株の注文を通す窓口で、お金も貸している会社
松井証券は、ネットで株の注文を受ける証券会社です。会社員が昼休みにスマホから日本株を注文すると、その注文はこの会社を通って取引所へ届きます。注文が通るたびに手数料が入ります。
稼ぎ方はもう一つあります。信用取引のための貸し出しです。手元の資金より大きく株を持ちたい人に、株を担保にしてお金を貸し、利息を受け取ります。お客さんから預かった現金は会社のお金と分け、信託銀行に預けることが法律で決まっています。その預け先からも収益分配金が入ります。
このほかにFX、投資信託、米国株も扱っています。注文の窓口であり、同時にお金の貸し手でもあります。今回の決算は、この二つの顔を分けて見ると分かりやすくなります。
半年で、経常利益は6割増えました
10月28日に出た中間決算です。4月から9月までの半年分です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 340億4,800万円 | 238億3,900万円 | +42.8% |
| 営業利益 | 164億8,400万円 | 102億6,300万円 | +60.6% |
| 経常利益 | 165億2,800万円 | 101億5,200万円 | +62.8% |
| 中間純利益 | 104億3,500万円 | 65億3,500万円 | +59.7% |
証券会社の短信には、売上高の行がありません。いちばん上の営業収益がそれにあたります。その下に、営業収益から金融費用を引いた純営業収益という段があり、今回は308億5,800万円でした。営業利益は、そこから販管費を引いた数字です。
7月から9月だけ見ると、手数料は減っていました
半年の表は増益一色です。ただ、3か月ずつに割ると様子が違います。短信には四半期ごとの数字が無いので、ここだけは同じ日に出た決算説明会資料の数字です。
7〜9月の受入手数料は73億4,300万円でした。直前の4〜6月から16%減っています。経常利益も、直前の3か月より13%少なくなりました。
手数料が減った理由は、売買の量だけではありません。短信は、手数料が原則無料の一日信用取引の割合が増え、手数料率が低下したと書いています。説明会資料のグラフでは、この1年で手数料率が3.3bpから2.1bpまで下がっています。1万円の売買にかかる手数料に直すと、1年前は3.3円だった計算です。それが2.1円まで下がりました。
その7〜9月に、利息の稼ぎである金融収支は直前の3か月より4%増え、59億8,600万円でした。手数料が16%減った四半期に、こちらは増えています。経常利益の減り方が手数料ほど大きくならなかったのは、この差が効いたからです。
支払う利息が倍になっても、金融収支は5割近く増えました
いつもの癖でキャッシュ・フロー計算書を探しましたが、この中間短信には付いていませんでした。代わりに損益計算書の中段を見ます。
| 今回 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| 金融収益 | 149億2,500万円 | 94億3,800万円 |
| 金融費用 | 31億9,000万円 | 15億1,600万円 |
支払う側の金融費用は、前年同期の倍を超えました。それでも受け取る側の伸びのほうが大きく、差し引きの金融収支は117億3,500万円です。短信によれば前年同期より48.1%増で、5割近く増えたことになります。この半期でいちばん引っかかったのは、この数字です。
お金を貸すためのお金を、どこから借りているのか。貸借対照表で3月末と9月末を並べると、借り先の変化が見えてきます。
| 3月末 | 9月末 | |
|---|---|---|
| 信用取引貸付金 | 4,236億1,700万円 | 5,094億9,300万円 |
| 短期借入金 | 3,169億円 | 4,319億円 |
| 信用取引借入金 | 539億100万円 | 139億2,600万円 |
信用取引借入金は4分の1近くまで減っています。……減ったのか。いや、借り先が移っただけだ。短期借入金は、3月末の3,169億円から9月末の4,319億円へ増えました。差し引きで1,150億円の増加です。短信も、両方を合わせると2割増えたと書いています。
説明会資料の付録には、この構図についての会社側の整理があります。借入金の利息は金利の上昇でそのまま費用が増えます。一方で貸付の金利は引き上げれば収益が増えるものの、他社の動向に左右される、という整理です。払う利息は自動で増え、受け取る利息は他社を見ながら決める形です。
同じ資料は、政策金利が0.25%引き上げられるごとに年7億5,000万円の増収になると試算しています。ただ、その前提の借入金は4,000億円です。9月末の借入金は同じ資料で4,458億円あり、前提をすでに上回っています。
経常利益と純利益のあいだにある、12億円の準備金
純利益の伸びが経常利益より少し小さいのは、特別損失が13億200万円あったからです。その大半は、金融商品取引責任準備金の繰入れ12億6,100万円でした。前年同期は3億5,900万円です。
これは、証券会社が取引の量に応じて積むよう法律で求められている準備金です。短信によると、お客さんから受けた株式等の注文の金額は、前年同期の倍になっています。売買が倍になれば、繰入れも増えます。事故の費用ではなく、取引の量が増えた結果の費用だと受け取りました。
会社の説明は、売買の増加と金利の上昇
短信の説明文は素直です。委託手数料が増えたのは、手数料率は低下したものの、お客さんの注文の金額全体が大幅に増えたからです。金融収支が増えたのは、支払利息が増えたものの、顧客分別金信託の収益分配金と信用取引の収益が増えたからです。販管費が2割近く増えたのは、広告宣伝費、取引所への費用、事務委託費の増加が主な理由だ、と書いています。
どれも数字と合っているので、そのまま受け取ります。留保を付けるとすれば支払利息です。倍を超えた費用を「増加したものの」の一言で済ませています。短信は、資金調達の大部分を短期借入金に頼っているとは書いています。ただ、信用取引借入金からそちらへ比重を移した理由は、短信には書かれていません。
予想を出さない会社が、出したもの
この会社は業績予想を出していません。短信には、証券業の業績は市場の環境に大きく左右され、予想が難しいため開示しないとあります。代わりに、お客さんから受けた注文の金額や委託手数料などの数字を、会社が自分で毎月公表しています。通期の予想が無いので、進捗率は測れません。
配当も、中間の28円が決まっただけで、年間の予想は未定です。説明会資料には配当性向70%以上という方針があり、中間は69%でした。1株利益40円50銭に対して28円です。方針は示すが、金額は利益が出てから示す。この会社はそういう出し方をしています。
私はどう読んだか
この半期は、利息で稼ぐ形へ移った節目とも、売買の盛り上がりに乗った半期とも取れます。
私は後者の見方をしています。理由は、利息の稼ぎも、もとをたどれば信用取引の買残に乗っているからです。利息が増えたのは貸付金が増えたからで、貸付金が増えたのは売買が盛り上がったからです。手数料と利息は別の稼ぎ口に見えますが、同じ根から出ています。
心配性なので、説明会資料の1枚が頭に残っています。信用取引の買残の評価損益率が、10月22日時点で全体−13.3%でした。お金を借りて株を持っている人が、平均して1割強の含み損を抱えていることになります。この状態で買残がどこまで保たれるのか。この先どうなるかは、私には分かりません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.matsui.co.jp/company/ir/pdf/2027_2.pdf
この半期に信用取引の貸付金利を引き上げたのかどうかは、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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