ウエハを運ぶ箱を作っている会社
信越ポリマー(7970)は、信越化学のグループで樹脂の加工を手がける会社です。いちばんの稼ぎ頭は、半導体のもとになるシリコンの円板、ウエハを入れる容器です。ウエハは小さなほこりも静電気も嫌います。そのため、工場から工場へ送るときも、工場の中で工程を移るときも、専用の箱に入れて動かします。
ほかにも、車の中で指で触れて操作するスイッチ、複写機の紙を送るローラ、小さな電子部品を並べて運ぶテープ、塩ビの建材やフィルムを作っています。どれも完成品の名前には出てこない部品です。買っていくのは、半導体工場や自動車メーカー、事務機メーカーです。
営業利益は3割増、純利益は1割増
2026年10月26日に出た、2027年3月期の中間決算です。4月から9月までの半年の数字です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 643億2,500万円 | 562億1,500万円 | +14.4% |
| 営業利益 | 93億5,400万円 | 71億1,000万円 | +31.6% |
| 経常利益 | 91億3,200万円 | 72億4,700万円 | +26.0% |
| 純利益 | 60億9,500万円 | 54億8,300万円 | +11.2% |
営業利益から下の行へ進むほど、伸び率が小さくなっています。同じ日に、業績予想の修正と増配、自己株式の取得の決定も発表されています。
増益分の4割近くは、住環境・生活資材事業から
半導体の容器の会社なので、増益は精密成形品から来たのだろうと考えて、短信の11ページ目のセグメント表を開きました。
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期の営業利益 |
|---|---|---|---|---|
| 精密成形品 | 340億2,800万円 | +16.6% | 67億2,700万円 | 55億1,600万円 |
| 電子デバイス | 131億8,600万円 | +4.0% | 6億7,600万円 | 6億4,600万円 |
| 住環境・生活資材 | 120億7,700万円 | +11.1% | 16億3,200万円 | 7億8,100万円 |
| その他 | 50億3,200万円 | +44.7% | 3億1,700万円 | 1億6,600万円 |
精密成形品の営業利益は12億1,100万円増えています。全体の増加額22億4,400万円の半分強です。ここは予想どおりでした。
引っかかったのは住環境・生活資材のほうです。営業利益が7億8,100万円から16億3,200万円へ、倍以上になっています。増えた8億5,100万円は、全体の増加額22億4,400万円の4割近くにあたります。
4ページ目の説明文には、ラッピングフィルムの販売が引き続き拡大したと書かれています。半導体製造装置やFA機器の電線被覆に使う機能性コンパウンドも、需要が高い水準だったそうです。付加価値の高い独自製品の出荷が増えた、ともあります。
売上は1割増えただけで、利益は倍になりました。売れた量より、売れたものの中身が変わったのだと私は読みました。……ただ、ここにも半導体製造装置の名前が出てくる。半導体から離れたところで稼いだ、とまでは言い切れません。
電子デバイスは、売上も営業利益も前年とほぼ同じでした。
純利益の伸びを細らせたのは、税金でした
営業利益の3割増が、純利益では1割増まで縮んでいます。その理由を、8ページ目の損益計算書で下へ追いました。まず為替差損が1億1,500万円から4億6,400万円に増えていて、経常利益の伸びが営業利益より小さくなっています。ただ、差が大きいのはさらに下の行です。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 税金等調整前中間純利益 | 72億5,600万円 | 90億9,000万円 |
| 法人税等合計 | 17億7,300万円 | 29億9,500万円 |
| 中間純利益 | 54億8,300万円 | 60億9,500万円 |
税金を引く前の利益は18億3,400万円増えました。一方で、税金は12億2,200万円増えています。増えた利益の3分の2ほどが、税金に回ったことになります。……税金のほうが速い。
税引前の利益に対する税金の割合は、約24%から約33%に上がりました。これは私の割り算です。法人税等調整額の動きは小さいので、この半年の税金そのものが増えています。割合が上がった理由は、決算短信には書かれていません。
減価償却費は4億6,200万円減っていました
10ページ目のキャッシュ・フロー計算書も見ました。営業キャッシュ・フローは77億4,800万円から86億6,400万円に増えています。ただ、増えた中身を追うと、前年とは事情が違います。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 31億1,200万円 | 26億5,000万円 |
