はじめに
サンエー化研は、プラスチックを貼り合わせたり加工したりする会社です。事業は3本柱で、1つ目が軽包装材料。電子レンジでそのまま温められる食品の袋や、薬の錠剤を押し出すあのシート包装、化粧品の詰め替えパウチなど、スーパーやドラッグストアの棚に並んでいるものの「袋」の側を作っています。2つ目が産業資材。紙や布に樹脂を貼るラミネートや、シールの台紙にあたる剥離紙です。3つ目が機能性材料で、電子部品を加工するときに表面を守る保護フィルム。データセンターの機械や、折りたたみスマートフォンの画面のような、傷が付いたら終わりのものに貼られます。
つまり、製品そのものは表に出ない会社です。袋の中身や、フィルムの下の部品が主役で、この会社のものはいつも脇にいる。そういう会社の2026年8月6日に出た第1四半期決算(2027年3月期Q1)を読みます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,124百万円 | 7,905百万円 | +15.4% |
| 営業利益 | 930百万円 | 162百万円 | +473.3% |
| 経常利益 | 1,004百万円 | 229百万円 | +337.3% |
| 純利益 | 766百万円 | 142百万円 | +437.3% |
売上は15.4%増えました。営業利益は前年の162百万円から930百万円になっています。増収率と増益率の桁が2つ違います。こういう決算は、増えた理由がどこにあるのかを見に行かないと、何も読んだことになりません。
最初の表では分からなかったこと
赤字だったセグメントが、利益の3分の1を稼いでいた
10ページ目のセグメント情報に、この決算のいちばん大きな変化がありました。
| セグメント利益(千円) | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 軽包装材料 | 120,762 | 368,175 |
| 産業資材 | 47,292 | 261,486 |
| 機能性材料 | △30,914 | 300,336 |
機能性材料です。前年の同じ時期は30百万円の損失でした。それが今回、300,336千円の利益を出しています。損失だった事業が、3つのセグメントの中で2番目に稼ぐ事業に変わった。データセンターと折りたたみスマートフォン向けの保護フィルムが好調だった、と会社は書いています。1ページ目の「営業利益+473.3%」という派手な数字の中身は、3事業とも増益、なかでもここの反転が効いている、という構図でした。
粗利が大きく増えて、販管費はほぼ動いていない
損益計算書を見ると、売上総利益は前年の1,017,685千円から1,801,822千円に増えています。売上の増え方が15.4%なのに対して、粗利の増え方はそれよりずっと大きい。一方で販売費及び一般管理費は855,374千円から871,285千円と、ほとんど動いていません。……売る量が増えただけなら、こうはならない。原価の側で何かが変わっています。会社の説明は後の節で書きますが、増益の質としては、経費を削って絞り出した利益ではなく、原価率の改善で出た利益です。
キャッシュ・フロー計算書は「作成しておりません」
私はいつも添付資料のキャッシュ・フロー計算書まで読みに行きます。今回も10ページ目まで行きました。そこにあったのは「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」の一行です。第1四半期では作らない会社は珍しくないので、これ自体を責める話ではありません。ただ、代わりに貸借対照表を見ると、引っかかるものはありました。
会社自身が5ページ目に書いている増減で言うと、売掛金が11億78百万円増えています。電子記録債権も6億38百万円増えました。一方で現金及び預金は4億90百万円減っています。売上が立って、債権が積み上がって、現金はまだ入ってきていない。766百万円の純利益が現金の裏付けを持っているかどうかは、この短信からは確かめられません。買掛金や電子記録債務も同じ方向に増えているので、商売の規模が膨らんだときの普通の姿とも読めます。読めますが、確かめられないことは確かめられないと書いておきます。
会社はどう説明しているか
会社の説明文はこうです。電子部品加工用保護フィルムの需要が旺盛なこと、備蓄需要の高まりから受注が増えたこと、原材料価格の動きを踏まえた価格対応ができたこと。利益側は、生産体制の変更で委託加工費を削減し、固定費の増加を抑えたこと。
このうち、委託加工費の削減と価格対応は、続く性質のものです。粗利の増え方とも辻褄が合います。ここはそのまま受け取ります。
留保をつけたいのは産業資材です。会社は自分で「梱包資材の需給ひっ迫の影響から備蓄需要が高まり」「値上げ前の駆け込み需要があった」と書いています。備蓄と駆け込みは、将来の注文を今に引き寄せた売上です。引き寄せた分は、後の四半期のどこかで消えます。産業資材の2割増収を、そのまま4回続く前提で読むことはできません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
会社は同じ日に通期予想の上方修正を出しています。修正後の予想に対する進み具合がこれです。
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 34,000百万円 | 26.8% |
| 営業利益 | 2,100百万円 | 44.3% |
| 純利益 | 1,600百万円 | 47.9% |
3ヶ月で4分の1が目安のところ、営業利益は半分近くまで来ています。上方修正した直後の予想に対して、です。ここから先は私が引き算した数字ですが、残り9ヶ月に会社が置いている純利益は834百万円で、前年の同じ期間と比べて+2.3%。つまり会社は、修正後の予想でさえ、この四半期の勢いが続くとは置いていません。備蓄と駆け込みを自分で書いた会社らしい、慎重な置き方だと思います。
私はどう読んだか
読み方は2つあります。機能性材料の黒字転換と原価率の改善を実力と見るか、備蓄・駆け込みの先食いに膨らまされた四半期と見るか。私は前者に寄せて読んでいます。理由は、先食いでは機能性材料の反転が説明できないからです。前倒しの注文は産業資材の話であって、赤字だった保護フィルム事業が300百万円の利益を出したことも、販管費を動かさずに粗利を増やしたことも、駆け込みでは起きません。
ただし、現金の動きだけは確認できていません。債権の増え方は気になります。次の中間決算にはキャッシュ・フロー計算書が付くはずなので、そこで営業キャッシュ・フローを見ます。私の読み違いかもしれません。そのときは、そう書きます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260724599527.pdf
営業キャッシュ・フローが利益に見合っていたのかは、計算書が作成されておらず読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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