花王(4452)2026年12月期 第3四半期決算分析・続報――売れた数が増えていないのが気になる

花王(4452)2026年12月期 第3四半期決算分析・続報――売れた数が増えていないのが気になる 日本株

はじめに

花王は、洗面所と風呂場と洗濯機のまわりにあるものを作っている会社です。服を洗う洗剤、顔を洗う泡、赤ちゃんのおむつ、生理用品、シャンプー、歯みがき、化粧品。買うのは特別な人ではなく、ほぼ全員です。だから景気が良くても悪くても、売れる数そのものは大きく動きません。

もう一つ、ケミカル事業という顔があります。油脂を自前で加工して界面活性剤や香料、コンクリートに混ぜる薬剤を作っています。その先に、半導体の製造に使う薬剤やハードディスクの研磨液がつながっています。洗剤の会社の内側に、素材メーカーが一社入っている作りです。

この会社の決算を読むのは2回目です。前回は8月の中間決算でした。増えた営業利益の中に一度きりの収入が混じっていたこと、そして会社がそれを自分から取り出して見せてきたことに引っかかりました。そのとき、積み上がった在庫が次の3か月で捌けるかを確かめると書きました。前の記事

この決算で何が起きたか

11月5日に出た、2026年12月期の第3四半期(1月から9月)の決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高1兆3,193億500万円1兆2,320億3,400万円+7.1%
営業利益1,465億3,900万円1,144億200万円+28.1%
純利益1,050億5,100万円847億1,900万円+24.0%

IFRS基準なので経常利益の行はありません。前年の営業利益は、会計基準の変更に伴って遡及修正された数字です。営業利益率は9.3%から11.1%へ。表紙だけ見れば、文句のつけようがない9か月です。

値上げは通り、売れた数は増えていない

引っかかったのは、短信5ページ目の売上分解の表でした。

内訳寄与
為替+4.0%
実質・数量等△0.2%
実質・価格+3.3%
合計+7.1%

7.1%のうち4.0%は円安です。残る3.1%は、価格と数量に分かれます。価格で3.3%取った一方、数量等は0.2%のマイナスでした。

……いや、ここは前の私の読みが甘かった。中間決算のときは数量等が1.3%のプラスで、値上げをしながら数も伸ばしていると書きました。9か月で見ると、数のほうはマイナスに転じています。

落ちた場所は短信に出ています。ケミカル事業の数量等は3.4%減で、海外の顧客の在庫調整が理由に挙がっています。サニタリー製品は1.3%減で、紙おむつ「メリーズ」が日本もアジアも競合の攻勢で前年を下回ったと書いてあります。衣料用洗剤は日本で数量を増やしながらシェアを広げたとあるので、全部が落ちているわけではありません。

現金が減った理由は、税金の支払いだった

営業利益は321億円増えました。ところが営業活動によるキャッシュ・フローは、1,093億7,000万円から1,030億3,500万円へ減っています。差は63億円ほどです。

ただ、一行上を見ると話が変わります。法人所得税を引く前の段階では、1,404億9,600万円から1,523億5,800万円へ増えています。こちらは118億円のプラスです。差を作っているのは法人所得税等の支払額です。311億2,600万円から493億2,300万円へ増えました。増えた額は182億円ほどです。

現金が減った直接の理由は税金の支払いです。利益に現金が付いてこなかった、という話ではありません。

在庫は、9か月たっても減らなかった

前回確かめると書いた点です。棚卸資産は昨年末の2,923億6,600万円から3,229億8,400万円へ増えました。9か月で306億1,800万円の積み増しです。中間決算の時点で3,174億7,200万円だったので、この3か月での積み増しは55億円ほど。増えるペースは落ちましたが、減ってはいません。

理由は、相変わらず短信には書かれていません。6ページ目に「機動的な調達・生産体制により安定供給の確保に努めました」とあるので、意図して持っている在庫かもしれない。説明会資料には、第4四半期は油脂の価格変動に備えて価格と在庫の管理を強化する、と書いてあります。

数で伸びているのは化粧品だけ

化粧品事業は、営業利益が29億900万円から97億8,500万円へ。数量等は5.7%増で、価格の寄与は0.7%しかありません。値段ではなく数で伸びた唯一のセグメントです。

ケミカル事業の営業利益は223億円から270億円へ増えました。ただ、こちらは価格で5.9%取って数量等が3.4%減という形です。しかも短信の説明には「未実現利益の会計処理の影響もあり」という一句が入っています。増益の一部が会計処理から来ていることになりますが、それが何億円ぶんなのかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

会社はどう説明しているか

短信は、グローバルコンシューマーケア事業が国内外で伸び、ケミカル事業の収益性も改善したことによる増益、と説明しています。セグメントの説明では「稼ぐ力の向上と販売数量の増加」が理由に挙がっていました。

ここは一つ断っておきます。販売数量が増えたのはグローバルコンシューマーケア事業(数量等1.2%増)の話で、ケミカルを含めた全社では0.2%の減です。会社が書いていることは間違っていませんが、全社の数量が減っていることは、この説明文からは分かりません。

もう一つ、第4四半期の見通しのほうが大事でした。短信5ページ目は、原材料価格や国際的なサプライチェーンコストの上昇、海外事業の収益基盤強化に伴う費用発生を挙げています。そのうえで、8月5日に公表した通期予想を据え置くとしています。

説明会資料には、原材料高による通期165億円の影響が、損益に出るのは第3四半期から第4四半期へずれる見込みだ、とも書いてあります。この9か月の利益率11.1%は、原材料高をまだ食らっていない数字だということです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は修正されていません。

項目通期予想9か月の実績進捗率
売上高1兆8,000億円1兆3,193億500万円約73%
営業利益1,900億円1,465億3,900万円約77%
純利益1,350億円1,050億5,100万円約78%

進捗率は私の割り算です。9か月なので目安は4分の3。利益は目安を超え、売上はわずかに届いていません。

残り3か月に必要な営業利益は、1,900億円から1,465億3,900万円を引いた残りです。434億6,100万円になります。前年はどうだったか。説明会資料には、前年の通期実績1,635億円が載っています。そこから前年同期の1,144億200万円を引くと、前年の第4四半期は約491億円でした。

前年の第4四半期の約491億円と、今年の残り3か月に必要な434億6,100万円を比べます。差は56億円ほどで、今年の第4四半期は前年より少ない見込みということになります。累計の28.1%増という勢いを、会社自身、最後の3か月には見込んでいません。

私はどう読んだか

読み方は2つあります。「値段で稼いだだけで数は止まった。しかも原材料高は第4四半期に来る」と受け取るか、「数が落ちたのは顧客の在庫調整と紙おむつで、注力している領域は数で伸びている」と受け取るか。

私は後者の見方をしています。理由は、数量が落ちたセグメントが2つに特定でき、落ちた理由も短信に書いてあるからです。顧客の在庫調整は、顧客が持ちすぎた在庫を減らしている期間の話で、売れなくなったのとは違います。その一方で、化粧品は値上げ抜きで数を5.7%増やしました。

心配性なので付け加えると、在庫は9か月でも減りませんでした。それと、ケミカルの増益に混じっている会計処理の影響が気持ち悪い。ここが大きければ、270億円という利益の読み方は変わります。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/investor-relations/pdf/kao-results-fy2026q3-jp.pdf

ケミカル事業の増益に含まれる未実現利益の会計処理の影響が何億円ぶんなのかは、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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