した版を出してもらいます。後者は売れた分の取り分がそのまま利益に近い形で残ります。どちらが動いたかで、四半期の顔つきが変わります。
もう一つの癖は、新作の発売月に売上が寄ることです。年に何本も出る会社ではないので、発売がどの四半期にあるかで数字が跳ねます。
営業利益が、前年の6倍近くまで来ています
2026年8月12日に出た第3四半期の短信です。この会社は子会社を持たない単体の決算で、2025年10月から2026年6月までの9か月分になります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 22億300万円 | 10億4,000万円 | +111.8% |
| 営業利益 | 12億5,800万円 | 2億1,500万円 | +485.2% |
| 経常利益 | 12億8,100万円 | 2億2,400万円 | +470.7% |
| 純利益 | 8億8,900万円 | 1億3,700万円 | +545.1% |
ただ前年同期は、売上が2割近く減り、営業利益が半分になった年でした。純利益の伸びが経常利益より大きいのは、前年同期に特別損失としてお別れの会関連費用2,603万円があったからです。深い谷の翌年の数字だという前提で、先へ進みます。
増えた売上の9割近くが、海外に貸した分
短信の4ページ目に、部門ごとの売上があります。製品部門が2億9,400万円、ライセンス部門が19億900万円で、9割近くが海外版の分です。この9か月に「空の軌跡 the 1st」の海外版が出そろい、旧作の海外版も並行して売られました。
ライセンスの売上には、ほとんど原価がつきません。売上原価は売上の8%ほどで、これは私の割り算です。しかも販管費は5,300万円ほどしか増えていません。
| 項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 売上原価 | 1億471万円 | 1億7,081万円 |
| 売上総利益 | 9億3,588万円 | 20億3,288万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 7億2,076万円 | 7億7,405万円 |
営業利益率は前年の2割から57%へ跳ねました。売り方が変わったのではなく、ほぼ動かない費用の上で売上が倍になった結果です。売上が減る四半期には、同じ仕組みが逆に働きます。ここまでは損益計算書の数字で言えることです。
契約負債が、9か月で2億9,200万円増えている
引っかかったのは、5ページ目の財政状態の説明にあった一行です。負債が増えた理由として、会社は契約負債の増加2億9,200万円を挙げています。貸借対照表では流動負債の「その他」が、期首の1億5,785万円から4億3,100万円へ膨らんでいて、契約負債はこの中に入っています。
契約負債は、お金を先に受け取って、まだ売上に数えていない分です。売上が伸びた9か月の末に、まだ売上にしていない現金が2億9,200万円ぶん積み上がっていたことになります。
同じ表では、売掛金が9億4,581万円から5億8,176万円へ減っています。差は3億6,400万円です。前に売った分の回収が進み、次に売る分の前受けが入った形です。……売る前に、もう現金だけ届いている。
現金及び預金は107億9,977万円で、期首から4億4,900万円増えました。この間に自己株式の取得で6億800万円、配当で2億500万円を払っています。足すと約8億1,300万円を株主に返し、それでも現金が増えた計算です。
第3四半期はキャッシュ・フロー計算書を作らないと注記にあるので、現金の出入りはこの足し算でしか追えません。配当予想は年10円で、前期の20円から減って見えます。ただ前期の分は、記念配当10円を含んでいます。配当より自己株式を選んだ9か月でした。
9月の「空の軌跡 the 2nd」は全世界同時発売と書いてあります。前作の海外版は、この9か月のライセンス売上に現れました。続編は国内と海外が同じ四半期に来ます。その海外分の対価が先に届いているのかもしれない、と私は読みました。
投資その他の資産が、9か月で2倍になっている
もう一つ、貸借対照表で目に留まった科目があります。投資その他の資産が、期首の1億2,873万円から2億6,071万円へ増えています。差は1億3,198万円で、これは私の引き算です。
損益計算書の法人税等調整額は△1億3,301万円で、ほぼ同じ大きさです。増えたのは繰延税金資産だろう、と私は考えています。税を先に払い、会計の利益が後から立つときに膨らむ科目です。何を先に払ったのかまでは、この短信には出てきません。
会社はどう説明しているか
会社の説明は3つです。新製品の発売月に売上が集中し、今期の通期予想も第4四半期に比重が大きいこと。発売タイトル数の拡大と新しいIPの創出を進めていて、開発費用が先に出ること。5月13日に出した予想を変えていないことです。
1つ目はそのまま受け取ります。理由は、売掛金の減り方と契約負債の増え方が、発売の合間の四半期の形そのものだからです。2つ目には留保をつけます。開発費用がどの科目にいくら入っているのかは、短信に内訳がありません。販管費は5,300万円ほどしか増えておらず、会社が書いた「先行して」という言葉の重さが、まだ数字に出ていません。
表紙には、決算補足説明資料の作成は無い、決算説明会の開催も無いとあります。今回読める会社の言葉は、この短信の中の2ページ分だけです。
残り3か月に置かれた売上は、前期の同じ3か月より少ない
| 項目 | 通期予想 | 9か月累計 | 進み具合 | 残り3か月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 22億300万円 | 61.2% | 13億9,700万円 |
| 営業利益 | 22億円 | 12億5,800万円 | 57.2% | 9億4,200万円 |
| 経常利益 | 22億円 | 12億8,100万円 | 58.2% | 9億1,900万円 |
| 純利益 | 15億円 | 8億8,900万円 | 59.3% | 6億1,100万円 |
進み具合と残り3か月の額は、表紙の予想から私が引いたものです。
9か月で6割です。4分の3が目安という一般の物差しに当てると足りませんが、この会社は第4四半期に寄ると自分で書いています。物差しのほうが合っていません。
前期と並べてみます。表紙の通期予想36億円は前期比+37.7%です。36億円を1.377で割り戻すと、前期の通期売上はおよそ26億1,400万円になります。そこから前期の9か月累計10億4,000万円を引くと、前期の7月から9月はおよそ15億7,400万円です。
今期の残り3か月は13億9,700万円ですから、1割ほど少ない置き方になります。営業利益も同じ計算で、前期の同じ3か月を16%ほど下回ります。
今期の7月には「亰都ザナドゥ」が出て、9月には「空の軌跡 the 2nd」が全世界同時に出ます。新作が2本ある3か月を、会社は前期の同じ3か月より小さく見込んでいることになります。しかも8月12日は、7月の新作を実際に売ったあとです。それでも5月の予想を動かしていません。
私はどう読んだか
予想が固いのか、7月の新作が思ったほど動かなかったのか。この2つのどちらかだと思います。
私は前者の見方をしています。理由は、契約負債の2億9,200万円が9月の発売より先に負債の欄に入っているからです。それでも会社は据え置きました。開発費用が先に出ると自分で書いているので、そちらの額を大きく見込んでいるのかもしれません。心配性なので、その費用が第4四半期でどれだけ膨らむかは、頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260810517360.pdf
契約負債の2億9,200万円が、どの作品の、どの地域の前受けなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント