Cominix(3173)2027年3月期 第1四半期決算分析――前払いした13億円が気になる

Cominix(3173)2027年3月期 第1四半期決算分析――前払いした13億円が気になる 決算を読む

Cominixは、切削工具の専門商社です。切削工具は金属を削るための刃物で、使っているうちに摩耗するので消耗品として取り替えます。自動車部品の加工工場が、主なお客さんです。

刃の材料は超硬合金で、主成分はタングステンです。自分では作らず、大手の工具メーカーから仕入れて工場や販売店に届けるのが本業です。ここ数年は、金型に使う耐摩工具、カメラやレンズなどの光製品、京都の生産財卸を買収したKamogawa事業と、扱う分野を広げてきました。

8月10日に出た第1四半期決算です。

この決算で何が起きたか

売上が3割増えて、営業利益は5倍になりました。

項目今回前年同期増減率
売上高120億2,800万円92億3,200万円+30.3%
営業利益6億8,200万円1億3,400万円+407.7%
経常利益7億800万円9,300万円+660.5%
純利益4億4,100万円3,000万円—

同じ日に、通期予想の上方修正と増配も出ています。年間配当は35円から50円へ。表紙だけ見れば、文句のつけようがない四半期です。

売上の3割増を押し上げたのは、値上げ前の駆け込みでした

理由は4ページ目に会社自身が書いています。タングステンの価格が高騰し、主力メーカーが価格改定に踏み切ったので、その前に買っておこうという駆け込み需要が入った、とあります。5ページ目のeコマース事業の説明には、もう「値上げ前の買い込み反動減」という言葉が出てきます。前倒しで売れた分はあとで減ると、会社側も承知のうえです。

この駆け込みが損益計算書にどう出たかを、8ページ目で確かめました。

項目前年同期今回増減
売上総利益20億4,700万円26億5,700万円+6億1,000万円
販売費及び一般管理費19億1,300万円19億7,500万円+6,200万円
営業利益1億3,400万円6億8,200万円+5億4,800万円

増減の列は私の引き算です。

粗利は6億円増えたのに、販管費は6,200万円しか増えていません。商社は倉庫と人が固定費なので、売上が伸びても費用はほとんど動きません。増えた粗利がほぼそのまま営業利益に落ちた。5倍の理屈はこれです。

粗利率も計算しました。売上総利益を売上で割ると、前年が約22.2%、今回が約22.1%です。単価を上げて稼いだのではなく、同じ利幅の商品が3割多く売れたことになります。駆け込みらしい形です。

前渡金が13億円増えて、短期借入金も同じだけ増えている

引っかかったのは、5ページ目の財政状態の説明です。流動資産の「その他」が増えた中身として、「前渡金が13億100万円増加した」と書かれています。

前渡金は、商品を受け取る前に仕入先へ払っておく代金です。通常は品物が届いてから買掛金で払います。先に払うのは、確保しておきたい理由があるときです。

貸借対照表の項目前期末今回増減
流動資産のその他(前渡金を含む)8億4,500万円21億7,500万円+13億3,000万円
棚卸資産57億9,800万円60億8,900万円+2億9,000万円
現金及び預金57億800万円56億3,000万円△7,800万円
短期借入金36億円49億8,000万円+13億8,000万円

増減の列は、前期末と今回の差を私が引いたものです。

現金はほぼ動いていません。借りたお金が、そのまま仕入先への前払いに回った形です。……いや、13億は大きい。この四半期の売上の1割を超える金額を、まだ届いていない商品のために払っています。

何の前払いなのかは、決算短信には書かれていません。売れた分の補充なのか、値上がり前の前倒し仕入れなのか、その両方なのか。説明文は「増加したことなどによります」で終わっています。

営業外に「リサイクル収入」が新しく出てきました

もうひとつ、10ページ目の注記です。営業外収益の「その他」に混ぜていた「リサイクル収入」を、重要性が増したので独立させた、とあります。前年同期はゼロ、今回は2,900万円です。

4ページ目では「リサイクル関連ビジネスの強化」を増収の理由に挙げているのに、その収入は営業利益の下に置かれています。本業の売上には数えていない、ということです。

何のリサイクルかは短信に書かれていません。ただ、タングステンが上がっているときに、使い終わった超硬工具を回収する商売が伸びるのは自然だと考えています。独立させたということは、この先も続く見込みなのでしょう。

会社はどう説明しているか

4ページ目と5ページ目に、事業ごとの説明があります。6つの事業のうち、赤字が縮んだeコマースを除く5つが増収増益です。切削工具事業が4割増、半導体装置向けの電着工具が伸びたKamogawa事業が2割増。海外事業は増収ですが、中国とアセアンの価格競争が厳しく、利益は1,500万円にとどまっています。

駆け込みのほかに、新商材、機械設備の販売、リサイクル、半導体装置関連の需要を挙げ、「全社的に想定を上回る大幅な増収増益」と自分で書いています。のれん等の償却を足し戻した調整後営業利益7億6,600万円も示していて、買収した事業を含めて見てほしい、という言い分です。

私はこの説明を、半分だけ受け取っています。半導体向けやリサイクルは、値上げと関係のない需要です。ただ、駆け込みがいくら分だったのかは短信に金額がありません。表紙には補足説明資料も決算説明会も「無」とあるので、この会社の言葉は短信の文章がすべてです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

上方修正後の通期予想に対して、営業利益は42.6%まで来ています。3か月で、目安の4分の1をだいぶ上回っています。進捗率は表紙の予想から私が割ったものです。

項目通期予想第1四半期残り9か月に必要な額残りの前年比
売上高450億円120億2,800万円329億7,200万円+3.5%
営業利益16億円6億8,200万円9億1,800万円+8.4%
経常利益16億円7億800万円8億9,200万円△7.8%

残りの9か月は、売上がほぼ横ばい、経常利益は前年の同じ9か月より1割近く減る置き方です。上方修正した当日に、残りを減益と置いた。強気の修正ではなく、第1四半期の上振れ分を足しただけの修正だと考えています。

私はどう読んだか

私は駆け込みの反動を先に見る側です。前倒しで動いた分は、この先の四半期で消えます。

そのうえで、前渡金の13億円は、値上がり前に商品を確保しに行ったものと私は読みました。理由は、借りているのが短期借入金だからです。短期で借りたお金は、短期で返す当てがあるということです。そして借入の増加額は、前渡金と棚卸資産の増加額とほぼ釣り合っています。反動減の時期に値上げ前の価格で仕入れた商品を売れば、粗利は守れます。そういう算段かもしれません。

上がるかは知りません。気にしているのは、この前払いした商品が、反動の来る3か月の間にちゃんと売れていくかどうかです。次の中間決算で、前渡金が棚卸資産に変わり、棚卸資産が売上に変わっているかを確かめます。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260810/140120260807514858.pdf

前渡金として先に払った13億100万円が、どの商品の代金で、いつ届く予定のものなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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