ニデック(6594)2026年3月期 通期決算分析――親会社単体の純資産が気になりました

ニデック(6594)2026年3月期 通期決算分析――親会社単体の純資産が気になりました 決算を読む

はじめに

ニデックはモーターの会社です。データセンターのハードディスクの中で円盤を回す小さなモーターがあります。冷蔵庫やエアコンのコンプレッサーを動かすものも作っています。発電機や蓄電設備に組み込む大きなものまで、幅は広いです。

自動車向けでは、電動パワーステアリングや、電気自動車を走らせる駆動用のモーターも手がけています。産業用ロボットやプレス機のような機械も持っています。

家電や車を買う人が、この会社の名前を目にすることはまずありません。お金を払っているのは、家電メーカーや自動車メーカー、データセンターを建てる会社です。

前の期の決算の途中で、ニデックでは会計の不正が見つかりました。第三者委員会の報告書を受け取ってから出た、最初の通期決算がこの短信です。

決算の中身は、第4四半期に集中した巨額の赤字でした

2026年9月30日に出た、2026年3月期の通期決算です。期末から半年たってからの発表でした。

今回前期(修正後)増減率
売上高2兆7,087億500万円2兆6,063億4,700万円+3.9%
営業利益△5,189億7,800万円1,282億2,200万円—
税引前利益△4,962億1,400万円1,245億7,600万円—
純利益△5,646億2,400万円846億7,200万円—

IFRSの短信には経常利益の欄がありません。そのため、税引前利益を代わりに置きました。

前期の欄は、不正を直したあとの数字です。直す前の前期の営業利益は2,378億3,700万円でした。直したことで、前期だけで1,096億1,500万円が消えています。

赤字の大半は、現金の出ない損でした

営業損失を生んだのは、非金融資産の減損損失6,321億3,500万円です。工場の設備や、買収したときに乗ったのれんの値打ちを、帳簿の上で切り下げた損です。この期に現金が出ていったわけではありません。

実際、営業キャッシュ・フローは2,342億1,800万円の収入でした。前期よりは減りましたが、プラスは保っています。

営業利益金額
第1四半期333億3,900万円
第2四半期539億6,900万円
第3四半期284億2,700万円
第4四半期△6,347億1,300万円

第1四半期から第3四半期までの営業利益は、表の上の3行です。3つを足すと、1,157億3,500万円の黒字です。赤字は第4四半期の1つに集まっています。

手元の現金が増えた分は、短期で借りたお金でした

期末の現金は、2,462億5,400万円から8,522億400万円へ増えています。3倍以上です。一方でキャッシュ・フロー計算書には、短期借入金の純増4,929億400万円が載っています。

会社は、現金を差し引いた有利子負債は減ったと書いています。計算上はそのとおりです。ただ、この時期に短期で5,000億円近くを借りて手元に置いた理由は、決算短信には書かれていません。

調査や審査の行方が見えないうちに、支払いに困らないよう手元を厚くしておいた、と私は受け取りました。

親会社だけの帳簿では、純資産が189億円しか残っていません

私が引っかかったのは、2ページ目の下のほうにある個別業績の欄です。子会社を合算しない、親会社1社だけの数字が載っています。

親会社の純資産は、2,029億8,400万円から189億7,600万円へ減りました。自己資本比率は1.0%です。連結では、まだ7,941億6,400万円の持分が残っています。同じ会社の数字とは思えない差です。

連結の資本金は、親会社の資本金と同じ額が載ります。その額は877億8,400万円です。純資産の189億7,600万円から、この資本金を引きます。資本金以外の部分は、合わせて約688億円のマイナスになります。……いや、これは薄い。

注記には、さらに重い一文がありました。過去の配当と自社株買いが、会社法で出してよい上限を超えていた、という記載です。

期上限を超えていた払い出し
2022年3月期314億1,300万円(自社株買い)
2023年3月期940億1,400万円(配当と自社株買い)
2024年3月期412億4,400万円(同)
2025年3月期537億9,300万円(同)
2026年3月期229億6,000万円(配当)

出どころは、短信の追加情報の注記です。

配当は親会社の帳簿から出します。純資産が資本金を割り込んでいる状態で、次の期の配当は「未定」とされています。方針の問題というより、出せる元が無い状態だと私は考えました。

財務諸表そのものに、会社が断り書きを付けています

短信の冒頭近くには、ふつうの決算短信にはない文章が載っています。

要点は2つです。不正に関わった役職員の一部が、いまも財務報告で責任ある立場にいること。そして、まだ見つかっていない虚偽表示が重要かつ広範に影響する可能性があり、その影響は反映していないこと。

この書類の数字は、会社自身が「まだ全部は確かめきれていない」と断ったうえで出されています。当局の調査や課徴金の影響も、見積もれないとして入っていません。調査費用305億2,200万円を計上済みで、最終的な額はさらに増える見込みだとも書かれています。

会社はどう説明しているか

減損の理由は、注記に1件ずつ書かれています。

対象減損損失会社が挙げた理由
ACIM2,988億円家電用モータの中国での過当競争
Nidec-PSA emotors1,162億8,700万円EVの成長減速
ニデックモビリティ731億2,600万円北米事業の収益性悪化
ニデックインスツルメンツ560億7,200万円アジアでの競争激化
ニデックパワートレインシステムズ281億2,300万円中国での競争力低下
ニデックテクノモータ268億100万円中国での競争激化

理由は、どれも競争や需要の話です。ただ、第三者委員会が挙げた不正の手口の中には「固定資産の減損回避」があります。今期の減損のうち、どこまでが過去に避けていた分の後始末なのかは、短信からは読み取れませんでした。そこには留保を付けて受け取っています。

次の期の予想は、半年が過ぎた時点で出ています

2027年3月期の会社予想上期通期
売上高1兆4,000億円2兆8,000億円
営業利益1,200億円2,000億円
純利益600億円1,000億円

上期は、この短信が出た9月30日に終わる半年です。通期の営業利益2,000億円から、上期の1,200億円を引きます。下期は800億円という置き方になります。

ただ、改善計画の報告には、6月分以降の月次実績を取締役会へ報告する準備がまだ整っていないと書かれています。上期を締めきれていない段階の予想だ、ということは頭に置いておきます。配当は、中間も期末も未定です。

私はどう読んだか

売上は伸びていて、赤字の大半は現金の出ない減損でした。ここだけを見れば、本業は崩れていません。

それでも私は、数字そのものの土台が固まっていない、という見方をしています。理由は、会社自身が財務諸表に断り書きを付けていて、親会社の帳簿には配当を出せる余地が見当たらないからです。

10月末には、東証へ内部管理体制確認書を出す予定だと書かれています。この先どうなるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/ir/library/earnings/2026/FY25Q4_3_jp.pdf

親会社の当期純損失1,670億円の内訳は、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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