| 売上債権の増減額 | △8億2,400万円 | △37億1,400万円 |
| 仕入債務の増減額 | △14億3,200万円 | 12億7,000万円 |
| 小計 | 102億7,500万円 | 100億5,000万円 |
| 法人税等の支払額 | △26億7,200万円 | △15億6,500万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 77億4,800万円 | 86億6,400万円 |
小計が前年より少し減ったのは、売掛金が増えたぶんの現金がまだ入っていないからです。売上が増えれば売掛金も増えるので、ここは珍しい動きではありません。営業キャッシュ・フローが増えたのは、法人税の支払いが前年より11億円ほど少なかったからです。
貸借対照表を見ると、未払法人税等が16億8,000万円から29億9,000万円に増えています。損益計算書で計上した税金のうち、まだ払っていない分がこれだけ残っています。その支払いは下期に来ます。
減価償却費も4億6,200万円減っていて、その分だけ営業利益が押し上げられています。営業利益の増加額22億4,400万円の2割ほどにあたる額です。注記では会計上の見積りの変更が「無」なので、償却の年数を変えたわけではありません。
設備投資の支出は23億4,300万円から16億1,200万円に減りました。一方で、建設仮勘定は11億2,300万円増えています。償却を終えた設備が多かった、と私は考えていますが、短信には理由が書かれていません。
会社はAIサーバーと電動車を挙げています
4ページ目で、会社は生成AIの普及を挙げています。AIサーバー向けの設備投資が広がり、メモリーを中心に半導体の需要が高い水準だった、という説明です。車については、電動車の販売が増え、EVバッテリーの延焼を防ぐクッションの需要が大きく伸びたと書いています。セグメント表の動きと合っているので、ここはそのまま受け取ります。
一点だけ、留保を付けます。説明文には「今期において競争力の更なる向上を目的にM&Aを実行しました」とあります。どの会社をいくらで取得したのかは、決算短信には書かれていません。注記の連結範囲の重要な変更は「無」で、キャッシュ・フロー計算書にも子会社株式の取得の行はありません。売上が4割以上増えた「その他」の区分と関係があるのかどうかも、私には読み取れませんでした。
下期の予想は、上期より小さい
会社は通期予想を修正しました。売上高は1,270億円、営業利益は182億円です。修正前の数字は短信には載っていません。同じ日に出た別のお知らせを開く必要があります。
| 上期 実績 | 下期 残りに必要な額 | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 643億2,500万円 | 約626億7,500万円 | 約50.6% |
| 営業利益 | 93億5,400万円 | 約88億4,600万円 | 約51.4% |
| 純利益 | 60億9,500万円 | 約57億500万円 | 約51.7% |
約の付いた数字は、通期予想から上期の実績を引いた額と、上期を通期で割った率です。どちらも私が計算しました。
進捗率は半分を少し超えたところです。7月に出た第1四半期の短信では、営業利益は41億4,800万円でした。93億5,400万円から引くと、7月から9月の3か月は52億600万円です。上期の中で、後半のほうが稼いでいます。
この3か月と同じ額を2回続ければ、下期は104億1,200万円になります。会社が見込む下期の88億4,600万円は、それより15億円以上少ない額です。前年の下期と比べれば増収増益の予想ですが、上期よりは小さく見込んでいます。
なぜそう見込んだのかは、決算短信には書かれていません。2ページ目には、11月6日にアナリスト向けの説明会を開き、資料をその日に掲載する予定だと書かれています。
私は本業の増益だと考えています
私は、この増益は本業から出たものだという見方をしています。理由は、利益の増加が営業外や特別利益ではなく、粗利が172億8,300万円から203億900万円に増えたところから出ているからです。しかも、増益は精密成形品と住環境・生活資材の2つの事業に分かれていました。
心配性なので、下振れの材料から先に挙げます。税金の割合が上がった理由、下期に来る税金の支払い、減価償却費の減少が今期だけのものかどうかです。下期を上期より小さく見積もったのは、会社が何か悪い材料を見込んでいるからかもしれません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
実行したというM&Aの相手と金額、そして税金の割合が上がった理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント