東海旅客鉄道(9022)2027年3月期 中間決算分析――上方修正より、運輸業の減益が気になる

東海旅客鉄道(9022)2027年3月期 中間決算分析――上方修正より、運輸業の減益が気になる 日本株

はじめに

JR東海です。東京と新大阪を結ぶ東海道新幹線を走らせている会社で、名古屋を中心に在来線も持っています。出張で新幹線に乗る会社員、週末に京都へ行く家族、東京と京都を往復する海外からの旅行者。そうした人の多くが、この会社の切符を買っています。

稼ぎのほとんどは新幹線の運賃です。ほかに、名古屋駅のデパートや駅ビル、ホテル、旅行の販売も手がけています。もう一つ、品川と名古屋を結ぶリニア中央新幹線を、自分で建設している会社でもあります。静岡の実家に帰ると、大井川の水とトンネルの話はいまでも出ます。

売上は伸び、利益はほぼ横ばいの半年

10月28日に出た中間決算で、4月から9月までの半年分です。

今回前年同期増減率
売上高1兆129億9,100万円9,822億200万円+3.1%
営業利益4,471億8,400万円4,540億5,100万円△1.5%
経常利益4,259億4,900万円4,256億6,700万円+0.1%
純利益2,884億3,600万円2,981億1,600万円△3.2%

売上高は3%ほど増え、営業利益はわずかに減りました。同じ日に通期予想を引き上げ、中間配当も1円増やしています。表紙だけなら、悪くない決算です。

売上の増加より、費用の増加のほうが大きかった

売上高は、前年同期の9,822億200万円から1兆129億9,100万円に増えました。その差を引き算すると、増えた額は307億8,900万円です。一方、損益計算書の営業費合計は5,281億5,000万円から5,657億700万円になりました。増えた額は376億5,700万円です。売上の伸びより、費用の伸びのほうが大きい半年でした。

どこで差が出たのかは、セグメントの表に出ています。

セグメント利益前年同期今回
運輸業4,282億1,100万円4,174億1,600万円
流通業71億4,700万円83億3,800万円
不動産業136億4,200万円137億3,000万円
その他(ホテル・旅行など)62億5,500万円86億3,800万円

減益は鉄道の運輸業だけで、ほかの3つは増益です。ただ、伸びた3つを足しても、運輸業の減った分には届きません。稼ぎの大半は、いまも運輸業が生んでいます。

説明文によると、東海道新幹線の輸送量は前年同期並みでした。乗る人の量は横ばいで、費用だけが上がっています。その費用の中身は、キャッシュ・フローの説明の中に一言だけありました。「労務費等の上昇に伴う費用が増加した」。物価高の中で人件費が上がっている、という話です。

経常利益を支えたのは、50億円増えた受取利息

ここで引っかかりました。営業利益は68億6,700万円減ったのに、経常利益は2億8,200万円増えています。間で何が起きたのかは、損益計算書の営業利益より下の欄で分かります。

前年同期今回
受取利息83億900万円133億5,500万円
営業外収益合計128億6,400万円200億5,200万円
営業外費用合計412億4,900万円412億8,600万円

受取利息が50億4,600万円増えて、営業利益の減少をほぼ埋めています。支払利息を含む営業外費用は、ほとんど動いていません。

利息が増えた理由は、決算短信には書かれていません。貸借対照表では、金銭の信託が1兆9,047億6,800万円から2兆1,333億4,900万円に増えています。運用に回すお金が増えた分、利息も増えた、と私は受け取りました。

リニア用に分けて管理しているお金が、半年で2,251億円減った

現金及び現金同等物は、期首より2,139億円少ない1,566億1,700万円になりました。大きな減り方に見えますが、キャッシュ・フロー計算書では定期預金への預け入れが3,714億円、払い戻しが1,872億円です。差し引き1,842億円が定期預金に移っています。会社も、投資の支出が増えた理由を「資金運用による支出が増加した」と説明しています。お金が消えたのではなく、置き場所が変わった分が大半です。

もう一つ、貸借対照表に「中央新幹線建設資金管理信託」という科目があります。注記によれば、リニア建設のために国の機構から借りたお金を、分けて管理するための信託です。借入金の3兆円はそのままです。それに対して、信託の残高は8,495億8,100万円から6,243億9,600万円に減りました。

この半年の解約額は2,251億8,500万円で、前年同期の1,566億4,800万円より多くなっています。工事にお金が出ていく速さが上がっている、と私は考えています。

会社はどう説明しているか

短信の説明文は、新幹線のダイヤ、N700S、地震対策、キャンペーンと、取り組みの話が長く続きます。数字の理由として書かれているのは3つでした。中間配当を増やしたのは「東海道新幹線のご利用が堅調に推移したこと」から。営業キャッシュ・フローが減ったのは労務費などの上昇から。投資の支出が増えたのは資金運用からです。

通期予想を引き上げた理由は、「当中間連結会計期間の実績等を反映して」の一文でした。上期が予想より良かったので引き上げた、という説明で、そこはそのまま受け取ります。気になるのは、引き上げたあとの予想の形のほうです。

上方修正しても、下期は2割近い減益の予想

営業利益の予想は、7,020億円から7,570億円に変わりました。引き上げ幅は550億円です。それでも前期の実績8,301億6,700万円よりは1割近く少ない予想です。

営業利益上期下期通期
前期(実績)4,540億5,100万円約3,761億1,600万円8,301億6,700万円
今期4,471億8,400万円(実績)約3,098億1,600万円(予想)7,570億円(予想)

約の付いた数字は、通期から上期を引いて出した私の引き算です。

上期の4,471億8,400万円で、通期予想7,570億円の6割近くまで来ています。下期に必要なのは3,098億1,600万円で、前期の下期より2割近く少ない額です。上期は前年とほぼ同じだったのに、下期は大きく減ると見込んでいることになります。……上方修正の発表で、この形は少し妙だ。

なぜ下期にそこまで減ると見込むのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあり、翌日にはアナリスト向けの説明会もあります。そちらに説明があるのかもしれません。私はまだその資料に目を通していません。

私はどう読んだか

受け取り方は2つあります。売上が伸び、予想も引き上げたので順調だという見方。もう一つは、乗る人の量が横ばいのまま費用が上がり始めていて、上期はそれを利息で埋められただけだという見方です。

私は後者の見方をしています。理由は、稼ぎの大半を生む運輸業が減益で、費用の増え方が売上の増え方を上回っているからです。会社自身も下期の営業利益が大きく減ると見込んでいて、それは上期に見えた費用の重さと同じ向きです。

配当の増額と、100億円を上限とする自己株式の取得は、株主には良い知らせです。ただ、運輸業の利益の向きを変えるものではありません。下期の費用の中身は、次の決算で確かめます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

IR資料室|株主・投資家情報(IR)|JR東海
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下期に営業利益が2割近く減ると見込む理由と、新たに計上された関係会社株式評価損36億7,700万円がどの会社の分なのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

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