8月7日に決算を発表したテイン(7217)── 営業利益の約4割は、前の期に払った関税の戻りだった

8月7日に決算を発表したテイン(7217)── 営業利益の約4割は、前の期に払った関税の戻りだった 決算を読む

8月7日に決算短信を出した会社のうち、印刷して赤ペンを入れたのは数社でした。そのうちの1社がテインです。読み終わるまでに何日かかかったので、いま書いています。

開いた理由は単純で、1ページ目の営業利益の増減率が前年同期比+376.9%と3桁になっていたのに、すぐ下の通期予想の修正欄が「無」だったからです。増益が本物なら予想を直すはずで、直さないなら増益のほうに何か事情がある。

事情は添付資料の4ページ目に、会社自身の言葉で書いてありました。ただ、その前に。この会社が何を作っているのか、私も今回初めてちゃんと調べました。

この会社がつくっているもの

車は古くなると、乗り心地から古くなります。段差を越えたときのゴツンという突き上げ、交差点を曲がったあとのフワフワと収まらない揺れ。原因のひとつがショックアブソーバのへたりです。ダンパーとも呼びます。タイヤの内側、バネの中を通っている筒状の部品で、路面からの衝撃を吸収します。このバネと筒と、それを支える部品をまとめてサスペンション──足回り──と呼びます。以下、呼び方はショックアブソーバに統一します。れっきとした消耗品なのですが、タイヤと違って車検で交換を迫られないので、多くの人はへたったまま乗り続けるか、車ごと買い替えます。

テインはこの部品を、後付け・交換用として作っている会社です。完成車メーカーの生産ラインに納めるのではなく、いま走っている車の持ち主に売る商売です。カーアフターマーケットと呼ばれる市場の専業で、事業はこのサスペンション単一。1985年設立、従業員398名。工場は横浜市戸塚区の本社工場と中国・江蘇省の2ヶ所だけで、販売拠点は米国・英国・豪州・ポーランド・タイ・インド・中国。海外売上比率は前期実績で63.9%です。

短信の本文に名前が出る製品は2つだけです。ひとつはEnduraPro。車高を変えず、へたった純正のショックアブソーバをそのまま置き換える補修用で、1台分4本セット、保証は3年または6万km。もうひとつは4x4DAMPER。クロスカントリー4WDの車高を純正から40mm上げる、悪路を走るためのものです。どちらも車高を「下げて」楽しむ趣味の製品ではなく、「直す」と「上げる」の製品です。会社の説明でも、アジアではタイを中心にEnduraProの販売が堅調とあり、前期の地域別売上ではアジア・オセアニアが前期比+17.9%で最大の伸びでした。路面のきれいな国の趣味としてではなく、路面の悪い地域の実用品として売れています。

国内では通信販売が好調、とも書いてあります。ただ、何を通信販売と呼んでいるかの定義は短信にありません。自社のECサイトは小物と補修部品が中心で、四半期の売上を動かす規模には見えません。通販業態の取引先を経由した売上を指している可能性が高いのですが、確認する手段がありません。

日本側の追い風はもうひとつあります。いまの車に長く乗る人が増えていることです(乗用車の平均車齢は9.44年で、33年連続の高齢化)。長く乗るほど、へたった足回りを直す需要は増える理屈です。

規模感はひとつだけ書きます。同じサスペンションでも、完成車メーカーに納めるKYBの売上は4,383億円。テインは前期55.9億円で、およそ78倍の差があります。テインが戦っているのは、その市場の外側です。なお客先は集中していて、米国の卸1社が売上の14.3%、国内の1社が10.4%を占めます。

今回の3ヶ月で起きたこと

2026年4月から6月の3ヶ月です。

項目前年同期当四半期増減率
売上高1,360百万円1,632百万円+20.1%
売上原価878百万円850百万円△3.2%
売上総利益率35.4%47.9%+12.5pt
販管費率31.2%31.3%+0.1pt
営業利益56百万円271百万円+376.9%
経常利益58百万円301百万円+417.3%
親会社株主に帰属する四半期純利益46百万円250百万円+436.2%

(注1)売上総利益率は、売った金額から作るのにかかった金額を引いた残りの割合。販管費率とともに、短信の数字から私が計算したものです。「pt」はポイント、%どうしの引き算に使います。(注2)前年同期の欄は、前期中間に行われた運賃収入の表示変更(営業外収益から売上高へ)が反映されていない数字のままに見えます。組み替え後なら前年同期はやや上振れするので、+20.1%と+376.9%はわずかに過大な可能性があります。影響額の開示はありません。

