はじめに
テルモは医療機器の会社です。中心にあるのはカテーテル、細い管を血管の中に通して心臓の治療をするための道具で、これは病院の中でも心臓カテーテル室という専用の部屋で、医師が使うものです。ほかに、点滴や注射のまわりの製品、献血や輸血で血液を扱う機器も作っています。健康な人はテルモの製品をほとんど目にしませんが、入院した人の腕には、たいていどこかでテルモのものがつながっています。売上の8割ほどは海外です。日本の会社ですが、稼いでいる場所は米州と欧州が大きい。
その第1四半期の決算短信が、2026年8月7日に出ました。同じ日に通期予想の上方修正も出ています。1ページ目の数字はかなり派手です。ただ、この派手さの中身を確かめるには、注記まで行く必要がありました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 311,810 | 259,965 | +19.9% |
| 営業利益 | 89,480 | 55,885 | +60.1% |
| 税引前四半期利益 | 90,321 | 55,259 | +63.5% |
| 純利益 | 70,426 | 41,843 | +68.3% |
売上が2割増えて、営業利益が6割増。この開き方を見た時点で、増収の勢いだけでは説明がつかない何かが利益側にあるはずだ、と思いながら読み進めました。
最初の表では分からなかったこと
一時的な損益が170億円、うち和解金が201億円
セグメント情報の注記に、営業利益の内訳が出ています。当期の営業利益89,480百万円には「一時的な損益」が17,084百万円乗っています。その中身として受取和解金20,110百万円が挙げられています。前年同期の一時的な損益は1,855百万円でした。
ここに引っかかりました。営業利益の増加額は約336億円ですが(これは私が引き算した数字です)、和解金だけで201億円ある。何の和解なのかは、決算短信には書かれていません。
会社が自分の管理指標として使っている調整後営業利益──買収に伴う無形資産の償却費と一時的な損益を除いた利益──で見ると、59,103百万円から79,607百万円へ。率にすると34.7%増で、為替の影響も除くと25.3%増です。これでも十分に強い数字ですが、見出しの60.1%とは景色が違います。
関税の「還付」
4ページ目の会社の説明文に、売上総利益の増加要因として「米国関税の還付を受けたことが寄与し」とあります。払った関税が戻ってきた、という話です。ただし、還付がいくらだったのかは、決算短信には書かれていません。金額の分からない押し上げ要因が、和解金のほかにもう1つある、ということになります。
利益に現金がついてきている
12ページ目のキャッシュ・フロー計算書まで行くと、営業キャッシュ・フローは32,639百万円から74,478百万円へ。前年同期の倍以上です。棚卸資産の増え方が前年より小さく(前年は105億円増、今回は32億円増)、利益の増加がそのまま現金に落ちています。……和解金は現金で入ってくるので当然といえば当然だが、それを差し引いても厚い。
財務のほうでは、長期借入金を1,600億円返済しています。その置き直しとして、新たな長期借入988億円と社債発行793億円を調達しました。後発事象の注記には、7月にさらに2年債400億円を発行し、10月末返済期日の借入金に充てるとあります。借金の入れ替えを淡々とやっている四半期でもありました。
伸びが偏っていない
セグメント別では、心臓血管が2割増、メディカルケアが1割強の増、血液・細胞が2割近い増と、3つとも増収です。血液・細胞はセグメント利益が7,036百万円から11,135百万円へと目立って伸びました。昨年10月に買収したオーガノックス社の「オーガンテクノロジーズ事業」も62億円の売上で加わっています。一時的な要因を全部脇に置いても、事業そのものは全方位で伸びていました。
会社はどう説明しているか
会社の説明はシンプルです。売上はグローバルな医療需要の拡大と為替。利益は、売上総利益の増加に加えて米国関税の還付と受取和解金。そして同じ日に、まさにこの2つ──関税の還付と和解金──を理由として通期予想を上方修正した、と自分で書いています。
つまり会社は、上方修正の主因が一時的な収入であることを隠していません。ここは素直な開示だと思います。ただ、和解金201億円が何の和解なのか、関税の還付がいくらなのかは、決算短信には書かれていません。決算補足説明資料は「有」となっていますが、今回私が読んだのは短信だけです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,239,000 | +9.5% |
| 調整後営業利益 | 274,500 | +25.1% |
| 営業利益 | 257,500 | +46.0% |
| 純利益 | 193,100 | +42.1% |
上方修正後の通期予想です。私が割り算した数字ですが、売上はちょうど4分の1、営業利益は3分の1を超えたあたりまで来ています。第1四半期としては前倒しに見えますが、その前倒し分の相当部分が和解金であることは、上に書いたとおりです。前提レートは1ドル155円と印字されています。
私はどう読んだか
「6割増益」を実力と読むか、割り引いて読むか。私は割り引いて読むほうに寄せています。理由は、一時的な損益17,084百万円が営業利益の増加分の半分を占めるからです。毎期入る性質のお金ではありません。
ただし、割り引いた後に残る数字──調整後営業利益の為替除き25.3%増、全セグメント増収、倍増した営業キャッシュ・フロー──は、それ自体で十分に強い。派手な見出しの下に、地味に強い決算が入っていた、というのが私の読み方です。読み違いかもしれませんが、和解金を除いても文句の出にくい四半期だと思います。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260805510494.pdf
受取和解金20,110百万円が何の和解によるものか、米国関税の還付がいくらだったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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