東京の23区内に、一棟丸ごとの賃貸マンションやアパートを建てて、投資家に売る会社です。買うのは、家賃収入を目的にする個人や、円安を追い風に日本の不動産を見に来ている海外の投資家です。土地を仕入れ、設計し、グループの建設会社が建て、売り、売ったあとの入居者募集や管理まで自分たちで受け持ちます。
私は自動車部品を作る会社にいますが、仕組みは似ています。材料を仕入れて、製品にして、出荷する。ただ、一つの製品が数億円で、建てている間はお金が入ってきません。だから仕入れの資金はほとんど借金で賄います。売れたら返して、また借りる。この会社の決算を読むときは、損益計算書と同じくらい、借入の動きを見ることになります。
この決算で何が起きたか
9月14日に出た2026年7月期の通期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 368億9,400万円 | 297億9,600万円 | +23.8% |
| 営業利益 | 47億400万円 | 33億7,300万円 | +39.5% |
| 経常利益 | 39億8,100万円 | 26億8,300万円 | +48.4% |
| 純利益 | 27億4,500万円 | 18億9,300万円 | +45.0% |
配当も12円から15円に上がっています。1ページ目だけを見れば、文句の付けようのない決算です。ただ、営業利益の伸びより経常利益の伸びが大きいところで、私は手が止まりました。
売ったものが、土地から建物へ移った
まず営業段階の伸びは、中身が変わったことで説明が付きます。15ページと16ページのセグメントの表に、売上の内訳があります。
| 売上の内訳 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 主力ブランドの新築一棟 | 180億8,200万円 | 293億7,400万円 |
| そのほか | 62億9,200万円 | 12億900万円 |
出どころは短信15ページと16ページのセグメント情報です。主力ブランドの新築一棟が増え、そのほかが減りました。
4ページの会社の説明文を重ねると、そのほかの中身が分かります。前期は開発事業用地を14件引き渡していました。今期は2件です。つまり前期は、土地を仕入れて建てずに売った分が売上の2割ほどありました。今期はそれがほぼ消えて、自分で建てた建物の販売に入れ替わっています。建物の引渡しは31棟から39棟です。
売上総利益率も上がっています。
| 売上総利益率 | 売上総利益 | 売上高 | 率 |
|---|---|---|---|
| 前期 | 56億9,700万円 | 297億9,600万円 | 約19.1% |
| 今期 | 74億7,800万円 | 368億9,400万円 | 約20.3% |
出どころは短信9ページの損益計算書で、率は私の割り算です。会社が「当初予想を上回る高い利益率」と書いているのは、この入れ替わりの結果だと私は受け取りました。ここまでは、良い話です。
経常利益の伸びに、違約金収入2億5,442万円が入っている
引っかかったのは9ページ目の損益計算書、営業外収益の欄です。
| 営業外の主な項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 違約金収入 | 249万円 | 2億5,442万円 |
| 損害賠償収入 | 無し | 1,645万円 |
| 支払利息 | 5億5,493万円 | 6億7,893万円 |
| 支払手数料 | 2億1,122万円 | 3億3,102万円 |
違約金収入が、249万円から2億5,442万円に跳ねています。13ページのキャッシュ・フロー計算書を見ると「違約金の受取額」として2億5,435万円が現金でも入っているので、帳簿上の話ではなく、実際に受け取ったお金です。誰から、何の契約の違約金なのかは、決算短信には書かれていません。
同じ損益計算書の下のほうには、特別損失に和解金7,398万円があります。こちらも中身の説明は短信にはありません。違約金を受け取り、和解金を払う。……いや、この2つが同じ話なのかどうかも分からない。
数字で確かめます。経常利益は39億8,100万円で、前期は26億8,300万円でした。引き算をすると、増加は12億9,800万円です。営業利益の増加は13億3,100万円ありましたから、営業外では差し引きで3,300万円ほど減っているはずです。
