マキタ(6586)2027年3月期 中間決算分析・続報――調整額がまた膨らんだのが気になる

マキタ(6586)2027年3月期 中間決算分析・続報――調整額がまた膨らんだのが気になる 日本株

はじめに

マキタは電動工具を作っている会社です。大工が木材にねじを打ち込むインパクトドライバー、設備工事の職人がコンクリートに穴を開けるハンマードリル、内装の現場で板を切る丸のこ。プロが毎日使い、壊れたら同じものを買い直す道具が中心です。

同じ電池で動く芝刈り機やチェンソー、ブロワーも作っています。造園業者や農家が、電池ごと道具を揃える売り方です。作る場所も売る先も大半が海外なので、円の値段が動くと、本業とは別のところで数字が大きく動きます。

9月3日の前の記事では、7月29日に出た第1四半期の決算を読みました。増益の中身が米国関税の還付と、セグメント表の「調整額」の欄に偏っていることに引っかかりました。還付の金額と調整額の中身を確かめる、と書いていました。今回はその続きです。

売上は1割、利益は2割強の増加

10月30日に出た中間決算です。IFRSの会社なので、経常利益の代わりに税引前利益を並べます。

項目今回前年同期増減率
売上収益4,147億1,300万円3,784億2,100万円+9.6%
営業利益633億3,500万円514億9,500万円+23.0%
税引前利益662億7,400万円529億100万円+25.3%
純利益479億1,800万円388億円+23.5%

通期予想は据え置きで、中間配当は前年の20円から79円に上がりました。表だけなら、前回より良く見えます。

地域の利益を足すと、半年でも前年に届かない

短信の12ページ目、セグメント情報です。出荷元で区切った営業利益を並べます。

セグメント今回前年同期
日本163億1,400万円219億4,000万円
欧州188億800万円200億9,600万円
北米56億1,900万円2億200万円
アジア124億3,500万円132億9,100万円
その他21億7,500万円31億1,400万円
調整額79億8,500万円△71億4,800万円
連結633億3,500万円514億9,500万円

前回と同じ形です。日本・欧州・アジアは減り、北米だけが大きく増えています。日本から「その他」までを足すと、前年の586億4,300万円に対して今回は553億5,100万円です。地域の合計は33億円ほど減っていて、連結を押し上げたのは調整額の側でした。

7〜9月の3か月で、調整額がさらに動いた

前回は4〜6月の3か月でした。今回の半年分から前回の数字を引けば、7〜9月だけが取り出せます。

7〜9月の3か月今年前年
北米約10億2,300万円約△1億2,500万円
地域の合計(調整額の前)約282億6,800万円約311億5,700万円
調整額約45億300万円約△57億3,100万円
連結の営業利益約327億7,000万円約254億2,600万円

約の付いた数字は、中間期の数字から前の記事の第1四半期の数字を私が引いたものです。

引っかかったのは調整額です。前年はマイナス57億円で、今年はプラス45億円です。3か月で102億円動いたことになります。……4〜6月の49億円より大きい。同じ3か月の連結の増益は73億円です。地域の合計は前年より減っているので、その減益分まで調整額が埋めた形です。

北米は、7〜9月だけだと10億円ほどにとどまります。4〜6月に46億円あったことを考えると、関税の還付は春の3か月に偏って計上された、と私は受け取りました。前回「還付は北米の欄に落ちている」と書いた読みは、今のところ崩れていません。

調整額が何でできているのかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。グループ内の売買を消す欄なので、工場から販売会社へ渡った製品の利益の扱いが動いているのかもしれません。宿題は残ったままです。

在庫は、今度は現金を払って増えた

前回、販売台数が減る中で在庫の台数が増えていることを、頭の片隅に置いておくと書きました。半年たって、その件ははっきりしてきました。

貸借対照表の棚卸資産は、3月末の3,758億2,900万円から9月末の3,867億3,800万円へ増えました。差は109億円ほどです。キャッシュ・フロー計算書の在庫の増加は111億9,800万円です。4〜6月の増加は10億8,600万円でしたから、7〜9月の3か月で101億円ほどの現金が在庫に入ったことになります。

前回の増え方は、大半が海外在庫を円に直したときの膨らみでした。今回は実際にお金を払って積んだ在庫です。

説明会資料の数字です。在庫月数は9.8か月から10.5か月に延び、販売台数は前年並みでした。売れる数が変わらないまま、置いてある数が増えています。

一方で、営業活動によるキャッシュ・フローは前年の420億5,400万円から606億9,000万円へ増えました。在庫に現金を回してもなお、本業からの入金は厚く残っています。ここは素直に良い数字です。

短信の説明文に、調整額は出てこない

短信の4ページ目で、会社は増収を「円安現地通貨高の影響」、増益を「米国関税の還付により原価率が改善したことなど」と書いています。売上原価2,509億2,200万円を売上収益で割ると、60.5%です。前年は63.6%でしたから、3ポイントほど下がりました。説明と損益計算書は合っています。

地域の書き方は前回と似ています。北米は大手ホームセンターのワールドカップ販促が効きました。欧州は建築市場が低調なまま、円安で増収です。中近東・アフリカは中東情勢の緊迫で1割減でした。説明会資料の数字では、現地通貨での連結売上は前年とほぼ同じです。

気になる点は二つです。還付の金額は、短信にも説明会資料にも出ていません。そして短信の増益の説明文は、いちばん大きく動いた調整額の欄にひと言も触れていません。そこはそのまま受け取れませんでした。

下期は、1割強の減益を見込んだまま

上期の営業利益は633億3,500万円、通期予想は1,100億円です。上期を通期予想で割ると、進捗率は57.6%です。半年で6割近くまで来ています。

営業利益上期下期通期
前年 実績514億9,500万円約532億1,000万円1,047億500万円
今年 会社予想633億3,500万円約466億6,500万円1,100億円

下期の数字は、通期から上期を引いたものです。前年の下期より1割強減る前提で、純利益で同じ引き算をすると2割近く減ります。

前提の一つは為替です。上期の実績は、米ドルもユーロも通期の想定より4円ほど円安でした。下期は円高に戻るという組み立てが、そのまま残っています。

もう一つ、台数の前提に引っかかりました。説明会資料の数字で、通期の販売台数は3,100万台です。上期の1,504万台を引くと、下期は1,596万台になります。前年の下期は1,473万台でしたから、下期だけで1割近く多く売る計画です。

同じ資料で、在庫台数は9月末の1,653万台から期末に1,560万台へ減らす見込みです。上期に前年並みだった販売を下期は伸ばし、在庫も減らす。利益は減ると見込みながら、台数は伸びる前提になっています。

利益は伸び、商売の量は動いていない

前回の見方は、半年分の数字でも変わりませんでした。私はこの中間決算を、利益は伸びたが商売の量は動いていない決算だと考えています。理由は、7〜9月だけを取り出しても地域の合計は減り、その差を調整額が埋めているからです。そのうえ在庫だけが、現金を使って増えています。

財務は固く、現金も入っています。悪い決算ではありません。ただ下期の計画は、上期にできなかった台数の伸びを前提にしています。心配性なので、次の決算では在庫月数を先に確かめます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

株式会社マキタ
マキタは、総合電動工具メーカーとして、充電式を含む電動工具、木工機械、エア工具、エンジン式を含む園芸工具を取り揃え、世界各地で人の暮らしと住まい作りのお手伝いをしております。

調整額が7〜9月にさらに102億円動いた理由と、米国関税の還付の金額は、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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