エノモト(6928)2027年3月期 第1四半期決算分析――借りて積んだ材料は、仕込みと読みました

エノモト(6928)2027年3月期 第1四半期決算分析――借りて積んだ材料は、仕込みと読みました 決算を読む

エノモトは、半導体やLEDの中に入っている金属の骨組みを作っている会社です。骨組みはリードフレームと呼ばれ、薄い金属の帯をプレスの型で打ち抜いて作ります。その上に半導体のチップやLEDの光る粒を載せ、チップから外の回路へ電気を通す足にもなります。パワー半導体用なら自動車や産業機械、家電の電源まわりに、LED用なら照明や車のランプの中に入っています。

もう一つの柱がコネクタ用部品です。スマートフォンや車の中で、基板と基板、線と線をつなぐ端子の金属部分がそれにあたります。年々小さく薄くなる端子を、型の精度で追いかけていく仕事です。

どちらも私たちが直接手に取ることのない部品で、買うのは半導体メーカーやコネクタメーカーです。海外にも工場を持っていて、為替が決算に絡んできます。

この決算で何が起きたか

8月10日に出た第1四半期の決算です。まず1ページ目の業績表からです。

項目今回前年同期増減率
売上高87億2,300万円71億4,600万円+22.1%
営業利益7億1,500万円3億1,100万円+129.9%
経常利益7億600万円3億3,600万円+109.7%
純利益5億1,400万円2億6,300万円+95.5%

売上が2割増えて、営業利益は2.3倍です。営業利益率は前年同期の4.4%から8.2%へ上がりました。同じ日に通期予想の修正と増配も出ています。ここまでは1ページ目で分かることで、なぜ利益がこれほど伸びたのかは書いてありません。

増えた利益は、粗利から出ている

損益計算書は短信の7ページ目です。

今回前年同期
売上原価73億1,893万円62億623万円
売上総利益14億422万円9億4,047万円
販売費及び一般管理費6億8,845万円6億2,910万円

売上総利益が5割近く増えて、販管費は1割も増えていません。売上総利益を売上高で割ると、前年同期は約13.2%、今回は約16.1%です。これは私の割り算です。3ポイント近く粗利率が上がった分が、ほぼそのまま営業利益に落ちてきたことになります。

営業外や特別利益に一時的なものは見当たりませんでした。むしろ営業外は、前年同期にあった為替差益1,252万円が消え、今回は為替差損371万円が出ています。利益が『本業』の中で増えている点は、損益計算書で確かめられました。

一つだけ引っかかったのが、営業外費用の「その他」です。前年同期の24万円から、今回は1,610万円になっています。金額は小さいのですが、中身が何かは決算短信には書かれていません。

LED用が6割増、コネクタが3割増、パワー半導体用は減

4ページ目の会社の説明文に、製品群別の売上が載っています。

製品群今回の売上高前年同期比
パワー半導体用リードフレーム25億8,500万円−1.1%
オプト用リードフレーム17億4,600万円+57.6%
コネクタ用部品42億4,100万円+29.9%
その他1億4,900万円−5.9%

伸びたのは4つのうち2つです。オプト用はLED用リードフレームのことで、民生機器向けの量産が本格化し、車載向けも立ち上がったと説明があります。コネクタ用はモバイル端末向けが中心です。いちばん大きいパワー半導体用は、自動車向けは堅調でも民生・産業向けの回復が緩やかで、わずかに減りました。

材料が3か月で5億7,800万円増え、短期借入が7億5,000万円増えている

貸借対照表は5ページ目と6ページ目です。3月末と6月末を並べます。

3月末6月末
現金及び預金53億3,452万円57億2,439万円
売上債権63億5,551万円68億7,669万円
原材料及び貯蔵品29億4,294万円35億2,058万円
短期借入金27億2,800万円34億7,800万円