営業外費用のほうは、7億7,000万円から10億2,500万円へ増えています。増加分は2億5,500万円で、支払利息と支払手数料が増えた分です。この費用の増加を、違約金収入2億5,442万円がちょうど埋め戻しています。営業利益の伸びがそのまま経常利益の伸びになったのは、一度きりの収入のおかげです。
現金は増えた。ただし借りて増えた
もう一つ、キャッシュ・フロー計算書には、この会社の商売の形がそのまま出ています。期末の現金は96億2,900万円で、前の期末から48億4,000万円増えました。ただし営業活動で稼いだ現金は16億1,200万円で、前期の28億9,400万円から減っています。理由は、棚卸資産が14億2,100万円増えたからです。建てている途中の建物と、仕入れた土地です。
現金を増やしたのは財務活動です。長期の借入で132億9,200万円を借り、105億600万円を返しました。貸借対照表を見ると、返す期限の違いで動きが逆になっています。
| 長期借入金 | 前期末 | 今期末 |
|---|---|---|
| 1年以内に返す分 | 64億1,400万円 | 35億3,300万円 |
| 1年より先に返す分 | 68億2,900万円 | 124億9,600万円 |
出どころは短信の貸借対照表です。1年以内に返す分が減り、1年より先に返す分が増えました。返す期限が先へ延びた形です。
6ページには、会社自身が並べた指標の表があります。営業キャッシュ・フローで利払いを何回賄えるかを示すインタレスト・カバレッジ・レシオが5.3倍から2.4倍へ、有利子負債を営業キャッシュ・フローで割った年数が5.5年から12.0年へ動きました。
商売が在庫を積んで売る型である以上、借入が膨らむ年があるのは当たり前です。それでも、自分でこの2つの数字を印刷して出しているところに、私は目が行きました。
会社はどう説明しているか
6ページの今後の見通しでは、城南・城西地区を中心に年間44件前後の販売を計画する、とあります。今期の39棟からもう少し増やす計画です。一方で、事業環境の説明には「金利上昇局面への移行」に注意を要する、と会社側の言葉で入っています。会社もそこを心配していることは分かります。
違約金と和解金は、表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに書いてあるのかもしれません。私はまだ読んでいません。
来期の予想は、営業と経常で温度が違う
通期の決算なので、進み具合ではなく、会社が来期をどう置いたかを見ます。
| 2027年7月期 予想 | 第2四半期累計 | 通期 | 通期の増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 411億円 | +11.4% |
| 営業利益 | 18億円 | 50億円 | +6.3% |
| 経常利益 | 13億円 | 40億円 | +0.5% |
| 純利益 | 9億円 | 28億円 | +2.0% |
営業利益は6%伸びる予想なのに、経常利益はほぼ横ばいです。営業利益と経常利益の差を、今期と来期で並べます。
| 営業利益と経常利益の差 | 営業利益 | 経常利益 | 差 |
|---|---|---|---|
| 今期(実績) | 47億400万円 | 39億8,100万円 | 約7億2,300万円 |
| 来期(予想) | 50億円 | 40億円 | 約10億円 |
出どころは短信の業績予想の表と9ページの損益計算書で、差は私の引き算です。差が2億7,700万円広がります。
これは、違約金収入2億5,442万円が来期は無いと、会社が自分で見込んでいる数字だと私は考えています。つまり、今期の経常利益48%増は、会社自身も一度きりと見ているわけです。
私はどう読んだか
営業利益の伸びは本物だと考えています。理由は、土地を売る商売から建物を建てて売る商売へ中身が入れ替わり、売上総利益率が上がっているからです。
経常利益と純利益の伸び率は、そのままでは受け取りません。違約金収入の分を引くと、営業外費用の増加がそっくり残ります。心配性なので、頭に残るのは違約金より、6ページの表で利払いの余裕が半分以下になったほうです。金利が上がる局面で在庫を積む商売が、次に何を持ってくるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

違約金収入2億5,442万円が何の契約のもので、特別損失の和解金7,398万円と関係があるのかどうかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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