三相電機は、兵庫県姫路市にある、小さなモーターとポンプを作る会社です。家の中で言えば、給湯器やエコキュートの中で湯を回している循環ポンプがそれです。風呂の追い焚きで湯が勝手に動いているように見えるのは、あの箱の中でこの手のポンプが回っているからです。買うのは給湯器や空調機器を組み立てるメーカーで、私たちが店で手に取ることはありません。
ほかにも、業務用の厨房機器や空調設備、工場の装置に組み込まれるモーターやポンプを手がけています。目に触れない場所で、ずっと回り続ける部品です。壊れると困るのに、動いているうちは誰も気にしない。そういう商売をしている会社だと理解しています。
この会社の決算短信を開くのは、今回が初めてです。表紙から順に読んでいきます。
売上が2割増えて、営業利益はほぼ倍になった
8月7日に出た第1四半期決算です。表紙の業績表は、こうなっていました。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 49億2,700万円 | 39億7,100万円 | +24.1% |
| 営業利益 | 3億9,700万円 | 2億100万円 | +97.4% |
| 経常利益 | 3億7,400万円 | 2億4,400万円 | +53.2% |
| 純利益 | 2億7,000万円 | 1億6,000万円 | +69.0% |
売上が2割以上増え、営業利益は倍近くになっています。営業利益率は5.1%から8.1%に上がりました。3ポイントの改善です。ここまでなら、良い決算です。
上期の予想を引き算すると、7月からは減収の置き方になる
引っかかったのは、同じ表紙の下にある上期の予想です。売上高90億円、前年からの増減率は+0.5%。第1四半期だけで2割以上伸びた会社が、上期は横ばいだと言っています。しかも予想の修正は「無」です。
引き算をします。上期予想は90億円です。そこから第1四半期の49億2,700万円を引くと、7月から9月の3か月は40億7,300万円です。一方、前年の上期は、90億円を1.005で割り戻して約89億5,500万円です。そこから前年の第1四半期39億7,100万円を引くと、前年の7月から9月は約49億8,400万円だったことになります。今年の同じ3か月を、会社は前年より2割近く少なく見込んでいるわけです。
利益のほうも同じことをしてみます。並べると4つ以上になるので表にしました。
| 営業利益 | 第1四半期 | 7月〜9月 | 上期累計 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 2億100万円 | 約2億800万円 | 約4億900万円 |
| 今年 会社予想 | 3億9,700万円(実績) | 約2億6,300万円 | 6億6,000万円 |
約の付いた数字は、表紙の上期予想と増減率+61.3%から私が割り戻し、第1四半期を引いたものです。売上を2割近く落としながら、営業利益は前年の3か月より増える置き方になっています。……いや、これは変だ。売上が2割減って利益が増える3か月というのは、よほど利幅の悪い仕事が消えるか、第1四半期に何か特別なものが乗っていたか、どちらかでないと成り立ちません。
営業利益より、経常利益のほうが小さい
もう一つ、表紙だけで分かることがあります。営業外の損益が、前年と逆向きになっています。前年の第1四半期は営業利益2億100万円に対して経常利益が2億4,400万円でした。営業の外で4,300万円ほど稼いでいた計算です。今年は営業利益3億9,700万円に対して経常利益3億7,400万円です。営業の外で2,300万円ほど失っています。差し引き6,600万円の振れです。私の引き算ですが、小さくはありません。
ここで白状しておきます。この短信は、添付資料の3ページ目から先が、私の手元では文字が崩れて読めませんでした。損益計算書も貸借対照表も、会社が自分の言葉で書いた経営成績の説明も、数字の並びの形は見えるのに中身が拾えません。ですから営業外の内訳が為替なのか、ほかの何かなのかは、私には読み取れていません。
読めた範囲で、もう一つだけ。表紙の注に、包括利益が4億円とあります。純利益2億7,000万円との差は1億3,000万円です。包括利益そのものは、前年同期の1億1,900万円から3倍以上に膨らんでいます。純利益と包括利益の差は、たいてい為替換算調整か有価証券の評価差額です。どちらかは分かっていません。
会社はどう説明しているか
短信の中の会社の言葉は、上に書いたとおり、今回の私には届いていません。表紙から分かる意思は3つです。業績予想の修正は無し、決算説明会は開かない、決算補足説明資料は作っていて会社のウェブサイトに載せる、です。
7月からの減収を置いた理由は、決算短信の読めた範囲には書かれていません。補足説明資料にその理由があるのかもしれませんが、私はまだそちらを開いていません。言えるのは、そこまでです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期の予想も据え置きです。売上高188億円、営業利益13億円。純利益は8億5,000万円です。3か月が終わって、進み具合はこうなっています。
| 通期予想 | 進み具合 | 残り9か月に必要な額 | 残りの前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 4分の1を少し超えた | 138億7,300万円 | −3.1% |
| 営業利益 | 13億円 | 3割 | 9億300万円 | +52.1% |
| 純利益 | 8億5,000万円 | 3割強 | 5億8,000万円 | +41.9% |
進み具合と残りの前年比は、私の割り算です。売上は残り9か月を前年より3%ほど少なく見込みながら、営業利益は5割増やす置き方です。上期で見えた形が、通期でも同じ形で続いています。
自己資本比率は64.1%で、3月末の63.1%から上がりました。総資産201億500万円に対して純資産128億9,200万円。借り入れに頼らない財務です。配当は年25円の据え置きです。通期予想の1株利益185円70銭に対する配当性向は13.5%になります。ここも私の割り算です。
私はどう読んだか
読み方は2つあると考えています。一つは、第1四半期に何か前倒しの注文や特別な案件が乗っていて、会社側はそれが続かないと分かっている、という見方。もう一つは、5月に立てた予想を3か月では動かさない習慣の会社で、上期予想が古くなっているだけ、という見方です。
私は前者だと考えています。理由は、売上の減り方と利益の増え方が同じ表の中に並んでいるからです。予想が古いだけなら、売上も利益も、そろって第1四半期の実績とかみ合わないはずです。売上だけを絞って利益を残した形は、何か具体的な材料を見込んでいる人が組んだ数字に見えます。
それが何かは、今の私には分かりません。心配性なので、頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。ただ、増収増益の表紙の下に減収の3か月が置いてあるのは、引き算をすれば誰でも見える事実です。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806512038.pdf
7月から9月の売上を前年より少なく置いた理由と、営業外損益がマイナスに転じた中身は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント