トリケミカル研究所(4369)2027年1月期 中間決算分析――製品在庫の減り方が引っかかる

トリケミカル研究所(4369)中間決算分析――営業キャッシュ・フロー4,877百万円のうち、「未収消費税等」の行が1,111百万円あった 決算を読む

半導体は、シリコンの板の上に薄い膜を何層も重ねて作ります。その膜の材料になる化学物質を作っているのが、山梨県のトリケミカル研究所です。買い手は半導体メーカーで、使う場所は工場の中の成膜装置やエッチング装置です。

短信の補足情報は、製品を用途ごとに分けています。トランジスタの絶縁膜に使うHigh-k材料、配線に使うMetal材料、不要な部分を削るためのEtching材料です。量は少なく純度は極端に高く、作れる会社が限られる商売です。韓国には持分法で扱う合弁会社があり、山梨の南アルプス事業所では新しい材料の生産体制を整えている途中です。

1ページ目は文句のない数字です。引っかかったのは、貸借対照表の在庫の行でした。

売上も利益も2割増、粗利率は2ポイント下がっています

8月31日に出た中間決算です。

今回(2026年2月〜7月)前年同期増減率
売上高147億500万円123億7,500万円+18.8%
営業利益38億3,800万円31億7,700万円+20.8%
経常利益45億2,600万円38億円+19.1%
純利益33億7,300万円27億7,600万円+21.5%

営業利益率は4分の1ほどで、前年とほぼ同じ水準です。

ただ売上原価は2割強増えていて、売上の伸びより速いのです。粗利率は、私の割り算で前年の38.1%から36.2%へ下がっています。差は2ポイントです。営業利益率が保てたのは、販売費及び一般管理費が15億3,996万円から14億9,100万円へ減ったからです。売上が2割増えた半年で販管費が減った、というのは会社の書く経費削減の言葉と合っています。

製品在庫が半年で4分の1になっていました

貸借対照表の棚卸資産の3行です。

棚卸資産前期末(1月31日)中間期末(7月31日)
商品及び製品14億2,685万円3億5,241万円
仕掛品22億9,561万円30億8,051万円
原材料及び貯蔵品41億4,342万円42億2,860万円

商品及び製品が14億2,685万円から3億5,241万円へ、4分の1になっています。原材料はほぼ変わらず、仕掛品は増えました。……製品だけ、これだけ減るものだろうか。

会社は流動資産の説明で「商品及び製品が減少した」と一言書いているだけで、なぜ減ったのかは短信に書かれていません。前年の同じ半年は、キャッシュ・フロー計算書の棚卸資産の行が△10億7,408万円、在庫を10億円ほど積んでいました。今年は同じ行がプラス2億4,900万円、在庫を減らした側です。

ここまでは貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書の数字です。完成した端から出荷され、仕掛品を増やして追いかけている、と私は読みました。それなら粗利率の低下は、減価償却の増えた分が原価に入り始めたためかもしれません。減価償却費は8億5,647万円から12億1,367万円へ増えています。

営業キャッシュ・フローの伸びの半分は消費税です

営業活動によるキャッシュ・フローは8割増えました。添付資料の7ページで中身を確かめると、前年からいちばん大きく動いたのは「未払又は未収消費税等の増減額」の11億1,128万円でした。

営業キャッシュ・フローの主な項目前年同期今回
税金等調整前中間純利益38億22万円45億2,622万円
減価償却費8億5,647万円12億1,367万円
未払又は未収消費税等の増減額△3億2,317万円11億1,128万円
法人税等の支払額△12億4,649万円△7億7,166万円
営業活動によるキャッシュ・フロー27億2,822万円48億7,706万円

48億7,706万円から27億2,822万円を引きます。伸びは21億4,884万円です。消費税の項目だけで、その半分を占めます。流動資産の「その他」が15億9,808万円から5億4,387万円へ減っていて、会社はそこに未収消費税が含まれると説明しています。設備投資で払った消費税が戻ってきた形です。

消費税の還付は本業の稼ぎではなく、次の半年にもう一度出てくるものでもありません。法人税の支払いも、前年より4億7,000万円ほど少なく済んでいます。この2つを外すと、伸びは利益と減価償却の増えた分に近づきます。8割増ではなく、利益と同じ2割増の水準だと私は考えています。

中国と台湾が伸び、新しい工場の材料はまだ動いていません

短信の補足情報にある、用途別の売上です。

用途前年同期今回
High-k60億8,246万円71億3,188万円
Metal23億3,660万円31億9,769万円
Etching18億2,315万円18億7,041万円
Si半導体向けその他15億1,943万円19億9,719万円
Si半導体向け以外6億1,350万円5億866万円

伸びたのはHigh-kとMetalで、Etchingはほとんど動いていません。南アルプス事業所は「新規エッチング材料等の生産拠点」だと会社が説明していますから、その材料が売上に出てくるのはまだ先です。

地域別では、中国と台湾の2つで107億9,088万円、売上全体の7割強です。これは私の足し算と割り算です。日本と韓国はわずかに減りました。

会社は生成AIのデータセンター投資を理由に挙げています

添付資料の2ページで、会社が自分の言葉で書いている理由はこうです。スマートフォンなど個人向けの需要は力強さを欠く。一方で生成AIの普及でデータセンター投資が拡大し、先端ロジック・メモリ向けの投資も堅調で、材料の需要が増えている。

利益面では経費削減と、販売価格の改定を挙げています。経常利益には、韓国の合弁SK Tri Chemに係る持分法による投資利益6億4,839万円が乗っています。

需要の説明は、High-kとMetalの伸びと製品在庫の減り方に合っていて、そのまま受け取れます。留保を付けるのは2つです。

一つは、包括利益計算書の「持分法適用会社に対する持分相当額」が△1億8,606万円と、前年の△1,820万円から膨らんでいることです。損益には出ない減り方で、中身は短信に書かれていません。もう一つは、表紙に「決算補足説明資料作成の有無:無」とあり、私が読めたのはこの短信だけだということです。

残り半年は、上期より速い3割増の置き方です

通期予想は8月31日に修正されました。修正後の数字を、上期の実績と並べます。

上期実績通期予想残り半年に必要な額前年下期
売上高147億500万円295億円147億9,500万円約115億1,200万円
営業利益38億3,800万円74億5,000万円36億1,200万円約27億2,600万円

約の付いた数字は、表紙の増減率(売上+23.5%、営業利益+26.2%)で通期予想を割り戻し、前年上期の実績を引いたものです。残り半年に必要な額は、通期予想から上期実績を引きました。

進み具合は、売上がちょうど半分、営業利益は半分を少し超えたところです。数字だけなら順調ですが、下期が楽なわけではありません。

295億円を1.235で割り戻すと、前年の通期売上はおよそ238億8,700万円です。そこから前年上期を引くと、下期はおよそ115億1,200万円になります。今年の下期に必要な147億9,500万円は、その3割増になります。上期の伸びが2割弱でしたから、下期は速くなる置き方です。営業利益も同じ計算で、3割強の増加が要ります。

期末の製品在庫が3億5,241万円しかない、という上の話がここにつながります。下期の売上は、これから生産する分でほぼ全部を賄います。有形固定資産の取得に29億7,231万円を使っていて、設備は入ってきています。作れるかどうかが下期の全部だ、と私は考えています。

私はどう読んだか

製品在庫が4分の1になったのは、売れなくなったからではないと考えています。作る速さを注文が追い越した、という見方です。理由は、売掛金と電子記録債権は増えておらず、仕掛品だけが増えているからです。作れないほど売れている会社の貸借対照表は、こういう形になります。

ただ営業キャッシュ・フローの8割増は、額面どおりには受け取っていません。半分は消費税の還付です。長期借入も24億円起こしています。支払利息は1,261万円から4,946万円へ増えました。4倍近くです。

現金が100億7,860万円まで積み上がった裏には、この借入があります。設備投資を借入で賄う判断は筋が通っていると思います。それでも心配性なので、利息の行は次の決算でも確かめます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.trichemical.com/ir/pdf/20260831.pdf

通期予想の修正がどちら向きで、いくら動いたのか――3月13日に出した前回予想の数字は、今回の短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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