はじめに
アルコニックスは、アルミや銅、ニッケル、レアメタルといった非鉄金属を扱う会社です。地金やスクラップを仕入れて、材料として使うメーカーに届ける商社の仕事が一方にあります。もう一方は製造で、半導体製造装置や実装装置に組み込む部品、北米向けの半導体関連や電気設備の部材を、自分たちの工場で作っています。
買い手は、自動車や車載電池の工場、半導体やデータセンターに関わる工場です。非鉄金属がどこを通ってきたかを気にする人はあまりいません。この会社は、その途中に立っています。事業は商社流通と製造に分かれ、この四半期にはインドの会社と国内の会社が新しく連結に加わりました。
この決算で何が起きたか
2026年8月5日に出た第1四半期の決算短信です。同じ日に、通期予想と配当予想の修正も出ています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 725億1,200万円 | 525億600万円 | +38.1% |
| 営業利益 | 69億3,000万円 | 24億4,500万円 | +183.4% |
| 経常利益 | 71億4,300万円 | 20億5,200万円 | +248.0% |
| 純利益 | 56億9,100万円 | 12億6,700万円 | +349.0% |
4つの事業すべてが増収増益です。営業利益率は4.7%から9.6%へ倍になりました。配当予想は87円から95円へ引き上げられました。ここまでは1ページ目の話です。
アルミ銅事業は、3か月で通期予想を超えていた
引っかかったのは、6ページ目の修正予想の表と、4ページ目のセグメントの表を並べたときです。事業ごとの利益(この短信では経常利益)を、第1四半期の実績と、同じ日に引き上げたばかりの通期予想で見比べると、こうなります。
| 事業 | 第1四半期の利益 | 修正後の通期予想 | 残り9か月 |
|---|---|---|---|
| 商社流通 電子機能材 | 27億5,700万円 | 45億円 | 約17億4,300万円 |
| 商社流通 アルミ銅 | 12億9,500万円 | 10億円 | 約△2億9,500万円 |
| 製造 装置材料 | 15億5,100万円 | 35億円 | 約19億4,900万円 |
| 製造 金属加工 | 15億5,500万円 | 50億円 | 約34億4,500万円 |
約の付いた数字は、通期予想から第1四半期の実績を私が引いたものです。
アルミ銅事業は、3か月で12億9,500万円の利益を出しました。引き上げた後の通期予想が10億円です。……いや、3か月で1年分を超えている。残りの9か月を、会社側はこの事業で約2億9,500万円の損失と置いていることになります。電子機能材も、同じ速さが続く前提にはなっていません。
「特需」と、会社が自分で書いていること
なぜそう見込んだのか。4ページ目の説明文に、答えに近い言葉がありました。中国の輸出規制と中東情勢で、レアメタルやアルミが手に入りにくくなるという懸念が広がった、とあります。それを受けて、リサイクル材を中心に需要家が在庫を確保しに来た、と続きます。同社はこれを「特需」と呼んでいます。アルミ銅がスクラップ取引で伸びた、という同じページの説明とつながります。
特需は、次の四半期の需要を先に取り込む種類の売上です。在庫を積んだ客は、しばらく買いに来ません。ここまでは短信の言葉から分かることです。アルミ銅の残り9か月が赤字になっているのは、その反動を数字にしたものだ、と私は受け取りました。
純資産が337億円増えた大半は、持っている株式の評価額
もう一つ、1ページ目の自己資本比率だけでは見えないものがあります。純資産は前期末から337億6,900万円増えました。この3か月の四半期純利益は57億3,300万円です。差が大きすぎるので貸借対照表を開くと、投資有価証券が167億8,000万円から588億9,500万円へ増えていました。
新しく買ったのかと思ったのですが、違うようです。純資産の内訳で、その他有価証券評価差額金が286億9,400万円増え、固定負債の繰延税金負債が132億800万円増えています。この2つを足すと約419億200万円で、投資有価証券の増加額421億1,500万円とほぼ同じです。これは私の足し算です。
つまり増えた分のほぼ全部が、持っている株式の評価額が膨らんだことによるもので、現金を払って買い足したのではありません。
四半期包括利益は351億3,400万円で、前年同期は3億8,900万円のマイナスでした。本業3か月分の5倍を超える額が、評価の動きだけで純資産に入っています。自己資本比率が35.6%から39.0%へ良くなったのは、この分です。どの銘柄をどれだけ持っているのかは、決算短信には書かれていません。
純利益の伸びには、売却益と評価益が乗っている
表紙の純利益の伸びは営業利益の伸びより大きく、損益計算書に理由が2つあります。特別利益に投資有価証券売却益8億9,200万円が入っていることと、営業外にデリバティブ評価益2億9,300万円が入っていることです。前年同期は逆に、デリバティブ評価損が3億100万円ありました。この評価損益は、翌四半期に反対へ振れることがあります。
これらを除いても営業利益は3倍近くで、本業が伸びた決算であることは変わりません。ただ、残り9か月の純利益が前年より2割少なくなっているのは、売却益が二度は出ないことの表れでもあります。
キャッシュ・フロー計算書は無く、貸借対照表で追うしかない
第1四半期はキャッシュ・フロー計算書を作っていない、と10ページ目の注記にあります。代わりに貸借対照表の動きを並べます。
| 項目 | 前期末からの増減 |
|---|---|
| 現金及び預金 | +43億2,500万円 |
| 売掛金・受取手形・電子記録債権 | +112億4,700万円 |
| 棚卸資産 | +90億6,500万円 |
| 買掛金・支払手形・電子記録債務 | +118億8,100万円 |
| 短期借入金 | +68億6,900万円 |
売上が増えた分だけ売掛金と在庫が膨らみ、その一部を短期の借入で賄っている形です。売上が4割近く伸びたのですから珍しいことではなく、現金も増えているので心配していません。支払利息が前年同期の2億5,100万円から3億8,000万円へ増えている点だけ、頭に置いておきます。
会社はどう説明しているか
6ページ目に、修正の理由が書かれています。非鉄関連の価格が高い水準で続いたこと、需要家による特需、半導体関連が引き続き堅調なことで、全セグメントが好調に推移したとあります。そのうえで、年度末に向けて需要が平らになること、金属の価格が下を向くことを、変動要因として自分で挙げています。
特需と書いた事業の残り9か月を赤字と置き、変動要因を挙げたうえで、それでも期初予想は超えると言っています。良い言葉だけを並べた修正予想より、こちらのほうが読みやすい。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | 残り9か月 | 残りの前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,650億円 | 725億1,200万円 | 27.4% | 1,924億8,800万円 | +15.1% |
| 営業利益 | 147億円 | 69億3,000万円 | 47.1% | 77億7,000万円 | +6.5% |
| 経常利益 | 140億円 | 71億4,300万円 | 51.0% | 68億5,700万円 | −0.5% |
| 純利益 | 92億円 | 56億9,100万円 | 61.9% | 35億900万円 | −19.0% |
進み具合と残り9か月は、通期予想と第1四半期の実績から私が出したものです。
経常利益は3か月で半分を過ぎています。残りの9か月は、売上こそ前年より多く見込んでいますが、経常利益はほぼ横ばい、純利益は2割減です。第1四半期の分をそっくり上乗せして、あとは前年並み、という組み立てです。
私はどう読んだか
見方は2つあります。会社側が控えめにしていて、残りの期間に上振れの余地がある、というもの。もう1つは、第1四半期に続かないものが入っていて、この予想が実態に近い、というものです。
私は後者だと考えています。理由は、「特需」という言葉を同社が自分で選び、アルミ銅を赤字と置いた数字がそれに揃っているからです。在庫を積んだ客が次の期に来ないことは、私自身が資金繰りの側で何度も経験しているので、あまり疑っていません。値段の話はしません。3か月で1年分を稼いだ事業が、次の3か月に何を出してくるか、だけを見に行きます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260804507949.pdf
特需で積まれた需要家の在庫が、いつ減り始めるのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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