病院で処方箋を受け取ったあと、薬をもらいに行く店が調剤薬局です。アインホールディングスは、その調剤薬局を全国で運営していて、店の数は国内でいちばん多い会社です。処方箋の料金は国が決めているので、自分で値段を上げられません。伸ばすには、店を増やすか、1店あたりの処方箋を増やすかです。
もう一つ、コスメの店「アインズ&トルペ」と、インテリア雑貨の「Francfranc」も持っています。こちらは値段を自分で決められますが、規模は薬局に比べると小さい。
今回は2026年9月14日に出た、2027年4月期の第1四半期決算です。この会社を読むのは初めてで、比べられる前年の数字は短信に載っているものだけです。私が引っかかったのは、1ページ目に並んだ4つの利益の増減率でした。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,771億2,000万円 | 1,329億6,900万円 | +33.2% |
| 営業利益 | 46億1,300万円 | 42億5,400万円 | +8.4% |
| 経常利益 | 39億1,900万円 | 42億5,900万円 | △8.0% |
| 純利益 | 19億7,500万円 | 19億3,000万円 | +2.3% |
売上が3割以上伸びたのは、前の期に調剤薬局の大手を買収して、その店がまるごと入ったからです。売上と同じ向きを向いているのは、上の1行だけでした。
上から下へ、伸びが消えていく
1ページ目の業績表には、EBITDAという列もあります。営業利益に減価償却費とのれん償却額を足し戻したもので、105億3,500万円、前年同期から27.8%増えています。
EBITDAから営業利益へ落ちるところで、のれんの償却が効いています。注記によると、のれん償却額は16億5,800万円から31億500万円へ。差し引き14億4,700万円で、EBITDAの増加分22億9,100万円のうち6割ほどが償却の増加で消えています。これは私の引き算です。
営業利益から経常利益へ落ちるところで、今度は営業外費用が効きます。ここが今回いちばん引っかかった場所です。
支払利息が、1億1,100万円から6億7,000万円へ
損益計算書の営業外費用の内訳を、前年と並べます。
| 営業外費用 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 6億7,000万円 | 1億1,100万円 |
| 債権売却損 | 2億6,700万円 | 1億1,900万円 |
| 不動産賃貸費用 | 2億1,300万円 | 1億6,400万円 |
| その他 | 9,600万円 | 1,500万円 |
| 合計 | 12億4,600万円 | 4億1,000万円 |
支払利息が6倍になっています。理由は貸借対照表に出ていて、長期借入金が1,460億4,000万円あります。説明会資料にある前年同期末は254億7,900万円ですから、1年で6倍近くです。買収の代金を借入でまかなった形です。
債権売却損も倍以上です。調剤の売上は国の窓口から2か月ほど遅れて入るので、売掛金を期日前に売って現金にすると、割引分が損として出ます。利払いと合わせて9億3,700万円、3か月で営業利益の2割にあたります。……これは軽くない。
営業利益は3億5,900万円増え、営業外費用は8億3,600万円増えました。経常利益が減った理由は、この2つの差でほぼ説明がつきます。ここまでは損益計算書の数字です。
現場は増益、本社の費用で戻される
| セグメント利益 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| ファーマシー事業 | 51億2,800万円 | 42億3,100万円 |
| リテール事業 | 28億8,600万円 | 29億1,200万円 |
| その他の事業 | 5,700万円 | 1,900万円 |
| 調整額 | △41億5,400万円 | △29億300万円 |
| 経常利益 | 39億1,900万円 | 42億5,900万円 |
薬局事業は2割の増益です。リテールのわずかな減益は、6月の気温が低くてシーズン商品が動かなかったからだと短信にあります。3つを足すと80億7,300万円、前年から9億1,100万円の増加です。
その下の調整額が12億5,100万円悪化しています。中身の大半は全社費用で、30億9,400万円から40億6,500万円へ。管理部門とシステム物流部門の費用だそうです。現場が増やした9億円を、本社側で10億円戻した計算です。この全社費用に支払利息が含まれるかは、短信の注記には書かれていません。
会社はどう説明しているか
売上が3割増えた理由に当たるのは、短信では「M&Aを含め、グループ全体で合計14店舗を出店」という一文だけです。買収した薬局の名前は短信の本文には出てこず、説明会資料の1ページ目に、さくら薬局グループの合流が寄与したとあります。
経常利益が減った理由も、短信の本文にはありません。財政状態の説明に「長期借入金の減少」とあるだけです。既存店は、高額医薬品の処方が増えて処方箋の単価は上昇傾向、枚数は堅調、と説明しています。
短信の最後のページには、8月25日付で買収防衛策を導入したことも載っています。大株主による買集めを受けたものだそうです。株主の話はここでは追いません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,215億円 | 1,771億2,000万円 | 約24.5% |
| 営業利益 | 325億円 | 46億1,300万円 | 約14.2% |
| 経常利益 | 300億円 | 39億1,900万円 | 約13.1% |
| 純利益 | 150億円 | 19億7,500万円 | 約13.2% |
約の付いた数字は、第1四半期の実績を通期予想で割った私の割り算です。
売上は4分の1で目安どおり、利益は3つとも15%に届いていません。会社は6月11日に出した予想を変えていません。
上期の置き方も見ておきます。上期予想の営業利益は126億円です。そこから第1四半期の46億1,300万円を引くと、8月から10月の3か月に79億8,700万円が必要になります。
表紙には上期の増減率が+19.8%とあります。126億円を1.198で割ると、前年の上期はおよそ105億1,700万円です。前年の第1四半期42億5,400万円を引くと、前年の同じ3か月はおよそ62億6,300万円でした。今年の予想はそれより3割近く多い数字です。
さくら薬局は前の期の途中で入ったので、前年の8月から10月には丸々乗っていません。無理な置き方だとまでは言えません。
私はどう読んだか
考え方は2つあります。買収の初年度で利払いと償却が先に出ているだけで、統合が進めば利益は追いつくという見方。もう一つは、売上が3割増えて営業利益が1割弱しか増えない構造のまま、利払いが毎四半期同じだけ残るという見方です。
私は後者だと考えています。理由は、説明会資料にある会社自身の第1四半期計画に対して、営業利益が17.5%下回っているからです。売上は計画を超え、利益は届きませんでした。同じ資料で粗利が計画を7億3,800万円下回っており、こちらは3か月で戻る種類のものかもしれません。
ただ利払いのほうは、借入が減らないかぎり同じだけ出ます。この四半期に減った長期借入金は50億6,600万円、短期を合わせた借入の残高は1,666億2,500万円です。
純利益が2.3%増えているのは、本業の話ではありません。税引前利益は22%減っています。それでも増益になったのは、法人税等が22億6,900万円から12億9,100万円に減ったからです。通期の純利益予想が13.1%の減益になっているのも、税金の戻り方が今期は前期ほどではない、と会社が置いているのだと受け取っています。
出典:決算短信(会社発表)

貸借対照表の預り金が3か月で72億4,000万円増えている中身は、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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