原材料が3か月で2割増えています。6月末の35億2,058万円から、3月末の29億4,294万円を引きます。増えた分は約5億7,800万円です。売上債権も5億円ほど増えていますが、こちらは売上が2割増えた裏返しなので珍しくありません。気になったのは材料のほうです。現金は4億円近く増えているのに、短期借入金はそれを上回る7億5,000万円増えています。……借りて、材料を積んだ。

ただ、第1四半期の借入増には毎年の事情もあります。賞与引当金が5億2,000万円から2億4,700万円へ減りました。未払法人税等も2億6,203万円から1億2,418万円へ減っています。この2つの減った分を足すと、合わせて4億円ほどが4月から6月に出ていったことになります。これは私の引き算です。賞与と法人税の支払いが重なる時期なので、借りて凌ぐのは自然な形です。

それでも材料の増え方は、支払いの季節では説明が付きません。なぜ増えたのかは、短信には書かれていません。手がかりは4ページ目の説明文にあります。「本格化するLED用リードフレームの生産拡大」と「高騰する金属価格」の両方が書いてあります。量を増やす前に材料を仕入れたとも、同じ量の材料が高くなったとも、どちらでも受け取れます。

キャッシュ・フロー計算書は、この短信にはありません。9ページ目の注記に、第1四半期は作成していないとあります。現金が本業でいくら増え、借入でいくら増えたのかは、次の中間決算まで確かめられません。減価償却費だけが5億1,494万円と載っています。

会社はどう説明しているか

4ページ目の説明文で、会社は今期の力の入れどころを3つ挙げています。LED用リードフレームの生産拡大、より細かいマイクロコネクタ用部品への挑戦、そして高くなった金属価格に対応するための、メッキ工程での省金化です。

省金化はメッキに使う金の量を減らすことで、粗利率の改善に直接つながります。数量が増えて、材料費も削れば、粗利率が3ポイント上がる説明は付きます。私は筋が通っていると受け取りました。

気がかりを挙げるとすれば、金属価格の高い水準が続くことを会社自身が心配して書いている点です。省金化がそれをどこまで打ち消せるかは、この3か月の数字だけでは判断できませんでした。

通期予想に対して、どこまで来ているか

同じ8月10日に、会社は通期予想を修正し、配当予想を年75円から80円へ引き上げました。

通期予想第1四半期進捗率残り9か月に必要な額残り9か月の前年比
売上高340億円87億2,300万円25.7%252億7,700万円+8.6%
営業利益24億円7億1,500万円29.8%16億8,500万円+25.8%
純利益17億5,000万円5億1,400万円29.4%12億3,600万円+27.6%

進捗率と残り9か月の列は、表紙の予想から私が引いたものです。

営業利益は3割近くまで来ていて、4分の1という目安を超えています。残り9か月に必要な営業利益は前年の同じ9か月より4分の1ほど多い水準で、第1四半期の2.3倍と比べればずいぶん控えめな置き方です。予想配当性向はおよそ3割で、原資に無理はありません。修正のお知らせと決算補足説明資料は、まだ読んでいません。

私はどう読んだか

材料と借入の増え方は、金属価格で膨らんだのか、生産を増やす前の仕込みなのか。この2つのどちらかだと思います。

後者、つまり会社が生産を増やす前に材料を先に確保したのだと考えています。理由は、LED用が6割増、コネクタ用が3割増と、量が実際に出ている製品群があるからです。会社側も生産拡大が本格化すると書いています。金属価格が高いまま粗利率が上がっている点も、値上がり分を吸収できている証拠として、こちらの読みを支えます。

心配性なので、短期借入金34億7,800万円は頭の片隅に置いておきます。次の中間決算でキャッシュ・フロー計算書が出たとき、営業キャッシュ・フローがこの材料の増加を吸収できているかを、まず確かめるつもりです。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260810/140120260807514160.pdf

原材料が5億7,800万円増えた理由が、金属価格なのか数量なのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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