菊水化学工業(7953)第1四半期決算分析――営業利益は2.7倍、なのに通期予想には「まだ入れていない利益」がある

菊水化学工業(7953)第1四半期決算分析――営業利益は2.7倍、なのに通期予想には「まだ入れていない利益」がある 決算を読む

はじめに

菊水化学工業は、建物の外壁や内装に塗る材料の会社です。下地材から仕上げ材まで自社で作って売る、いわゆる建築仕上げ材のメーカーで、そこから塗料にも широ……いや、日本語で書きます。塗料にも手を広げています。マンションやビルの壁を思い浮かべてください。新築のときに塗られるものと、十数年経って改修のときに塗り直されるもの。この会社はその両方に関わっていて、改修改装の工事そのものも手がけています。塗り壁材は施主が直接買うものではなく、施工会社や工事の現場が使うものです。だから景気の話よりも、建物がどれだけ直されるか、原料のナフサがいくらするか、という話が業績に効いてきます。

8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。1ページ目の数字はかなり派手でした。ただ、読み進めると、派手さの中身を仕分けする必要がある決算でもありました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高5,8185,261+10.6%
営業利益26397+170.5%
経常利益311116+166.8%
純利益17561+186.0%

(単位:百万円)

売上が1割伸びて、利益は各段階でおよそ2.7倍前後。営業利益率は前年同期の1.8%から4.5%に上がっています。前年の第1四半期が減収減益だった反動もありますが、それにしても上げ幅が大きい。

純利益の2.9倍には、株を売った分が乗っている

まず仕分けから。8ページの損益計算書を見ると、特別利益に投資有価証券売却益が89,182千円あります。前年同期はゼロでした。一方で特別損失にも投資有価証券売却損が32,118千円。持っていた株を売って、勝ち分と負け分の両方を今期に計上した形です。

経常段階にも追い風があります。前年同期は為替差損12,366千円を営業外費用に計上していましたが、今期は逆に為替差益15,480千円が営業外収益に立っています。振れただけで、経常利益の比較には30百万円近い下駄になります。

つまり、純利益の186%増をそのまま実力と読むのは危ない。ただし、これらが一切効かない営業段階でも利益は97百万円から263百万円に増えています。営業利益の改善は、仕分けした後にも残ります。ここは本物の側に置いていい数字だと思います。

キャッシュ・フロー計算書が、この短信にはない

私は決算短信を読むとき、キャッシュ・フロー計算書まで行くことにしています。今回の短信は10ページ目の注記に「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とありました。第1四半期の短信ではよくあることで、責める話ではありません。

代わりに貸借対照表を見ます。6ページです。現金及び預金は4,515,263千円から4,398,767千円へ減っています。電子記録債権が277百万円、原材料及び貯蔵品が118百万円増えた、と5ページで会社が自分で書いています。売上が1割伸びた期に売上債権と原材料在庫が増えるのは自然な動きですが、現金は出ていく方向です。

そして投資有価証券が2,649,431千円から2,263,982千円へ、385百万円減っています。さきほどの売却益・売却損と話がつながります。持ち株を整理して現金化した期でもあった、ということです。

第2四半期累計の予想340に対して、第1四半期で263

引っかかったのはここです。会社が今回出した第2四半期累計の営業利益予想は340百万円。第1四半期だけで263百万円を計上済みです。差し引くと、第2四半期の3ヶ月間で営業利益は77百万円という置き方になります。この77は私が引き算した数字で、会社が印字したものではありません。

第1四半期に263出せた会社が、次の3ヶ月は77。……これは変だ。第1四半期に一時的な押し上げがあったと会社が見ているのか、単に慎重に置いただけなのか。短信のどこにも、この落差の理由は書かれていません。私の読み違いかもしれませんが、予想の置き方としてはかなり固い部類に見えます。

この通期予想は「未定」からの初公表で、しかも入っていないものがある

5ページに経緯が書いてあります。今回の通期予想は、2026年5月14日の決算短信では未定とされていたものを、今回初めて公表したものです。中東情勢で原材料価格の先行きが読めなかったため、とのこと。

さらにもう一つ。2026年6月26日に公表した「連結子会社における固定資産の譲渡」が純利益に与える影響額は、この予想に「含めておりません」と会社自身が書いています。算定できた時点で速やかに公表する、と。つまり通期の純利益予想490百万円は、この譲渡の分だけ、まだ動く余地を残した数字です。譲渡の中身と金額の規模は、決算短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

4ページの説明文で、会社は今期の取り組みを、ナフサ高騰による製造コスト上昇に対する製品価格への転嫁、生産効率化、固定費抑制、と書いています。原料が高い中で値上げを通した、という説明です。

私はこれをおおむね受け取ります。売上が1割伸びて、営業段階の利益率が1.8%から4.5%へ上がっている。値上げが通らずに数量だけ増えたなら、利益率はここまで動かないはずです。ただし、値上げ分と数量分の内訳は短信には書かれていないので、ここは推測を含みます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目進捗率
売上高25.3%
営業利益37.6%
経常利益40.9%
純利益35.7%

3ヶ月経過時点の目安は4分の1です。売上はちょうど目安どおり、利益は各段階で大きく前に出ています。残り9ヶ月に必要な営業利益は437百万円で、前年の同じ9ヶ月より4割ほど多い水準ですが、第1四半期の利益率が続くなら届かない数字ではありません。

私はどう読んだか

私は、営業利益の改善は価格転嫁が効いた本物のほうに寄せて読んでいます。理由は、売却益も為替も関係ない営業段階で、利益率が1.8%から4.5%まで上がっているからです。読み違いかもしれません。

そのうえで、通期予想のほうは実力の予想というより「未定をようやく埋めた、動く前提の数字」として見ています。第2四半期の置き方の固さと、固定資産譲渡の未反映。この2つがある以上、予想との比較で一喜一憂する決算ではない気がします。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806513308.pdf

売上が1割伸びた中身――値上げで増えた分と、数量で増えた分の区分――は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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