TSIホールディングスは、服を作って売る会社です。「アヴィレックス」や「ショット」のようなメンズのカジュアル、「ナチュラルビューティーベーシック」や「ジルバイジルスチュアート」のようなウィメンズ、「ニューバランスゴルフ」のようなゴルフウェア。駅ビルや路面の店で、普段着や週末の一着を買う人が相手です。
前の期に、セレクトショップ「フリークスストア」を持つ会社と、傘を企画して売る会社を子会社にしました。自社の通販サイトも持っています。
決算期が2月なので、第1四半期は3月から5月、春物の季節です。その決算短信が2026年7月14日に出ました。私が読んだのはこの短信だけです。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 462億7,900万円 | 356億500万円 | +30.0% |
| 営業利益 | 25億1,200万円 | 15億1,400万円 | +65.8% |
| 経常利益 | 33億1,600万円 | 19億1,600万円 | +73.1% |
| 純利益 | 21億200万円 | 19億6,600万円 | +6.9% |
上の3段と下の1段で、別の話が起きています。
3割増の売上は、買った2社の分が大きい
4ページ目で会社は、前の期に連結した2社が期初から入った影響が大きい、と自分で書いています。既存の事業ではメンズが引き続き好調で、自社ECサイトは前年同期比で2割を超える増収です。
売上総利益率は前年同期から1.2ポイント下がりました。新しく入った2社の粗利率がもともと低い、という説明です。一方で販管費率は2.4ポイント改善しました。営業利益率は4.3%から5.4%に上がっています。
ここで一つ引っかかったのが、12ページ目にある、のれんの償却額です。1億1,400万円から5億7,400万円へ増えています。買った会社の分です。この償却は販管費に入りますから、それを抱えたうえで販管費率が2.4ポイント下がったことになります。既存事業の費用の削り方は、数字の上では相当に効いています。
経常利益を押し上げた配当と、押し下げた利息
8ページ目の損益計算書で、営業外に目が行きました。
| 今回 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| 受取配当金 | 5億5,800万円 | 6,900万円 |
| 持分法による投資利益 | 2億1,300万円 | 2億7,200万円 |
| 為替差益 | 1億1,900万円 | -(為替差損1億400万円) |
| 営業外収益合計 | 10億5,300万円 | 5億3,900万円 |
| 支払利息 | 1億9,900万円 | 400万円 |
| 営業外費用合計 | 2億4,900万円 | 1億3,700万円 |
受取配当金が前年同期の8倍です。どこからの配当がこれだけ増えたのかは、短信には書かれていません。経常利益の伸びが営業利益の伸びより大きいのは、この配当と、為替が差損から差益に振れた分が乗っているからです。
反対側に、支払利息が急に増えています。子会社を買うために借りたお金の利息が、3か月でこれだけ出るようになりました。長期借入金は1年内返済分を合わせて355億円ほどあります。これから毎四半期つき合う費用です。
税金が8,100万円から14億3,900万円へ
純利益が1割も伸びていない理由は、税金です。税引前の利益は20億2,500万円から35億4,100万円へ増えました。ところが法人税等の合計は8,100万円から14億3,900万円へ増えています。17倍を超える伸びです。税引前の利益に対する割合を私が計算すると、前年は4%ほど、今回は4割です。
前年がなぜそんなに軽かったのかは、短信には書かれていません。今回の4割が普通で、前年が特別だった、と私は受け取りました。だとすると、営業利益がどれだけ伸びても、前年と比べる限り、純利益の伸びは小さく見えます。その状態がしばらく続きます。
借りて、自分の株を買った3か月
第1四半期なので、キャッシュ・フロー計算書は作られていません。その代わりに貸借対照表を前期末と並べました。
| 前期末 | 今回 | |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 284億7,800万円 | 264億3,800万円 |
| 短期借入金 | 76億3,700万円 | 126億8,200万円 |
| 投資有価証券 | 286億2,800万円 | 244億8,800万円 |
| 自己株式 | △52億3,300万円 | △81億9,500万円 |
| 自己資本比率 | 57.0% | 54.9% |
5ページ目に、自己株式の取得29億6,200万円とあります。同じ3か月で短期借入金が50億4,500万円増え、現金は20億4,000万円減りました。……借りて、自分の株を買っている。そう読める並びです。ただ、現金の減り方のどこまでが自社株買いで、どこまでが商売の分なのかは、計算書が無いので切り分けられません。
投資有価証券は41億3,900万円減っていますが、大半は売ったのではなく、値が下がった分です。評価差額金が33億4,500万円減り、包括利益は12億4,500万円のマイナスになりました。純利益21億円の四半期に、包括利益は赤字です。ここまでは貸借対照表と包括利益計算書の数字です。
会社はどう説明しているか
4ページ目で会社は、春の気温が安定して高めだったこと、賃上げが続いたことを追い風に挙げています。反対に、円安と物価高で生活防衛の意識が高まったこと、中東の紛争への懸念も並べています。
粗利率の悪化については、2社の事業構造がもともと低粗利だから、と説明しています。既存事業は計画どおりに改善している、とも書いています。既存事業だけの数字が短信に載っていないので、「計画どおり」の中身までは確かめられませんでした。通期の予想は4月10日に出したものから変えていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
営業利益の進み具合は3分の1、経常利益は半分近くまで来ています。それだけ見ると順調ですが、表紙には第2四半期累計の予想も載っていて、そちらのほうが引っかかりました。
| 第1四半期 実績 | 6月から8月 | 上期 会社予想 | 通期 会社予想 | |
|---|---|---|---|---|
| 営業利益 | 25億1,200万円 | 約△13億1,200万円 | 12億円 | 75億円 |
| 経常利益 | 33億1,600万円 | 約△23億1,600万円 | 10億円 | 72億円 |
| 純利益 | 21億200万円 | 約△14億200万円 | 7億円 | 77億円 |
約の付いた列は、上期の会社予想から第1四半期の実績を私が引いたものです。6月から8月の3か月は13億1,200万円の営業赤字という置き方になります。夏物のセールの季節なので、赤字そのものは珍しくありません。
前年と並べると、深さが分かります。表紙には上期の営業利益予想の増減率が+87.4%と載っています。12億円を1.874倍で割り戻します。すると前年の上期累計はおよそ6億4,000万円です。前年の第1四半期は15億1,400万円でしたから、上期累計からこれを引くと、前年の6月から8月はおよそ8億7,400万円の赤字だったことになります。今年はそれより4億円以上深い赤字を、会社側が先に見込んでいるわけです。
もっと気になるのは経常利益です。6月から8月の経常赤字23億1,600万円は、営業赤字より10億円ほど深い。営業外で10億円の費用か損失が出る、という前提が入っています。第1四半期の営業外は差し引きで8億円のプラスでした。それが3か月で10億円のマイナスに変わる理由は、短信には書かれていません。
私はどう読んだか
見出しの営業利益+65.8%より、会社が置いた夏の赤字のほうを重く受け取っています。理由は、経常の赤字が営業の赤字より10億円深く、その10億円が何なのかを短信のどこにも見つけられなかったからです。
ただ、のれんの償却を抱えて営業利益率が上がったことは、損益計算書の数字として残ります。買った会社が重荷になるかどうかは、この10億円の正体しだいだと考えています。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260714/140120260708589774.pdf
6月から8月の3か月に会社が見込んでいる、営業外の10億円ほどの費用の中身は読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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