はじめに
象印マホービンは、ご飯を炊く機械と、水筒を作っている会社です。台所に置く炊飯ジャー、お湯を入れておくポット、オーブンレンジやホットプレート。それに、かばんに入れて持ち歩くステンレスマグやクールボトル。加湿器や扇風機も手がけています。
買うのは、家電量販店で炊飯器を見比べている家族や、子どもの水筒を買い替える親です。どれも壊れるまで使うものなので、同じ人が次に買うのは何年も先になります。だから、新しい機能を付けて値段を上げられるかどうかが、そのまま売上の増減に出ます。
海外でも売っています。台湾、中国、韓国、それに北米。海外の比重は小さくありません。日本の炊飯器が海外で売れている、という話の中心にいる会社の一つです。
売上も営業利益も増えて、純利益だけが減りました
10月2日に出た第3四半期決算です。決算期が11月なので、2025年11月21日から2026年8月20日までの9か月分にあたります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 699億8,700万円 | 676億8,700万円 | +3.4% |
| 営業利益 | 58億5,600万円 | 55億6,000万円 | +5.3% |
| 経常利益 | 63億4,800万円 | 61億700万円 | +3.9% |
| 純利益 | 40億1,500万円 | 41億3,700万円 | △2.9% |
上の3行は増えて、いちばん下だけが減っています。この形は、本業より下のどこかで何かが起きた合図です。
営業利益が増えた2億9,600万円のうち、2億700万円は米国の関税の還付です
先に本業の側から見ます。営業利益は55億6,000万円から58億5,600万円へ。引き算すると2億9,600万円の増加です。
この増加分の出どころが、短信の注記に書いてありました。米国の子会社が、国際緊急経済権限法にもとづく関税を課されていました。それが連邦最高裁で無効と判断され、2026年6月末までに800万米ドル(約12億8,800万円)の還付を申請しています。そのうち一部の還付が済んでいて、2億700万円を売上原価の減額として処理しています。800万円は在庫の金額からも引いています。
2億9,600万円の増加のうち2億700万円。7割が、商品を売って稼いだ分ではありません。原価から引かれた分です。
しかも、話はここで終わっていません。同じ短信の重要な後発事象に、第3四半期を締めたあとで600万米ドル(約10億3,000万円)を受け取った、と書いてあります。申請額の大半です。これは残り3か月の数字に入ってきます。
……いや、そうなると話の向きが変わる。
純利益が減った理由は、持分法と税金でした
営業外に目を移します。営業外収益の合計は9億7,200万円から7億2,400万円へ減っています。前年にあった持分法による投資利益2億8,800万円が消え、今期は持分法による投資損失1億300万円が営業外費用に並びました。出資先の損益が、利益から損失へ振れたわけです。
それでも経常利益が増えたのは、為替差損が2億9,000万円から2,700万円へ縮んだからです。差損が消えた分が、持分法の悪化をちょうど埋めています。
純利益が前年を下回った理由は、その下にありました。税金等調整前の利益は61億400万円から63億3,800万円へ増えています。それなのに、法人税等の合計は18億1,300万円から21億5,500万円へ上がりました。増えた額は3億4,200万円です。法人税等を税金等調整前の利益で割ると、税の負担は3割弱から3割半ばへ上がります。これは私の割り算です。
1株あたりの利益は63.47円から63.23円で、ほとんど動いていません。前の期に自己株式を買っていて、利益を分け合う株数が減っているからです。
年82円だった配当が、46円の予想になっています
配当の欄で手が止まりました。前の期は中間30円と期末52円でした。合わせて年間82円です。今期の予想は中間23円と期末23円です。合わせると年間46円になります。半分近くまで下がる予想です。
予想1株利益75.58円に対して46円ですから、利益の6割ほどを配る計算です。配る割合そのものは低くありません。それでも額が下がるのは、前の期の期末52円が利益の水準に比べて大きかった、ということになります。その52円が何だったのかは、決算短信には書かれていません。
会社は「一時的な利益」と、自分で書いています
会社の説明はこうです。足元の業績は想定を上回って推移しており、米国の関税還付による一時的な利益の増加もあるものの、中東情勢の影響による原材料価格の高騰などを慎重に勘案した結果、通期の業績予想を据え置くことにした。為替の前提は1ドル155円から変えていません。
関税還付を「一時的」と自分の言葉で書いている点は、素直に受け取ります。隠していません。
引っかかるのは後ろ半分です。原材料の値上がりを慎重に見込んだ、とありますが、どの材料がどれだけ上がったのかは短信には書かれていません。中東情勢という言葉だけが置かれています。本業の中身を見ると、国内では最上位の圧力IH炊飯ジャーが好調で、円安による輸入コストの上昇に対して価格転嫁も進めた、とも書いてあります。上げた値段で売れているなら、材料の値上がりは一方的な悪材料ではないはずです。
残り3か月を、会社は営業利益7億4,400万円と置いています
| 項目 | 9か月の実績 | 通期予想 | 進み具合(約) | 残り3か月に必要な額(約) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 699億8,700万円 | 925億円 | 75.7% | 225億1,300万円 |
| 営業利益 | 58億5,600万円 | 66億円 | 88.7% | 7億4,400万円 |
| 経常利益 | 63億4,800万円 | 71億円 | 89.4% | 7億5,200万円 |
| 純利益 | 40億1,500万円 | 48億円 | 83.6% | 7億8,500万円 |
進み具合は9か月の実績を通期予想で割り、残りに必要な額は通期予想から9か月の実績を引いて出しました。どちらも私の計算です。
9か月は1年の4分の3です。売上は75.7%で、ちょうど目安どおりに進んでいます。ところが営業利益は9割近く、経常利益はもう9割を超えています。
残りに必要な営業利益7億4,400万円を、前の期の同じ3か月と並べると、6割ほど少ない額になります。経常利益は3分の2近く減ります。これも私が前の期と並べた数字です。売上は目安どおりなのに、利益だけがこの落ち方をするというのは、会社が最後の3か月に大きな費用を見込んでいるということです。
そして、その3か月の頭には、約10億3,000万円の関税還付が入っています。
私はどう読んだか
予想が古いまま残っているのか、それとも本当に悪い材料が待っているのか。私は前者の見方をしています。
理由はこうです。売上の進み方が目安どおりで、商売そのものが崩れていないこと。関税還付の大半を、第3四半期を締めたあとに受け取っていること。そして、営業利益の9割を9か月で終えた会社が、残りの3か月に6割減を見込んでいることの不自然さです。原材料の値上がりに慎重に構えるのは分かりますが、6割はそれだけで説明がつく幅ではありません。
ただし、関税の還付が本業の稼ぎではないことは変わりません。増加分2億9,600万円から還付の2億700万円を抜きます。残りは1億円に届きません。増収3.4%の会社が、原価の減額なしでどれだけ利益を伸ばせたのか。その答えは、来年の同じ四半期に出てきます。関税の還付は、来年にはもう無いからです。
それから、配当が82円から46円になる話が頭に残っています。利益が2割近く減る予想の年に、配当は半分近くまで下げる。配る割合は6割あるのに、です。どちらの数字も会社が出したもので、間に矛盾はありません。それでも、株主に渡る額が半分になることを、私は重く見ています。
出典:決算短信(会社発表)
前の期の期末配当52円がどういう性質のものだったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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