スマホの電池と、データセンターの磁気ヘッドの会社
TDKは電子部品の会社です。いちばん大きな柱は二次電池と電源で、スマートフォンなどの機器の中に組み込まれています。スマホを使っている人の多くは、その中にこの会社の電池が入っていることを知らないと思います。
この半年で目立ったのは、ハードディスクの磁気ヘッドと、それを支えるサスペンションです。ハードディスクは家庭のパソコンからは消えつつあります。一方で、AIのデータセンターでは大容量の記録先として使われ続けています。ほかに、コンデンサやコイルといった受動部品、温度や圧力を測るセンサも作っています。買い手は機器メーカーで、売上のほとんどが海外です。
全ての事業で売上が増えた半年
10月30日に出た中間決算です。4月から9月までの半年を、前年同期と並べます。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆5,605億7,900万円 | 1兆1,833億6,300万円 | +31.9% |
| 営業利益 | 2,081億5,600万円 | 1,476億2,700万円 | +41.0% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益 | 1,764億2,100万円 | 1,114億600万円 | +58.4% |
IFRSの会社なので、経常利益の区分はありません。純利益は、親会社の所有者に帰属する中間利益です。同じ日に通期予想を引き上げ、配当予想も年40円から50円にしています。
純利益は6割近く増え、営業キャッシュ・フローは半分以下に
業績表だけなら、文句の付けようがない決算です。キャッシュ・フロー計算書まで行って、引っかかりました。営業キャッシュ・フローは、1,893億7,900万円から785億8,100万円に減っています。
短信の6ページ目には、主に運転資本の増加によるものだと書かれています。売掛金にあたる営業債権が膨らんだ、という説明です。ただ、内訳を前年と並べると、少し違う形が見えてきます。
| 営業キャッシュ・フローの内訳 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 営業債権の増加 | △1,385億8,200万円 | △1,838億6,200万円 |
| 営業債務の増加 | 1,535億5,800万円 | 178億4,000万円 |
| 法人所得税の支払額 | △198億7,800万円 | △550億3,400万円 |
| 営業キャッシュ・フロー | 1,893億7,900万円 | 785億8,100万円 |
営業債権の増加は、去年の上期にもありました。売上が増えれば売掛金も増えるので、ここは去年と同じ動きです。違ったのは営業債務、つまり仕入先への支払いのほうでした。去年は買掛金の増加が売掛金の増加をほぼ打ち消していましたが、今年は178億円しか増えていません。
……去年のほうが特別だったのか。
法人所得税の支払額も、3倍近くに増えています。なぜここまで増えたのかは、短信には書かれていません。
設備にかけたお金は、本業で入った現金の倍以上
営業キャッシュ・フローが細った半年に、設備投資は増えています。固定資産の取得は1,663億9,900万円で、前年同期の1,127億3,900万円から5割近く増えました。本業で入った現金の倍以上を、設備に使ったことになります。
足りない分は、定期預金の払戻とコマーシャル・ペーパーで埋めています。定期預金の払戻は1,345億4,600万円、コマーシャル・ペーパーの増加は597億7,800万円です。利息の支払額は39億5,700万円から188億4,100万円に増えました。ただ、利息と配当金の受取額も183億5,100万円あり、差し引きでは今のところ見合っています。
親会社所有者帰属持分比率は49.7%で、手元の現金も8,510億円あります。すぐに困る形ではありません。それでも会社は通期の設備投資を3,700億円から4,000億円に引き上げており、この使い方は下期も続く見込みです。
電池の事業だけ、利益率が落ちた
7月から9月の3か月だけを取り出すと、事業ごとの差がはっきりします。
| 7〜9月のセグメント利益 | 前年同期 | 今回 | 前年の利益率 | 今回の利益率 |
|---|---|---|---|---|
| エナジー応用製品 | 822億9,100万円 | 807億5,000万円 | 22.7% | 17.5% |
| 磁気応用製品 | 56億1,400万円 | 235億6,000万円 | 9.2% | 24.7% |
| 受動部品 | 84億500万円 | 222億4,500万円 | 5.7% | 12.3% |
電池と電源のエナジー応用製品は、売上が3割近く増えたのに、利益は前年同期をわずかに割りました。利益率は5ポイントほど低くなっています。その理由は、短信には書かれていません。
代わりに伸びたのが、磁気応用製品と受動部品です。磁気応用製品は利益が4倍強になり、利益率で電池の事業を抜きました。会社は、ニアラインHDD用のヘッドとサスペンションの販売が大幅に増えたと説明しています。
会社の説明は「円安と、AIデータセンター」
会社は増益の理由に、円安、AIデータセンター向け製品の出荷増、合理化と前期の構造改革効果を挙げています。為替の影響は、営業利益で約199億円の増益だそうです。
営業利益の増加は605億3,000万円です。そこから為替の約199億円を引いても、約406億円が残ります。円安だけで説明できる決算ではありません。構造改革については、従業員数が11万1,673人から10万7,167人に減っていることと合っています。
ここまでは、会社の説明をそのまま受け取れます。一方で、営業キャッシュ・フローの説明は「運転資本の増加」の一言だけです。買掛金の動きが去年と大きく違う点には、短信の説明文は触れていません。
下期は、上期より利益を少なく見込んでいる
通期予想は10月に引き上げられました。売上高は3兆500億円です。利益は、営業利益が3,650億円、純利益が2,800億円です。
| 通期予想 | 中間期の実績 | 進捗率 | 残りの半年 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆500億円 | 1兆5,605億7,900万円 | 約51% | 約1兆4,894億円 |
| 営業利益 | 3,650億円 | 2,081億5,600万円 | 約57% | 約1,568億円 |
| 純利益 | 2,800億円 | 1,764億2,100万円 | 約63% | 約1,036億円 |
約の付いた数字は、通期予想と中間期の実績から私が引き算・割り算したものです。
残りの半年の営業利益は、上期より500億円ほど少ない前提です。前年と並べると、この前提の見え方が変わります。前年の通期営業利益は2,724億1,500万円でした。そこから上期の1,476億2,700万円を引くと、前年の下期は約1,248億円になります。今年の下期の約1,568億円は、それより4分の1ほど多い計算です。下期が上期より少ないのは、前年も同じでした。
会社は下期の為替を1ドル155円と想定しています。上期平均の159円41銭より円高です。構造改革などの一時費用も、通期で約60億円から約110億円に見直しました。上期にそのうちいくらを計上したのかは、短信には書かれていません。
利益の伸びは為替だけではない、と考えています
私は、この増益は為替頼みではなく、事業の中身が変わって出てきたものだと考えています。理由は、増益の605億円から為替の分を除いても約406億円、つまり3分の2が残り、その中心が利益率を大きく改善した磁気応用製品と受動部品だからです。
営業キャッシュ・フローの減り方は、去年の買掛金の膨らみが今年は無かった分が大きい、と私は受け取りました。ただ、本業の現金の倍以上を設備に使い、預金の取り崩しと短期の借入で埋める形は下期も続く見込みです。心配性なので、下期の営業キャッシュ・フローが設備投資にどこまで追いつくかを確かめます。
出典
出典:決算短信(会社発表)
エナジー応用製品の7〜9月の利益率が、売上が増えた中で5ポイントほど低くなった理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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