はじめに
無印良品の会社です。衣服、文房具、収納用品、食品、家具まで、色や飾りを抑えた品物を自社で企画し、自社の店で売っています。
買いに来るのは、それぞれの街で暮らしている普通の人です。週末に、切れかけた日用品を買い足しに寄る。そういう使われ方をする店です。店の数は、いまでは国内より海外のほうが多くなっています。中国大陸、台湾、東南アジア、欧米にも同じ棚が並んでいます。
私がここで買うのは、だいたい靴下と緑茶です。最近はそこに、娘のノートが加わりました。
9月18日に、7月10日に出た第3四半期の決算短信を読んで前の記事を書きました。四半期の短信にはキャッシュ・フロー計算書が無く、現金は貸借対照表で追いました。残り3か月の利益の置き方が控えめに見えたこと、在庫は膨らんでいないと書いたこと。この二つを、通期の数字で確かめます。
4段とも、下の段ほど大きく伸びました
10月14日に出た通期決算です。2025年9月から2026年8月までの1年分になります。
| 今回 | 前期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 9,235億9,200万円 | 7,846億2,900万円 | +17.7% |
| 営業利益 | 1,034億3,600万円 | 738億4,000万円 | +40.1% |
| 経常利益 | 1,046億7,000万円 | 723億100万円 | +44.8% |
| 純利益 | 764億2,200万円 | 508億4,600万円 | +50.3% |
営業利益が1,000億円を超えたのは初めてだと、会社自身が書いています。下の段ほど伸びが大きいので、営業より下に何かが乗っています。それは後で見ます。
控えめに見えた夏の3か月は、やはり控えめでした
前の記事では、7月に上方修正された通期予想から9か月の実績を引き、残り3か月の営業利益が少なすぎるのではないかと書きました。答えが出ています。
| 6月から8月の営業利益 | 金額 |
|---|---|
| 前期の実績 | 約144億3,400万円 |
| 今期、7月時点の会社予想 | 約171億7,800万円 |
| 今期の実績 | 約226億1,400万円 |
約の付いた数字は、通期の営業利益から9か月の営業利益を引いて私が出したものです。今期の実績なら、1,034億3,600万円から808億2,200万円を引いています。
前期の同じ3か月より5割以上多く稼いでいます。7月時点の会社予想からも、50億円あまり上に出ました。控えめだという見立ては合っていましたが、当てたと言うほどのことではありません。上方修正の直後でも、会社は夏を慎重に置く癖がある。そう覚えておくだけです。
在庫は、最後の3か月で積み上がっていました
こちらは外しました。
前の記事で私は「在庫が膨らんでいる気配は読み取れませんでした」と書いています。5月末の貸借対照表を見た限りでは、そうでした。ところが8月末の貸借対照表では、商品の欄が大きく動いています。
| 時点 | 商品 |
|---|---|
| 2025年8月末 | 1,697億6,600万円 |
| 2026年5月末 | 1,770億1,200万円 |
| 2026年8月末 | 2,053億3,500万円 |
8月末の2,053億3,500万円から、5月末の1,770億1,200万円を引きます。この3か月で増えた分は283億2,300万円です。前期末から1年で増えた分は355億6,900万円なので、その8割ほどがこの3か月に集まっています。……3か月早すぎた。
1年で見ると、在庫は2割増えました。営業収益の伸びを少し上回る程度で、それだけなら珍しくありません。引っかかったのは、増え方が夏に偏っていることです。
キャッシュ・フロー計算書では、棚卸資産の増加は267億9,400万円です。貸借対照表の増加より88億円ほど小さくなっています。この差の内訳は、決算短信には書かれていません。
純資産の部では、為替換算調整勘定が前期末から108億円あまり増えています。海外の在庫を円に直したときに、円安で額が大きく見えた分が含まれている、と私は考えました。
どこで増えたのかは、セグメントごとの資産の表に手がかりがあります。
| 地域 | 前期末 | 今期末 |
|---|---|---|
| 国内 | 1,456億1,400万円 | 1,513億4,500万円 |
| 東アジア | 1,447億3,000万円 | 1,865億7,300万円 |
| 東南アジア・オセアニア | 487億7,100万円 | 591億3,100万円 |
| 欧米 | 376億2,800万円 | 550億6,800万円 |
セグメント資産には店の内装や借りている店舗の権利も入るので、在庫だけの数字ではありません。ただ、国内はほとんど増えていません。増えた資産の大半は海外にあります。
現金は増えましたが、今期分の税金はまだ払い終えていません
前の記事では、四半期のキャッシュ・フロー計算書が作られておらず、肩を落としました。通期の短信には、ちゃんと載っています。
