はじめに
コタは、美容室で使うシャンプーとトリートメントを作っている会社です。ドラッグストアの棚には並びません。美容師が施術のあいだに髪の状態を聞き取り、その人に合うものを薦めて、客が持ち帰る。この会社はそれを「店販」と呼んでいます。
もう一つ、美容室の経営そのものに口を出す仕組みがあります。短信では「旬報店システム」という名前で出てきます。取引先の美容室が儲かるように相談に乗るところまで含めて、一つの商売です。
売る相手が消費者ではなく美容室なので、美容室が元気でなければ店販も伸びません。短信の説明文には、美容業界の景気のことが自分の商売のことのように書いてあります。9月17日に出た第1四半期の短信を、そのつもりで読みました。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 16億6,400万円 | 15億9,700万円 | +4.2% |
| 営業利益 | 900万円 | △4,900万円 | ― |
| 経常利益 | 6,100万円 | △3,700万円 | ― |
| 純利益 | 3,700万円 | △3,300万円 | ― |
売上は4%ほど増え、3つの利益がそろって黒字に戻りました。ただ、営業利益900万円は売上の1%にも届きません。この会社は下半期に売上と利益が集まる作りで、第1四半期は毎年薄いと短信自身が書いています。それでも黒字の出どころを確かめに行きました。
販管費が減った理由は、人件費ではなく優待品の発送が遅れたからでした
引っかかったのは損益計算書の販管費です。前年の12億200万円から11億8,400万円へ減っています。差は1,783万円です。売上が増えて人件費も増えたと説明文にあるのに、経費の合計は減っている。……これは変だ。
答えは4ページ目にありました。2026年3月27日にランサムウェアに感染してシステムが止まり、株主優待品の発送がずれ込んだ。発送に合わせて計上する費用も第2四半期以降に回った、と書いてあります。減ったのは経費そのものではなく、計上の時期です。
ここから先は私の引き算です。販管費が前年と同じ額だったとします。営業利益900万円から1,783万円を引きます。結果はおよそ800万円の赤字です。優待品の費用そのものは決算短信に額が出ておらず、正確なところは分かりません。ただ、向きだけなら十分に言えます。
経常利益6,100万円のうち、3,800万円は違約金でした
もう一つ、営業外収益の内訳を並べると、経常利益6,100万円の作られ方が分かります。
| 営業外収益 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 受取利息 | 432万円 | 966万円 |
| 違約金収入 | 214万円 | 3,862万円 |
| 受取配当金・業務受託料・その他 | 492万円 | 367万円 |
| 合計 | 1,138万円 | 5,195万円 |
違約金収入が3,600万円ほど増えています。誰から、何の違約金を受け取ったのかは、決算短信には書かれていません。営業外に置いてある以上、会社側もこれを本業の稼ぎとは扱っていないことになります。
経常利益6,100万円から違約金3,862万円を引きます。残るのはおよそ2,200万円です。優待費用のずれと違約金の2つを外した第1四半期は、営業利益が赤字で、経常利益も薄い。ここまでは損益計算書の数字です。本業がまだ稼ぐ時期に入っていないだけで、稼ぎ方が変わった決算ではない、と私は受け取りました。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書はありません
注記に「第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。そこで貸借対照表で現金の動きを追いました。現金及び預金は3月末の60億5,000万円から6月末の42億2,900万円へ減りました。差は18億2,000万円です。
減った先は、負債と純資産の側を見ると大半が分かります。
| 3月末 | 6月末 | |
|---|---|---|
| 未払法人税等 | 5億9,300万円 | 1,282万円 |
| 未払金 | 9億4,700万円 | 3億8,200万円 |
| 利益剰余金 | 136億3,500万円 | 131億1,700万円 |
未払法人税等と未払金で11億4,500万円減り、利益剰余金は5億1,700万円減りました。後者は配当を払った跡です。足して約16億6,200万円、これは私の足し算です。年に一度の税金と配当が4月から6月に出ていくのは毎年のことなので、ここは驚きません。
説明が付きにくいのは在庫です。商品及び製品、仕掛品、原材料がそろって増え、足すと約4億4,800万円です。3か月の増え方としては小さくありません。下半期に向けた作り置きなのか、システム障害で出荷が滞った分なのか、短信に説明はありません。
もう一つ、障害の跡が科目の名前で残っています。システム障害対応費用引当金が3月末の2,701万円から6月末の211万円まで減り、3月に積んだ対応費用の大半をこの3か月で使い切ったことが分かります。無形固定資産も2億7,800万円から4億3,100万円へ増えていて、システムを作り直した分かもしれません。
会社はどう説明しているか
会社の書きぶりは素直です。売上が増えたのは主力の「コタアイケア」が堅調だったから。売上原価が増えたのは増収と原材料費の上昇。販管費が減ったのは優待品のずれ。経常利益の増加は違約金収入。黒字転換の理由を、短信は本業の改善だとは書いていません。
売上の内訳も、説明文と重ねると読めます。
| 区分 | 前年同期 | 今回 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| トイレタリー | 11億4,900万円 | 12億3,200万円 | +7.2% |
| 整髪料 | 3億4,600万円 | 3億5,300万円 | +2.1% |
| カラー剤 | 4,800万円 | 4,400万円 | −8.6% |
| 育毛剤 | 7,600万円 | 7,900万円 | +4.7% |
| パーマ剤 | 2,900万円 | 1,900万円 | −32.3% |
トイレタリーが7割を占め、伸びもそこに集まっています。一方で、美容室が施術に使うカラー剤とパーマ剤は減っています。説明文の冒頭には「来店客数の減少や客単価の伸び悩み」とあります。客が持ち帰る品は売れているのに、椅子に座る客そのものは減っている。自分で書いている業界の心配が、内訳にそのまま出ています。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は7月30日に出したものから動いていません。売上101億3,000万円に対して第1四半期は6分の1ほどです。営業利益18億3,000万円に対しては0.5%で、ほぼゼロです。表紙の予想から私が割った数字です。
| 残り9か月に必要な額 | |
|---|---|
| 売上高 | 84億6,600万円 |
| 営業利益 | 18億2,100万円 |
| 経常利益 | 18億7,000万円 |
| 純利益 | 12億5,600万円 |
短信は2か所で「第1四半期の構成比率は小さい」と繰り返しています。実績もそれを裏付けます。前期の通期営業利益19億9,500万円は、第1四半期の赤字4,900万円を引いたあとの数字です。その赤字を足し戻すと、前年の残り9か月はおよそ20億4,400万円稼いだことになります。
今年の18億2,100万円という置き方は、それより低い。通期で営業利益が8%減るという見込みを、第1四半期を経ても変えていません。優待費用が第2四半期に乗ってくることを考えれば、据え置きは自然だと思います。
私はどう読んだか
黒字転換は「まだ本業の話ではない」という見方をしています。理由は、営業利益900万円が優待費用のずれで作られていて、経常利益の半分以上が違約金だからです。
一方で、悪い決算だとも思っていません。主力の伸びは本物で、現金の減り方は毎年の税金と配当で説明が付き、自己資本比率は8割あります。勝負は下半期で、第1四半期はもともと判定に使える四半期ではないのだと、短信を最後まで通して納得しました。
心配性なので、一つだけ頭に残しています。在庫が3か月で4億円以上増えたことです。第2四半期でそれが減っているか、優待費用の乗った販管費がどこまで膨らむか。次の短信で確かめるつもりです。
出典:決算短信(会社発表)
違約金収入3,862万円が、誰との、どんな契約で発生したものかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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