売上高1,632百万円は、遡れた7年28四半期で最大の四半期売上です。ただ、引っかかったのは2行目でした。売上が2割増えたのに、売上原価が減っている。……売上が2割伸びて、原価が減る。そんなことがあるか。販管費率はほぼ動いていないので、今回の増益はすべて、売上総利益率が35.4%から47.9%へ跳ねたことで説明されます。

もうひとつ、営業利益より経常利益のほうが伸びています。理由はほぼ全部が為替差損益の反転です。去年の第1四半期は為替差損1,396万円、今年は差益1,111万円。会社の説明文に、この話は出てきません。

答えは短信の本文にあった

「前連結会計年度に負担した米国向け製品に係る関税107百万円の還付額を売上原価の減少として計上した」。会社は隠していません。サマリーに出てこないだけで、本文にはっきり書いてあります。

107百万円は、営業利益271百万円の39.4%です。そして会社自身が「前連結会計年度に負担した」と書くとおり、これは過年度に払ったお金の戻りです。背景には米国の関税を巡る司法判断があり、2026年2月に一部の関税が無効とされ、4月20日から還付の受付が始まりました。当四半期は4月1日から6月30日。時期が重なります。還付は段階的に受け付けられていて、次の段階が始まったのは6月29日、この四半期が終わった翌日です。だから第2四半期に追加の還付が乗る可能性は残っています。逆に、還付そのものが止まるリスクも指摘されています。

会計の経路も、振れ幅を大きく見せています。前の期に払った関税は棚卸資産の原価に入り、売れたときに売上原価として出ていきました。今回の還付は、当期の売上原価から直接引かれています。同じ関税が2つの期に逆方向に効いて、前年同期比の振れを実態より大きくしている可能性があります。

還付を除いて置き直すと、営業利益は164百万円、売上総利益率は41.4%です。それでも前年同期比で約2.9倍ですが、比較の相手に難があります。前年の第1四半期の営業利益56百万円は、当時の異常に高い関税の直撃を受けた、この7年でいちばん悪い第1四半期でした。実額の164百万円を過去7年の第1四半期に並べると上から5番目。平均以下です。

一方で、続く変化もあります。会社は米国向け製品の一部を中国工場から横浜の本社工場へ生産移管し、その効果が継続していると書いています。米国の関税は原産地で違い、中国原産は301条の25%などを積み上げると約52.5%、日本原産は日米合意の上限で15%。差はおよそ37ポイントで、この差は司法判断のあとも残っています。人件費の高い日本へ移して原価率が良くなるのは一見おかしいのですが、関税の差がそれを飲み込む規模だった──ただし、関税だけで説明しきれるわけでもありません。この3ヶ月は円が対ドルで10.3%、対人民元で17.2%安く、中国で作る原価の優位は円換算で17%縮んでいます。どれがどれだけ効いたかは開示がなく、分けられません。移したのも米国向けの一部で、有形固定資産で見れば約6割は今も中国側にあります。工場の重心が動いたわけではありません。

「107百万円は一度きり」で、「関税負担が軽くなった状態」は続く。私はこの2つを分けて読みました。還付を除いた売上総利益率41.4%は、会社の通期計画42.4%をわずかに下回る水準です。計画を大きく超える実力が出たのではなく、計画どおりの実力に、一度きりの戻りが乗った四半期です。

それから、流動資産の「その他」が70百万円増えています。内訳の開示はありませんが、還付金の一部がまだ入金されず、未収のまま計上されている可能性があります。だとすると107百万円は、利益にはなったが、現金にはまだなっていないことになります。

利益は増えたのに、現金は減っていた

純利益は250百万円出ているのに、現金及び預金は1,627百万円から1,611百万円へ、16百万円減っています。第1四半期の短信にはキャッシュ・フロー計算書がなく、作成していないと明記されています。制度上許されており会社の落ち度ではありませんが、利益が現金になっているかを直接確かめる手段がない、ということでもあります。なので貸借対照表の増減から、現金がどこへ行ったかを差額で追いました。

最大の説明は配当の支払、推定で約157百万円です。前期の年間配当16円(今期の予想は18円)に発行済株式数9,811,308株を掛けた数字で、この会社の配当は年1回・期末一括なので、前期分の全額がこの四半期に出ます。短信に配当支払の記載自体がないため、これは私の再構成であって会社の説明ではありません。資金繰りが悪くなった話ではなく、配当を払った話のようです。ちなみに株式数が1,000万株ちょうどでないのは、4月に自己株式188,692株を消却したからです。短信の注記は「株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記:該当事項はありません」となっていて、消却の事実は別の適時開示を見ないと分かりません。なお今期の予想配当18円は、会社予想のEPS35.35円に対して配当性向50.9%にあたります。

