はじめに
ユニクロとジーユーを運営している会社です。服を企画し、工場に作ってもらい、自分の店とネットで売るところまでを自社で抱えています。フリース、肌着、パンツのように、毎日着て、季節ごとに買い替える服が中心です。
この商売では、どれだけ作るかを自分で決めます。作りすぎれば値引きで売り切るしかなく、足りなければ売り逃します。だから在庫の量に、その年の出来がそのまま出ます。日本の会社という印象がまだ強いと思いますが、いまは売上の大半を、中国や韓国、東南アジア、北米、欧州の店が稼いでいます。
8月に、7月9日に出た2026年8月期 第3四半期の決算を読みました。売上が伸びているのに在庫が減っていたことに引っかかりました。そして、下期に原価が重くなるのか、6月の国内の落ち込みが最後の3か月にどう出るのかを確かめる、と書きました。前の記事はそこで終わっています。
5期続けて過去最高、営業利益は3割増
10月8日に出た通期の決算です。IFRSを使っているので、経常利益の行はありません。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆9,633億8,900万円 | 3兆4,005億3,900万円 | +16.6% |
| 営業利益 | 7,431億2,800万円 | 5,642億6,500万円 | +31.7% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益 | 5,425億1,600万円 | 4,330億900万円 | +25.3% |
売上が2割近く増え、営業利益はその倍のペースで伸びました。短信は「5期連続で過去最高」と書いています。
5月末に減っていた在庫が、8月末には大きく増えていた
財政状態計算書の棚卸資産は、前の期末の5,109億5,800万円から、この8月末に6,172億4,300万円まで増えました。1,062億円の増加で、これは短信の説明文にも書いてある数字です。
5月末は4,976億5,900万円でした。8月末から引くと、最後の3か月で約1,196億円増えたことになります。……いや、これは前の記事の比べ方が甘かった。
8月末は、秋冬物が店と倉庫に入ってくる時期です。前の記事では、前の期末と5月末を並べて「在庫を減らせている」と書きました。ただ、この2つは季節の違う時点です。在庫を圧縮できていると言い切ったのは、言い過ぎでした。
同じ8月末同士で比べると、5,109億5,800万円に1,062億円が乗ったので、在庫は2割ほど増えています。売上の伸び16.6%より少し速い増え方です。なぜ増えたのかは、決算短信には書かれていません。
増えた在庫の大半は、仕入先への支払いで賄われていた
在庫が増えれば、普通は現金が出ていきます。そこでキャッシュ・フロー計算書の2行を並べました。
| キャッシュ・フロー計算書の行 | 今回 |
|---|---|
| 棚卸資産の増減額 | △757億1,900万円 |
| 仕入債務の増減額 | 710億1,800万円 |
在庫の積み増しで出ていった現金を、仕入先への支払いが後ろにずれた分がほぼ埋めています。営業キャッシュ・フローは7,885億8,700万円で、前期の5,806億1,800万円から増えました。在庫は増えても、現金は利益と同じ向きに増えています。
もう一つ、数字が合わない点があります。財政状態計算書では在庫が1,062億円増えたのに、キャッシュ・フロー計算書の増加は757億円です。差の約305億円は私の引き算です。包括利益計算書には、海外子会社の換算差額として1,672億8,400万円が出ています。差の約305億円は、円安で海外の在庫が円に直したときに膨らんだ分だと私は読みました。
国内ユニクロでは、追加の発注が減っていた
前の記事で気にしていた下期の原価は、国内ユニクロについては短信に答えがありました。下期の売上総利益率は前年より0.3ポイント改善しています。
会社の説明では、為替予約のレートは円安でした。一方で、追加の発注の数量が減ったため、その時々の為替レートの影響が小さくなったそうです。原価が重くなるという私の心配は、国内については外れました。海外の下期の原価率は、決算短信には書かれていません。
ここで在庫の話とつながります。国内では追加の発注が減ったのに、期末の在庫は増えています。秋冬物を、最初から多めに用意しておいたのだろうと私は考えています。
会社はどう説明しているか
短信は、ユニクロ事業がすべての地域で増収増益だったと書いています。欧米の売上が、グレーターチャイナや韓国・東南アジアなどの地区を初めて上回ったそうです。欧州は4割近く、北米も3割以上の増収でした。
この説明は、そのまま受け取ってよいと思います。ただ一つ留保があります。中国大陸を含む地域は、円に直すと1割強の増収です。ところが中国大陸の売上は、現地通貨では約3%増にとどまります。海外の伸びには、円安で大きく見えている分も混じっています。
ジーユーは、最後の3か月で夏物への対応がうまくいかず、販売に苦戦したと会社自身が書いています。営業段階の為替差益は153億600万円で、前期の59億9,000万円から増えました。それでも、営業利益全体から見れば小さな額です。
通期予想には届いたうえで、来期は利益の伸びが鈍る
7月に引き上げた営業利益の予想は7,300億円でした。実績は7,431億円で、予想を上回っています。7,431億2,800万円から、5月までの累計6,143億8,900万円を引きます。すると、最後の3か月は約1,287億円です。前の記事で必要だと見積もった約1,156億円を超えました。6月の落ち込みは、3か月の合計では埋まったことになります。
来期の予想は次のとおりです。
| 2027年8月期の予想 | 金額 | 増減率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4兆4,500億円 | +12.3% |
| 営業利益 | 8,300億円 | +11.7% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 5,600億円 | +3.2% |
営業利益の予想は、事業利益の予想と同じ8,300億円です。為替差益のような本業の外の収益を、最初から見込んでいないことになります。最終の利益だけ伸びが3%台にとどまる理由は、決算短信には書かれていません。
私はどう読んだか
私は前の記事に続いて、本物の好決算だと考えています。理由は、増えた在庫の大半を仕入先への支払いと円安の換算で説明でき、営業キャッシュ・フローが利益と同じ向きに増えているからです。
ただ、前の記事で書いたほど在庫が締まっていたわけではありませんでした。そこは訂正しておきます。積み増した秋冬物が冬にどう売れたかは、次の第1四半期の在庫に出るはずです。心配性なので、そこを先に開きます。
出典:決算短信(会社発表)
期末に増えた在庫のうち、どの事業・どの地域の分がいくらなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント