夜道で前を照らしている部品の会社
小糸製作所は、自動車のランプを作っている会社です。夜道で前を照らすヘッドランプも、ブレーキで光る後ろのランプも作っています。いまはLEDのヘッドランプが中心です。
納め先は自動車メーカーで、日本のメーカーが中心です。ランプのほかに、鉄道車両の制御機器、道路の信号機、交通管制のシステムも手がけています。自動運転に使うLiDARというセンサーにも取り組んできましたが、こちらはまだ赤字の事業です。
上期の営業利益は、前年同期の1.5倍を超えた
10月28日に出た中間決算です。4月から9月までの半年を、前年同期と並べます。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,781億7,100万円 | 4,468億5,100万円 | +7.0% |
| 営業利益 | 307億3,100万円 | 198億5,200万円 | +54.8% |
| 経常利益 | 337億8,000万円 | 227億9,200万円 | +48.2% |
| 純利益 | 223億8,200万円 | 118億4,100万円 | +89.0% |
売上高が7%増えたのに対して、営業利益は5割以上増えています。
上期で計画を上回ったのに、通期はほとんど動かしていない
引っかかったのは、通期予想の直し方です。
会社は短信と同じ日に決算説明会資料を出していて、7月時点の計画も載せています。ここからは説明会資料の数字です。
7月の予想では、上期の営業利益を250億円、通期を600億円としていました。上期の実績は307億円なので、計画を57億円上回っています。
それなのに、通期予想は600億円から610億円への修正にとどまりました。引き上げ幅は、10億円しかありません。7月時点の下期は、通期の600億円から上期の250億円を引いた額です。つまり350億円でした。今回の下期は、説明会資料の表で302億円です。下期は350億円から302億円になりました。50億円近く引き下げたことになります。
……上期に余分に稼いだぶんを、下期でほぼそっくり削っている。
削った理由は、電子部品の値段
理由は、短信4ページ目の通期見通しのくだりにあります。樹脂材の価格上昇に加えて「特に下期以降は電子部品価格高騰の影響を大きく受ける見込み」としています。説明会資料はもう一歩踏み込んで、AI需要の拡大で電子部品の需給がひっ迫している、と書いています。
LEDのヘッドランプは、光らせるにも、向きや明るさを切り替えるにも電子部品が要ります。その部品をAI向けの設備と取り合う形になっている、と私は受け取りました。
説明会資料の最後の表には、原材料などの値段の影響を除いた営業利益も載っています。会計の決まりに沿った数字ではなく、会社が説明用に作ったものです。それによると上期331億円、下期355億円で、下期のほうが多くなります。
下期の影響額は113億円で、得意先から回収できるのは60億円と見込んでいます。影響額から回収分を引いた残りを、値段の影響を除いた355億円から差し引くと、下期計画の302億円になります。下期の減益計画は、電子部品などの値段だけで説明がつきます。
上振れの一部は、一時的なもの
良い話ばかりではないので、上期の57億円の中身も確かめました。説明会資料の計画比の表では、日本に「一過性等」が13億円、アジアにも8億円入っています。日本ではさらに、得意先の開発日程のずれで先行費用が4億円減りました。費用が後ろにずれただけです。
短信の注記にも一つあります。建物の減価償却を定率法から定額法に変え、上期の営業利益が3億2,200万円増えました。これらを足すと30億円に届かない程度で、上振れの半分ほどにあたります。残りの半分は量と合理化から来ている、というのが私の足し算です。
営業CFが減ったのは、主に税金の支払い
短信9ページ目のキャッシュ・フロー計算書です。
| 項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 454億9,500万円 | 396億8,300万円 |
| 法人税等の支払額 | △85億6,900万円 | △124億7,800万円 |
| 棚卸資産の増減額 | 9,300万円 | △24億8,900万円 |
| その他の流動資産の増減額 | 1億8,000万円 | △72億8,400万円 |
減った分の多くは、法人税等の支払いが40億円ほど増えたことと、その他の流動資産が増えたことで説明がつきます。その他の流動資産の中身は、短信には書かれていません。
現金及び現金同等物は1,001億円まで減りました。会社の説明では、自己株式の取得に192億円、配当金等の支払いに119億円を使っています。定期預金への預け入れも差し引き161億円ありますが、これは現金同等物の枠から外れるだけで、手元から出ていったお金ではありません。
会社の説明は「新規受注と合理化」
短信4ページ目では、増収の理由を為替換算の影響と、日本・米州・アジアでの新規受注、受注車種の販売増としています。増益の理由は、販売数量の増加と各地域での改善合理化です。
利益の説明はそのまま受け取りますが、売上の説明には留保を付けます。理由は、説明会資料によると、売上の増加313億円のうち為替の影響を除くと27億円しか残らないからです。ほとんどが円安による換算です。
一方で営業利益は、為替を除いても5割近く伸びています。説明会資料には、工程の自動化や管理部門の人員の適正化が並んでいます。中国だけは短信のセグメント表で営業損失に転じていて、工場の整理が続いています。
通期予想に対して、ちょうど半分
| 項目 | 通期予想 | 上期実績 | 進捗率 | 下期に要る額 | 前年下期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,550億円 | 4,781億7,100万円 | 約50.1% | 約4,768億2,900万円 | 約△4.7% |
| 営業利益 | 610億円 | 307億3,100万円 | 約50.4% | 約302億6,900万円 | 約△4.2% |
| 経常利益 | 675億円 | 337億8,000万円 | 約50.0% | 約337億2,000万円 | 約△6.3% |
| 純利益 | 430億円 | 223億8,200万円 | 約52.1% | 約206億1,800万円 | 約+339.0% |
約の付いた数字は、表紙の通期予想と上期の実績から私が割り算・引き算したものです。
純利益の下期だけ前年の4倍を超えるのは、前期の下期に減損損失を計上した反動です。説明会資料では、LiDAR事業と中国事業で合わせて210億円です。
私はどう読んだか
この決算の受け取り方は2つあると思います。上期の上振れは一時的で、下期の計画がこの会社の本来の姿だという見方。もう一つは、稼ぐ力は改善していて、下期は電子部品の値段に押されているだけだという見方です。
私は後者の見方をしています。理由は、為替を除いても営業利益が5割近く伸びていて、その中身が工程の自動化のような、半年で消える種類ではない合理化だからです。値段の影響を除いた下期の数字が上期を上回っていることも、同じ向きを示しています。
心配なのは回収のほうです。下期は、影響額の半分ほどしか得意先から回収できない計画です。これがさらに細れば、下期の数字はまた削られます。電子部品の値段がいつ下を向くのかは、私には分かりません。
出典:決算短信(会社発表)
退職給付に係る資産と負債が、この半年でそろって100億円近く増えた理由は、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント