東京エレクトロン(8035)第1四半期決算分析――業績予想の欄にある1兆6,200億円は、通期ではなく中間期までの数字だった

東京エレクトロン(8035)第1四半期決算分析――業績予想の欄にある1兆6,200億円は、通期ではなく中間期までの数字だった 決算を読む

はじめに

東京エレクトロンは、半導体を作るための機械を作っている会社です。半導体そのものではなく、それを製造する装置のほうです。シリコンのウエハーに薬液を塗る装置、回路を彫る装置、膜を付ける装置。半導体工場を建てる会社――データセンターを増やしたい事業者のために半導体を量産する側の会社――が、工場に据え付けるために買っていきます。

つまりこの会社の売上は、半導体メーカーが「これから作る量を増やそう」と決めたときに立ちます。半導体の需要そのものより一歩手前、設備投資の温度が直接出てくる場所です。

2026年7月30日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。数字は派手でした。ただ、私が引っかかったのは数字の大きさではなく、予想の欄の作りのほうでした。

この決算で何が起きたか

まず業績の表です。

項目今回前年同期増減率
売上高732,388549,586+33.3%
営業利益211,407144,694+46.1%
経常利益215,626147,347+46.3%
純利益164,341117,801+39.5%

(単位:百万円)

売上が3割増え、営業利益は5割近く増えました。前年同期はどちらも減っていた四半期なので、はっきり切り返しています。営業利益率は前年同期の26.3%から28.9%へ上がりました。売上の伸びより利益の伸びが大きい、教科書どおりの形です。

最初の表では分からなかったこと

予想の欄に印字されているのは、中間期までの数字

1ページ目の業績予想の欄には、売上高1,620,000百万円という数字が印字されています。この並びだけを見ると通期予想に見えます。違いました。欄の見出しは「第2四半期(累計)」で、1兆6,200億円は2026年9月までの中間期予想です。通期の予想は「中間期の決算発表時に開示する予定」と書かれていて、この短信には存在しません。

だから進捗率の計算も分母が変わります。機械的に出すと売上の進みは45.2%ですが、これは中間期予想に対する数字です。中間期の半分、つまり3ヶ月分としてなら、半分近くまで来ているのは速いのではなく、むしろ後半に伸びる前提です。中間期予想から今回を引くと――これは私が引き算した数字です――残り3ヶ月で887,612百万円。今回の732,388百万円より多く売る計画になっています。

……予想を引き上げておいて、なお後半のほうが重い。強気だ。

純利益の伸びだけ一段低い理由は、前年の特別利益にあった

営業利益は+46.1%なのに、純利益は+39.5%。この差の理由は9ページ目にありました。前年同期には付加価値税還付金4,849百万円が特別利益に入っていて、今回はそれがありません。今回の特別利益は15百万円、ほぼゼロです。つまり本業の伸びは営業利益の側が正しく、純利益の伸びが見劣りするのは前年に一時的な上乗せがあったからです。悪い話ではなく、前年のほうに下駄がありました。

現金の動き

キャッシュ・フローも見ておきます。

項目今回前年同期
営業CF118,74574,955
投資CF△38,520△54,178
財務CF△178,477△151,134

(単位:百万円)

営業キャッシュ・フローは前年同期から大きく増えました。ただ、純利益164,341百万円には届いていません。棚卸資産が36,269百万円増え、法人税等の支払が100,184百万円あったためです。装置の会社は作ってから納めるまでが長いので、伸びる局面で仕掛品が積み上がるのは仕方がない面があります。実際、貸借対照表では仕掛品が半年前の210,570百万円から240,417百万円へ増えています。

一方で前受金も270,491百万円から294,326百万円へ増えました。装置が納まる前に、客の金が先に入ってきている。棚卸資産の増加を在庫リスクと読むか、受注の裏付けと読むか。前受金が一緒に増えているぶん、後者の材料もある、というのが5ページ目まで読んだ感想です。

7月28日に熊本で地震があった

もう1つ、5人の数字の議論には出てこなかった話です。短信の4ページ目に、2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震について、事業所の建物・設備に大きな損害は確認されておらず、業績への影響は軽微と判断している、と書かれています。発表の2日前の出来事です。熊本は半導体関連の集積地なので、会社が自分から触れたのだと思います。「現時点において」という限定付きであることは、そのまま受け取っておきます。

会社はどう説明しているか

会社は4ページ目で、データセンター向けAIサーバーの需要拡大が半導体市場全体の成長を牽引し、AI用途の半導体向け設備投資が顕著に伸長した、と書いています。そのうえで中間期予想と中間配当の予想を、次のとおり引き上げました。

項目修正前修正後
売上高(百万円)1,570,0001,620,000
営業利益(百万円)431,000458,000
中間配当(円)361384

配当は業績連動で、配当性向50%目処と明記しています。

説明としては筋が通っています。前受金の増え方とも整合します。ただし、この会社は半導体製造装置の単一セグメントです。事業の内訳は開示されておらず、AI向けがどれだけを占めるのかは短信からは分かりません。

中間期予想に対して、どこまで来ているか

繰り返しますが、通期予想はまだ出ていません。会社が示したのは9月までです。予想を出さなかったのではなく、この会社は毎期この形なのかどうか――今回が初めて読む決算なので、そこは分かりません。分かっているのは、会社が示した範囲では上方修正と増配で、期末配当と通期は未定のまま、ということです。読者としては、この決算の良さは中間期という半分の窓から見た良さだ、という点だけ覚えておけば足ります。

私はどう読んだか

私は良いほうに寄せて読んでいます。理由は、利益率が上がっていること、前受金という「客が先に払った金」が増えていること、そして会社が予想と配当を同時に引き上げたことの3つが同じ方向を向いているからです。純利益の伸びが見劣りする理由も、前年の一時的な特別利益で説明が付きました。

ただ、残り3ヶ月に今回以上の売上を置く計画であることと、通期の絵がまだ無いことは残ります。設備投資は客の都合で急に止まる種類の需要です。私の読み違いかもしれません。半年後の中間決算で、通期予想がどんな数字で出てくるかを見ます。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260730/140120260630584086.pdf

通期の業績予想と期末配当、そしてAI向けが売上のどれだけを占めるのかは、この短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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