日東電工(6988)2027年3月期 中間決算分析――増益の中身は円安が大きいと読みました

日東電工(6988)2027年3月期 中間決算分析――増益の中身は円安が大きいと読みました 日本株

はじめに

日東電工は、完成品の内側に入る材料の会社です。車やノートパソコンの画面に使う光学フィルムを作っています。部品の工場で一時的に貼って最後に剥がすテープや、スマートフォンの電池を固定するテープも作っています。ハードディスクの中で使う配線一体の部品も、この会社の製品です。

どれも、使う人が名前を目にすることはまずありません。買っていくのは、スマートフォンや半導体、電子部品を作る工場です。

ほかにも事業は広がっています。薬の原料になる核酸の受託製造、排水をきれいにする膜、紙おむつの材料などです。私も部品メーカーの勤め人なので、こういう会社の短信には、つい赤ペンが増えます。

売上は1割近く、利益は1割強の増加

2026年10月27日に発表された中間決算です。4月から9月までの半年分にあたります。

今回前年同期増減率
売上高5,583億6,300万円5,135億6,900万円+8.7%
営業利益1,058億4,100万円945億400万円+12.0%
経常利益———
純利益765億200万円689億2,600万円+11.0%

純利益は、親会社の所有者に帰属する中間利益です。この会社は国際会計基準で決算をまとめているので、経常利益の区分がありません。近い位置にあるのは税引前中間利益で、こちらも1割強増えています。

増えた113億円より、円安の196億円のほうが大きい

短信の4ページ目、会社の説明文の途中に、為替について一文だけ書かれています。この半年の平均は1ドル160.5円で、前年同期より9.6%の円安でした。その円安で営業利益が196億円押し上げられた、と会社は書いています。

引っかかったのは、ここです。営業利益は945億400万円から1,058億4,100万円へ増えました。増えた額は113億3,700万円です。為替の効果だけで、増えた額を上回っています。

1,058億円から196億円を引きます。残りは約862億円です。前年同期の945億円より低い水準です。……為替を抜くと、減益だ。

もう一つ、損益計算書には利益を押し上げた項目があります。その他の費用が、前年同期の83億3,800万円から52億3,900万円へ減っています。内訳は、決算短信には書かれていません。

メモリの値上がりで、テープは伸び、光学フィルムは減った

では為替のほかに、事業では何が起きていたのか。事業ごとの表を前年と並べると、伸びたものと縮んだものがはっきり分かれます。

事業前年同期今回増減率
インダストリアルテープ 売上1,791億8,900万円2,081億1,200万円+16.1%
インダストリアルテープ 営業利益236億8,300万円358億3,200万円+51.3%
オプトロニクス 売上2,698億5,900万円2,707億1,500万円+0.3%
うち 情報機能材料2,001億100万円1,736億8,100万円△13.2%
うち 回路材料697億5,800万円970億3,400万円+39.1%
オプトロニクス 営業利益770億8,600万円739億5,000万円△4.1%
ヒューマンライフ 営業利益△15億9,800万円10億2,000万円—

テープの営業利益は5割増えました。会社の説明によると、データセンター向けの需要で、半導体メモリやセラミックコンデンサーを作る工程の材料が伸びています。スマートフォンの電池を固定するテープも、採用する機種が増えました。

一方で、光学フィルムを含む情報機能材料は1割以上減っています。理由は、ノートパソコンやタブレットのメーカーが生産を絞ったことです。生産を絞ったのはメモリ半導体の価格が上がった影響だ、と短信には書かれています。

同じメモリの値上がりが、テープでは工程材料の注文を増やし、画面のフィルムでは注文を減らした、と私は読みました。短信はこの2つを別の段落に書いていて、つなげてはいません。

回路材料は4割近く伸びています。高精度基板の新製品と、データセンター向けの大容量ハードディスクに使う部品が理由です。ヒューマンライフは、核酸受託製造の大型案件が商用の生産に移って黒字になりました。ただ、いちばん稼いでいるオプトロニクスは減益です。

稼いだ現金は、自己株式の取得と配当へ

キャッシュ・フロー計算書では、営業キャッシュ・フローが前年同期の750億300万円から1,088億4,700万円へ増えました。中間利益を上回っています。

増えた理由の一つは、法人税の支払いが317億3,400万円から196億7,600万円へ減ったことです。もう一つは前受金で、半年で87億5,700万円増えています。何の前受金なのかは、決算短信には書かれていません。

現金は274億4,600万円減りました。自己株式の取得に501億8,300万円、配当に202億900万円を使っています。事業で現金を失ったわけではありません。10月20日には取得した株の一部を消却しました。同じ日の取締役会では、上限500億円の追加取得も決めています。年間配当の予想も、60円から72円に引き上げました。

会社の説明は、需要の話が先に来る

会社の説明は、データセンター向けとスマートフォン向けの需要が伸び、原材料の値上がりは販売価格の見直しで抑えた、という筋です。事業ごとの表と食い違うところはなく、この部分はそのまま受け取ります。

気になるのは順番です。需要の話が先に並び、為替は「なお」で始まる一文にまとめられています。196億円をはっきり書いたこと自体は誠実だと思います。ただ、増益の大きさを考えるなら、為替は最初に来てもいい話です。

通期予想は据え置き、下期は控えめ

営業利益上期下期通期
前期 実績945億400万円約891億円1,836億1,500万円
今期1,058億4,100万円(実績)約941億円(残り)2,000億円(予想)

約の付いた数字は、通期から上期を私が引いたものです。

通期予想は、売上1兆1,100億円、営業利益2,000億円のまま変わっていません。売上はちょうど半分まで来ていて、営業利益は半分を少し超えたところです。下期は、前年の下期を少し上回れば予想に届きます。

7月に出た第1四半期の営業利益は492億1,000万円でした。1,058億4,100万円から引くと、7月から9月の3か月は566億3,100万円です。下期の6か月は、この3か月が2回続く長さです。同じ調子で稼げば、約941億円を大きく上回ります。

会社は、テープなどの需要は想定を上回る一方、光学フィルムは弱いとして、事業ごとの予想を見直しました。それでも合計は動かしていません。その理由と、下期にどの為替水準を前提にしているのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とありますが、私はまだそちらを開いていません。

私はどう読んだか

受け取り方は2つあります。円安に支えられた増益なのか、事業の入れ替わりが進んだ結果なのか。

私は前者の見方をしています。理由は、為替を抜くと営業利益が前年同期を下回り、いちばん稼いでいる事業が減益だからです。

ただ、テープの営業利益が5割増えたことは、為替だけでは説明しきれません。そこは事業の力だと考えています。上がるかは知りません。心配性なので、下期は光学フィルムの戻り方から確かめます。

出典:決算短信(会社発表)

Nitto 日東電工株式会社
Nitto Webサイト: Global Niche Top™とArea Niche Top™で 次のイノベーションを生み出すNittoグループのオフィシャルサイトです。

前受金が半年で87億5,700万円増えた理由と、通期予想が前提にしている為替水準は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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