はじめに
ゴールドクレストは、首都圏を軸にファミリー向けの新築分譲マンションを作って売る会社です。土地を仕入れて、建物を建てて、住みたい人に一戸ずつ引き渡す。買うのは投資家ではなく、そこに実際に住む人たちです。ほかに、持っている物件を貸す賃貸、管理を請け負う管理、ホテルの運営もありますが、売上の8割は分譲です。
マンション分譲という商売は、数字の出方に癖があります。何年もかけて土地を仕入れて建てて、引き渡した瞬間にまとめて売上になる。だからひとつの四半期の数字だけ見て良い悪いを言うと、だいたい間違えます。今回の短信は、その癖がかなり極端な形で出ていました。7月31日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 17,143 | 10,758 | +59.4% |
| 営業利益 | 8,868 | 3,819 | +132.2% |
| 経常利益 | 8,494 | 3,715 | +128.6% |
| 純利益 | 5,822 | 2,496 | +133.2% |
(単位:百万円)
売上が6割増え、利益は軒並み2倍以上。営業利益率は前年同期の35.5%から51.7%まで上がりました。不動産分譲の会社で、売上の半分が営業利益として残る。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない数字です。
最初の表では分からなかったこと
引渡は21戸しかない
引っかかったのは、最後の10ページ目、補足情報の表です。
| 新築マンション等分譲事業 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 引渡戸数 | 130戸 | 21戸 |
| 引渡金額 | 8,361百万円 | 1,484百万円 |
今回のマンション引渡は21戸、1,484百万円です。前年の130戸から大きく減っています。
ところが、セグメント情報の不動産分譲事業の売上は13,990百万円です。引き算すると12,506百万円――これは私が引き算した数字です――が、引渡実績の表に載っていない何かで立っている。前年同期は分譲売上8,361百万円に対して引渡も8,361百万円で、ぴったり一致していました。今回はまるで一致していません。
短信のどこを読んでも、この12,506百万円が何なのかは書かれていません。「新築マンション等」の表に載らない売上、たとえば一棟単位の売却や土地の売却が考えられますが、それは私の推測であって、短信の文章ではない。貸借対照表を見ると、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて3ヶ月で3,802百万円ほど減っています(これも私の引き算です)。在庫が売上に変わったこと自体は確かですが、誰に、何を、どういう形で売ったのかは分かりません。
51.7%という営業利益率も、たぶんこの「表に載らない売上」の中身次第だ。……マンションを一戸ずつ売って出る利益率ではない気がする。
支払利息が2倍を超えた
営業利益+132.2%に対して、経常利益は+128.6%と、少しだけ伸びが削れています。理由は損益計算書の営業外費用にありました。支払利息が前年同期の230百万円から518百万円へ増えています。2倍を超える増え方です。長期借入金は168,400百万円。借入の残高はほぼ横ばいなので、増えたのは金利の側だと読むのが自然ですが、短信はそこも説明していません。
期中契約高は減っている
10ページ目には契約の表もあります。
| 新築マンション等分譲事業 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 期中契約高 | 86戸 / 7,422百万円 | 45戸 / 3,744百万円 |
| 契約残高 | 141戸 / 11,026百万円 | 303戸 / 28,608百万円 |
契約残高は28,608百万円まで積み上がっていて、これは今後の引渡の予約帳のようなものですから、心強い数字です。一方で、この3ヶ月に新しく取れた契約は45戸、3,744百万円と、前年の半分程度に減っています。残高が厚いのは過去の蓄積で、足元の新規は細い。両方が同じページに印字されています。
なお、キャッシュ・フロー計算書は第1四半期なので作成されていません。現金及び預金は58,423百万円から63,175百万円へ増えていますが、その中身の分解はできませんでした。
会社はどう説明しているか
会社の説明は、建設費の高騰で販売価格が上がり供給戸数は低水準、住宅ローン金利の上昇で慎重な動きも見られるが、実需層の需要は堅調――という市場の話と、「利益の見込める用地を選別して取得」し「都心部を中心に高品質で競争力の高い新築分譲マンションを供給してきた」結果この業績になった、というものです。
嘘だとは思いません。ただ、引渡21戸でこの売上と利益率になった経緯の説明としては、足りていないと思います。1ページ目は嘘をつかない。ただ、全部は言わない。今回はその「言っていない部分」がいつもより大きい短信でした。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は5月14日発表のまま据え置きです。
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 42,000 | 40.8% |
| 営業利益 | 15,900 | 55.8% |
| 経常利益 | 14,200 | 59.8% |
| 純利益 | 9,500 | 61.3% |
(単位:百万円)
3ヶ月で、純利益は通期の6割を超えました。この時期の目安が4分の1だとすれば、異例の進み方です。残り9ヶ月に必要な純利益は3,678百万円で、これは前年の同じ9ヶ月より1割弱多い程度。契約残高28,608百万円が控えていることを考えると、無理のある残り方には見えません。それでも会社は予想を動かしませんでした。マンション分譲は引渡の時期で四半期の数字が大きく振れる商売なので、第1四半期に売上が前倒しで固まっただけ、という読み方もできます。
配当は年160円の予想で、こちらも変更なしです。
私はどう読んだか
読み方は2つあります。通期予想が保守的すぎるという読み方と、第1四半期に大型の売却が集中しただけで、年間で均せば予想どおりに落ち着くという読み方です。私は後者に寄せて読んでいます。理由は、引渡実績と分譲売上の12,506百万円の落差です。この売上は毎四半期繰り返される種類のものには見えず、そして会社自身が予想を据え置いた。会社がいちばん中身を知っているはずで、その会社が動かさなかったことを、外の私が軽く見るべきではないと思っています。読み違えかもしれません。次の四半期で、あの落差がもう一度出るかどうかを見ます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260722597243.pdf
分譲売上13,990百万円のうち、引渡実績の表に載らない12,506百万円が何の売却だったのかは、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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