売掛金も増えています。こちらも157百万円。配当の推定額と同じですが、偶然で、別の話です。増加率にすると+40.9%、売上の伸びの2倍のペースです。6月に出荷が集中して回収が7月にずれただけか、回収条件の緩い取引が増えたのか。私は前者、期ずれに寄せて読んでいます。北米で在庫状況が改善して売上が戻ったという会社の説明と整合するからです。読み違えかもしれません。

純資産の説明も書き留めておきます。会社は純資産が200百万円増えた理由を「主として、為替換算調整勘定の増加によるもの」と書いています。内訳を再構成すると、純利益+250百万円、配当△157百万円、為替換算調整勘定+107百万円で、合計+200百万円。純利益が単独で増加額の全体を上回っていて、200百万円にとどまったのは配当を払ったからです。間違いではありませんが、稼ぎではなく為替の換算差が主因だと読める書き方になっています。ここに出てきた107百万円は、関税還付の107百万円とは別物です。金額がほぼ同じなのはただの偶然で、私も一度、同じ数字が再登場したのかと思いました。

会社が見ている、残り9ヶ月

通期予想に対する進捗率──会社が1年分として見込む数字のうち、何割がこの3ヶ月で終わったか──は、売上高25.9%、営業利益55.7%です。売上の25.9%は過去6年のレンジ22.7〜31.1%のど真ん中で、完全に正常です。営業利益の55.7%は突出して見えますが、還付を除くと33.7%。過去にこれと近い進捗率だった年は2回あり、どちらも期初予想を下回って着地しています(0.84倍と0.68倍)。

純利益の進捗は72.5%と、さらに高く見えます。ただ、この四半期の実効税率は16.0%で、前期通期の約27%より軽い水準でした。通期並みの税率に置き直すと進捗は63%程度、還付も除けば4割ほどまで落ちます。表の+436.2%という増減率は、そのまま持ち帰る数字ではありません。

会社が残り9ヶ月に見込んでいるのは、営業利益216百万円、純利益95百万円です。この3ヶ月で250百万円の純利益を出した会社が、残りの9ヶ月では95百万円と見ています。もともとこの会社の利益は上期に偏っていて、6年平均で約66%が上期に集中し、第3四半期は2期連続で営業赤字です。加えて、通期予想の経常利益503百万円と営業利益487百万円の差は16百万円しかなく、この四半期だけで営業外の差引は+30百万円ありました。つまり会社は残り9ヶ月の営業外を差引マイナス約15百万円と見込んでいる計算になります。今回の営業外の中心だった為替差益を、続くものとは見ていない置き方です。

そして会社は予想を据え置きました。過去6年で第1四半期の発表と同時に修正した例は1回だけ。そのときの進捗は61.8%で、同日に上方修正し、最終的に期初予想の2.44倍で着地しています。進捗61.8%で直した会社が、55.7%では直していません。一度きりの戻りを除けば計画どおりの実力は出ている、という先ほどの計算と、この据え置きは矛盾しない並びです。

次に見るところ

第2四半期の発表は例年11月中旬です。

まず、キャッシュ・フロー計算書が出るかどうかから見ます。出れば、営業キャッシュ・フローも売上債権の増減も設備投資の額も初めて数字で見え、現金減の主因は配当だったという私の再構成をそこで検証できます。出なければ、この会社の現金の質は通期まで確かめられない、という結論になります。

それから、中間の累計から今回を引いた、第2四半期単独の営業利益。過去6年の第2四半期単独は132〜286百万円の範囲でした。還付を除いた今回の164百万円と並べて、同じ水準以上なら実力の回復が続いていることになり、130百万円を割るなら、今回が上振れだった可能性が出てきます。

残りは箇条書きにします。

  • 売掛金541百万円が減っているか。目安として、売上債権の回転日数(中間の売上×183日÷2で計算)が30日を大きく超えるかを見ます。超えたままなら、期ずれでは済みません。
  • 追加の関税還付の記載があるか。出れば、利益の質の評価はやり直しです。
  • 還付を除いた売上総利益率が41%台を保っているか。追加還付が出ていれば、まずそれを引いてから逆算します。40%を割れば、生産移管の効果を私が過大に読んだことになります。
  • 通期予想の修正の有無。過去6年の修正は、第2四半期発表時と第3四半期発表時が各2回。第1四半期発表時は1回です。据え置きなら会社は今回をなお見かけ上のものと見ており、上方修正なら実力の改善を会社が認めたことになります。修正が売上だけか、利益も伴うかでも意味が変わります。

わからないことを1つ残します。販管費が86百万円、+20.3%増えていて、増益幅の約3割を削った計算になります。人件費なのか、短信が言う展示会や試乗会の費用なのか、物流費なのか。その説明は短信のどこにもありません。


出典:


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

投稿は情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。

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