日本冶金工業(5480)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益は在庫評価益の分と読みました

日本冶金工業(5480)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益は在庫評価益の分と読みました 決算を読む

ニッケルから板まで、ステンレスを一社で作る会社

日本冶金工業は、ステンレスだけを作っている会社です。原料のニッケルを精錬する工程から、薄い板に延ばす工程までを自社で持っています。力を入れているのは、錆びにくさや熱への強さを高めた「高機能材」という品種です。

短信の説明文によると、いま需要が伸びている使い道は半導体まわりです。電子機器の中に入っているプリント配線基板を製造するときに、プレス用の板として使われています。ほかに石油・ガス設備向けと、欧米向けの耐久消費財向けがあります。使うのは消費者ではなく、ものを作る工場の側です。

売上は1割に届かず、利益は4割以上増えた

8月5日に出た、4月から6月までの第1四半期決算です。

今回前年同期増減率
売上高422億7,500万円391億9,900万円+7.8%
営業利益47億100万円32億5,400万円+44.5%
経常利益44億200万円29億5,100万円+49.2%
純利益27億6,800万円19億8,800万円+39.2%

売上は1割に届かない伸びでした。一方で、利益は4割から5割増えています。この差がどこから来たのかが、今回の話です。

増えた利益より、在庫の評価益の差のほうが大きい

短信の最後、10ページ目に、会社が億円単位でまとめた補足の表があります。営業利益が、在庫評価損益と、それを除いた分に分けて載っています。

前年同期今回差
営業利益33億円47億円14億円
うち在庫評価損益△13億円16億円29億円
在庫評価を除く営業利益45億円31億円△14億円

在庫評価損益は、原料の値段が動いたときに、手元の在庫の値打ちが変わって出る損益です。前年の同じ時期は13億円の損でした。今回は16億円の益です。差は29億円あり、営業利益の増えた14億円を上回っています。

引っかかったのはここです。在庫評価を除いた営業利益は、45億円から31億円へ減っています。……表の増益は、まるごとニッケルの値段が連れてきた分だ。

平均のニッケル価格は、前年同期の1ポンド6.88ドルから8.24ドルになりました。高い値段で原料を仕入れても、すでに持っている安い在庫から先に製品になっていきます。その差が利益に乗った形です。

前年と比べると値上げが追いつかず、前の四半期と比べると追い越している

会社は、在庫評価を除いた営業利益の増減も、要因ごとに分けて示しています。前年同期と比べた数字と、1月から3月の前四半期と比べた数字の2本です。

要因前年同期比前四半期比
高機能材の販売量3億円3億円
一般材の販売量0億円0億円
販売価格13億円20億円
原料他コスト△24億円△14億円
関係会社・他△6億円△2億円
合計△14億円7億円

前年と比べると、値上げで13億円を取り戻しましたが、原料などのコストが24億円増えています。値上げが、原料価格の上昇に追いついていません。

ところが前の四半期と比べると、順番が逆になります。値上げの効果が20億円で、コスト増の14億円を超えました。在庫評価を除いた営業利益も、1月から3月の24億円から31億円へ戻っています。

1キロあたりの単価を見ると、この動きがはっきりします。高機能材は、前四半期の1,175円から1,281円へ上がっています。一般材も、511円から540円へ上がり幅を広げています。販売量はどちらもほぼ横ばいです。量ではなく値段で取り戻しに行っている四半期でした。

仕掛品の積み増しを、買掛金と借入でまかなっている

3月末と6月末の貸借対照表を並べると、在庫の重さが見えます。

3月末6月末
仕掛品313億3,600万円359億800万円
原材料及び貯蔵品175億8,700万円189億6,100万円
支払手形及び買掛金73億7,500万円132億4,500万円
短期借入金377億2,300万円403億9,100万円
現金及び預金112億7,500万円107億100万円

仕掛品は、35,908から31,336を引いて、3か月で45億7,200万円増えました。同じ期間に、買掛金は58億7,000万円増えています。工程に入った原料の多くを、まだ代金を払わずに持っている状態です。

販売量はほぼ変わっていません。ですから、在庫が増えたのは量よりも、単価の高い原料が工程に流れ込んだためだと私は受け取りました。この買掛金は、これから数か月のうちに現金で払う分です。短期借入金も26億6,800万円増えています。

ここで現金の出入りを確かめたかったのですが、短信の注記に「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。分かるのは、減価償却費が16億4,700万円だったことだけです。

もう一つ、特別損失に「災害による損失」3億5,200万円が載っています。前年同期にはありません。何の災害なのかは、決算短信には書かれていません。

会社は在庫評価益を自分の言葉で挙げている

短信の説明文は、需要から書き始めています。半導体関連の投資拡大でプリント配線基板用の需要が増え、石油・ガス向けも安定していた。その一方で、欧米向けの耐久消費財は需要が減った、という説明です。

利益については、会社自身が「原料価格の上昇に伴う在庫評価益の影響等もあり」と書いています。補足の表も隠さず出しています。この点は、そのまま受け取ります。

留保をつけるなら、言い方の強さです。「影響等もあり」と書かれると、増益の一因のように読めます。補足の表では、評価益の差が増益の全額を上回っていました。

上期だけ予想を引き上げ、下期は動かしていない

会社はこの決算に合わせて、上期の予想を修正しました。短信によると、通期は下期を前回のまま据え置き、上期の修正分だけを足しています。

営業利益金額
第1四半期(実績)47億100万円
第2四半期(上期予想90億円から引いた分)約43億円
下期6か月(通期予想160億円から上期予想を引いた分)約70億円
通期予想160億円

約の付いた数字は、会社の上期予想と通期予想から私が引いたものです。

第1四半期で通期の3割近くまで来ています。ただ、下期は6か月で70億円です。1四半期あたりにならすと35億円で、今回の47億円よりかなり低い置き方です。

予想の前提は、1ドル155円、ニッケルは1ポンド7.5ドルです。第1四半期の平均8.24ドルより低い値で置いています。ニッケルがその水準まで下を向けば、在庫評価は益から損に回りかねません。修正の詳しい理由は「業績予想の修正に関するお知らせ」にあるとされていますが、私はそちらをまだ読んでいません。

私はどう読んだか

今回の増益はニッケル価格の上昇が在庫に乗った分で、本業の稼ぎは前年の水準にまだ戻っていない、と私は読みました。理由は、在庫評価を除いた営業利益が前年より14億円少なく、その原因が原料コストに値上げが追いついていないことだと、会社自身の表に出ているからです。

それでも、前の四半期からは戻り始めています。値上げの効果がコスト増を超えたのは、この四半期が初めてです。高機能材の単価が3か月で100円以上動いたのは、売り値を原料に合わせる交渉が進んでいるしるしだと考えています。

心配性なので、下期70億円の置き方のほうが気になっています。ニッケルを低めに置きながら下期を据え置いたのは、評価益が消えても値上げで埋められると見込んだからなのか。その根拠は、短信からは分かりませんでした。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260804508807.pdf

災害による損失3億5,200万円が、どの災害によるものかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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