はじめに
任天堂は、ゲーム機そのものと、その機械で遊ぶソフトを、両方とも自分で作って売っている会社です。居間のテレビの下に置く箱と、その箱に入れるソフト。どちらも同じ会社の商品なので、面白いソフトが出れば機械が売れ、機械が行き渡ればソフトが売れる、という関係になっています。
買うのは、子どもと、その親と、昔子どもだった大人です。需要は誕生日とクリスマスに寄ります。だから4月から9月は、この会社にとって商売の山ではありません。山の前に作り込んでおく時期です。近年は映画やキャラクター商品からの収入も増えて、売上の8割近くが日本の外から来ています。
8月に出た第1四半期の決算については、前の記事で書きました。売上が減ったのに利益が跳ねた理由の一つが関税の還付で、その金額が短信に書かれていない。だから本当の実力が切り分けられない、というところで終えています。今回はその続きです。
この決算で何が起きたか
11月5日に出た2027年3月期の中間決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,660億4,100万円 | 1兆995億6,500万円 | -12.1% |
| 営業利益 | 2,165億円 | 1,451億8,100万円 | +49.1% |
| 経常利益 | 3,006億7,600万円 | 2,360億4,000万円 | +27.4% |
| 純利益 | 2,209億1,700万円 | 1,989億3,600万円 | +11.0% |
売上は1割以上減り、営業利益は5割増えました。第1四半期に見た変な形が、半年たっても残っています。
関税の還付は、約3億USドルでした
会社が短信とは別に出した決算説明資料に、答えが置いてありました。米国IEEPAに基づく関税の還付に伴い、第1四半期に約3億USドルを売上原価の減額として計上した、と書いてあります。これは説明資料の数字です。
同じ行に、もう一つ説明が足してありました。還付の対象になった関税は、主として販売価格に転嫁せず自社で負担していたものだ、と書いています。値上げでお客に回さず自分でかぶっていた分が、そのまま戻ってきたということです。
円でいくらだったのかは、短信にも説明資料にも書かれていません。ただ、計上したのが第1四半期だけだという点は、はっきり書かれていました。つまり7月から9月の3か月には、この還付は入っていません。
第2四半期だけを取り出すと、営業利益率は約16.5%
還付が入っていない3か月があるなら、そこを取り出せば素の姿が見えます。上期の累計から第1四半期を引くだけです。
| 項目 | 第1四半期 | 第2四半期(約) | 上期累計 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,178億1,300万円 | 約4,482億2,800万円 | 9,660億4,100万円 |
| 営業利益 | 1,425億9,600万円 | 約739億円 | 2,165億円 |
| 営業利益率 | 27.5% | 約16.5% | 22.4% |
約の付いた数字は、上期累計から第1四半期の実績を引いた私の引き算です。利益率も私が割ったものです。
還付が乗った第1四半期は27.5%、乗っていない第2四半期は約16.5%。前年同期の営業利益率は13.2%でした。還付が消えても前年より3ポイントほど高い。けれども27.5%ではありません。前の記事で切り分けられないと書いた部分に、ここでやっと目安が立ちました。
もう一つ、この差をどう分けるかの材料も説明資料にあります。営業利益の段階での為替の押し上げが約222億円。上期の営業利益2,165億円の1割ほどが、商売の中身ではなく円安から来た分だということになります。
販売台数は減る見込みなのに、棚卸資産が半年で5割増えました
貸借対照表です。棚卸資産が3月末の5,398億400万円から9月末の8,145億7,000万円へ増えました。半年で5割増です。この半年で現金及び預金は1兆7,918億200万円から1兆5,538億6,500万円へ減りました。支払手形及び買掛金は2,360億8,200万円から3,706億5,400万円へ増えています。
年末商戦の前に在庫を積むのは、この会社では当たり前の動きです。前の記事でも同じ形を見ました。引っかかったのは台数の側です。説明資料では、Nintendo Switch 2 のハードが前年同期比37.4%減の649万台。通期のハード予想も1,650万台で、前期実績から16.9%の減少を見込んでいます。
……いや、噛み合っていない。減ると見込んでいる期に、在庫が5割増える。
もっとも、棚卸資産にはソフトもアクセサリも部材も入ります。どの製品の在庫が増えたのかは、短信には書かれていません。セグメント情報も、この中間期の短信には付いていません。
現金が2,380億円ほど減った中身も追えませんでした。理由は、この短信にキャッシュ・フロー計算書が無いからです。添付資料の目次には、貸借対照表と損益計算書と注記しか並んでいません。第1四半期のときと同じで、現金の出入りは今回も分かりませんでした。
会社はどう説明しているか
短信4ページ目の説明は一貫しています。ハードの台数が減って売上は落ちたが、ソフトの売上構成比が上がったことと、関税の還付を受けたことで営業利益が増えた。ここは損益計算書と素直につながるので、そのまま受け取ります。
通期予想は5月8日に公表したものから変更なし。その前提も説明資料に書いてありました。メモリを中心とする部材価格の高騰や関税の支払い等で原価が重くなる影響として、約1,000億円を織り込んでいます。前提為替レートは1USドル150円。9月末の実際のレートは157.09円でした。
前提より円安で、押し上げの方向です。それでも予想を1円も動かしませんでした。織り込んだ原価の重さが、円安の分を食う計算なのでしょう。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 上期実績 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆500億円 | 9,660億4,100万円 |
| 営業利益 | 3,700億円 | 2,165億円 |
| 経常利益 | 4,300億円 | 3,006億7,600万円 |
| 純利益 | 3,100億円 | 2,209億1,700万円 |
割ってみると、売上は半分弱、営業利益は6割近く、純利益は71.3%まで来ています。残り6か月に必要な純利益は、通期予想の3,100億円から上期の2,209億1,700万円を引いた分です。890億8,300万円で、前年の下半期から6割減になります。営業利益も同じように引きます。通期予想の3,700億円から上期の2,165億円を差し引くと、残りは1,535億円。3割近い減少です。年末商戦を含む半年について、会社はそう見込んでいるわけです。
経常利益の進捗が営業利益より高いのは、営業外です。持分法による投資利益608億円と受取利息267億円。前年同期にあった為替差益184億円は無くなり、代わりに為替差損72億円が出ています。それでも営業外収益の合計は919億円で、前年とほぼ同じでした。
配当は中間が76円で、前期の中間42円から増えました。期末予想86円を足すと、年間は162円になります。前期の年間は219円でしたから、通期では下回ります。
私はどう読んだか
前の記事では、利益の派手さは一時的なものだという見方をしました。その見方は、半分だけ直します。還付が無い第2四半期でも約16.5%で、前年同期の13.2%より高い。ソフトとデジタルの比率が上がった分は、本物だったと考えています。
ただ、第1四半期の27.5%をそのまま先に延ばすのは、やはり無理です。理由は、会社自身が残り6か月の純利益を6割減と見込んでいるからです。年末商戦を前にした会社が、自分の手元の在庫を見ながら出した数字です。そこは重く受け取ります。この半年の決算を、私は良いほうには読んでいません。
出典:決算短信(会社発表)

半年で2,747億円ほど増えた棚卸資産が、どの製品の在庫なのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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