| 前期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 営業活動 | 733億5,500万円 | 993億9,600万円 |
| 投資活動 | △409億3,100万円 | △301億2,400万円 |
| 財務活動 | △221億2,000万円 | △437億7,100万円 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 1,353億5,900万円 | 1,691億8,800万円 |
本業で入った現金で、出店の支出も配当もリースの返済も借入金の返済もまかなっています。借りたお金は、ほぼ返し終えました。ここは前の記事と同じく、強いと受け取っています。
ひとつだけ気になる点があります。営業活動の993億9,600万円には、払っていない税金の分が混じっています。
| 前期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税(費用) | 149億7,700万円 | 309億8,500万円 |
| 法人税等の支払額(現金) | 211億6,600万円 | 169億4,800万円 |
| 未払法人税等(期末) | 34億2,700万円 | 179億200万円 |
税金の費用は倍になったのに、実際に払った現金は前期より減っています。309億8,500万円から169億4,800万円を引きます。残りは140億3,700万円です。おおまかには、費用には入ったのに現金ではまだ出ていない分で、そうなるのは日本の法人税は儲けた年の翌年に払う部分が大きいからです。前の記事で「税務署へ行く」と書いた分は、8月末の時点でまだ行っていません。来期の営業キャッシュ・フローには、この支払いが控えています。
会社はどう説明しているか
営業利益の増加について、会社は短信の中で、海外事業の伸びと円安、それに生産の内製化による原価低減と値下げの抑制を挙げています。前の記事で原価率の改善を確かめた筋と同じです。ここはそのまま受け取ります。
純利益については、会社自身が上乗せの中身を書いています。
| 科目 | 今期 |
|---|---|
| 為替差益 | 32億1,400万円 |
| 投資有価証券売却益 | 23億6,700万円 |
| 受取補償金 | 17億1,500万円 |
| 法人税等調整額(税金を減らした分) | 61億2,500万円 |
いちばん大きいのは最後の行です。海外の子会社で、将来の利益を見込んで繰延税金資産を積んだと説明しています。そのぶん今期の税金が軽くなりました。来期は純利益が減る見通しで、その理由は「一過性利益の反動」とされています。説明と数字は合っています。
欧米では、旗艦店の準備が数字に表れてきました。有形・無形の固定資産の増加額は、前期の20億4,200万円から109億600万円へ増えました。5倍を超えています。2027年8月期に欧州で旗艦店を出す予定だと短信にあり、その経費が先に出たとも書かれています。
来期の予想は、利益率を据え置く形です
今期は、7月に修正した予想(営業利益980億円、純利益670億円)をどちらも上回って着地しました。来期の予想は次のとおりです。
| 今期の実績 | 来期の会社予想 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 9,235億9,200万円 | 1兆140億円 | +9.8% |
| 営業利益 | 1,034億3,600万円 | 1,140億円 | +10.2% |
| 経常利益 | 1,046億7,000万円 | 1,110億円 | +6.0% |
| 純利益 | 764億2,200万円 | 730億円 | △4.5% |
営業利益を営業収益で割ると、来期も今期とほぼ同じ利益率です。これは私の割り算です。円安や原材料の値上がり、欧米の先行投資を、内製化と海外比率の上昇で打ち消す置き方だと説明されています。
経常利益を営業利益より低く見込んでいるので、為替差益は見込んでいないことになります。配当は来期も38円で据え置きです。純利益が減っても、配当は減らさないということです。
私はどう読んだか
私はこの決算を良いほうに読んでいます。今期の増益は、上乗せの分を除いても本業の稼ぎが中心です。理由は、一度きりの利益が乗る前の営業利益で4割伸びていて、それに見合うだけの現金が本業から入っているからです。
心配性なので、外したところから目を離さないつもりです。在庫が夏の3か月に偏って増えたこと、そして来期は今期分の税金を払う年であること。欧米の先行投資も、来期の数字で確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
今回わからなかったこと:夏の3か月で在庫が増えた理由と、それがどの地域の倉庫に積まれているのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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