任天堂(7974)第1四半期決算分析――売上が減って利益が2.5倍。その理由の一つに、金額が書かれていない

任天堂(7974)第1四半期決算分析――売上が減って利益が2.5倍。その理由の一つに、金額が書かれていない 決算を読む

はじめに

任天堂は、ゲーム機とゲームソフトを自分で両方作っている会社です。Nintendo Switch 2 という機械を売り、その上で遊ぶソフトを売り、最近は映画やキャラクター商品でも稼いでいます。売上の8割近くが海外で、外貨建ての資産を大量に持っているので、為替が動くと利益の数字も動きます。

子どもがいる家なら、居間のテレビの下にこの会社の製品がある確率はかなり高いはずです。うちにもあります。娘はまだ5歳なので、遊んでいるのはほぼ私ですが。

8月6日に出た2027年3月期の第1四半期決算です。1ページ目を見た瞬間に、変な形をしていました。売上が1割減っているのに、営業利益が2.5倍になっている。この形の理由を探しに、後ろのページまで行きました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高517,813572,363-9.5%
営業利益142,59656,928+150.5%
経常利益206,15095,822+115.1%
純利益147,42396,032+53.5%

(単位:百万円)

売上は1割近く減りました。営業利益は2.5倍。営業利益率でいうと、前年同期の9.9%から27.5%へ跳ねています。同じ会社の同じ四半期とは思えない変わり方です。

最初の表では分からなかったこと

売上原価が、大きく減っていた

6ページ目の損益計算書を見ると、答えの場所はすぐ分かります。売上原価が、前年同期の387,208百万円から236,417百万円へ減っていました。差し引くと約1,500億円の減少です(これは私が引き算した数字です)。売上の減り方は約545億円ですから、売上が減った分をはるかに超えて、原価が減っている。利益が跳ねた理由の大部分はここです。

原価が減った理由として、会社は4ページ目で2つ挙げています。ソフトウェアの販売が堅調で、売上に占める割合が上がったこと。ハードは原価が重く、ソフトは軽いので、ソフトの比率が上がると原価率は下がります。デジタル売上高は1,327億円で前年同期の9割増、と会社自身が書いています。ここまでは、商売の中身が良くなった話です。

もう一つが、引っかかった箇所です。

関税の還付。ただし、金額が書かれていない

4ページ目の説明文に、こうあります。「売上原価として計上していた米国IEEPAに基づく関税の還付を受けた」。払っていた関税が戻ってきて、それが原価を押し下げた、ということです。

金額は、短信のどこにも書かれていません。

……いや、これは困る。1,500億円の原価減少のうち、ソフト比率の改善という続く話がいくらで、関税還付という戻ってこない話がいくらなのか、この短信からは切り分けられません。営業利益率27.5%という数字を「新しい実力」と読んでいいのかどうかが、ちょうどこの切り分けにかかっているのに、その材料が無い。

純利益の増え方が鈍いのは、前年が膨らんでいたから

営業利益が2.5倍なのに純利益が5割増にとどまる理由も、6ページ目にありました。前年同期には投資有価証券売却益が32,300百万円ありました。今回はゼロです。前年の純利益のほうに一時的な持ち上げが入っていた、という話で、今回の悪材料ではありません。

キャッシュ・フロー計算書は、作成されていない

私はいつもキャッシュ・フロー計算書まで読みに行くのですが、この短信には無いことが8ページ目の注記に明記されています。第1四半期では作成していない、と。制度上おかしいことではありません。ただ、貸借対照表の主な項目は、この3ヶ月でこう動いています。

項目3ヶ月前今回
現金及び預金1兆7,918億円1兆5,440億円
棚卸資産5,398億円6,180億円
流動資産の「その他」1,056億円2,285億円

現金が減り、在庫とその他が増える。年末商戦に向けた作り込みの形に見えますが、現金の動きの内訳は、この短信では追えませんでした。

会社はどう説明しているか

会社の説明は一貫して「ソフトが強かった」です。5月と6月に出した自社タイトルが堅調、Switch 2 でも旧Switchのソフトが遊べるので過去のタイトルも安定して売れた、デジタル売上が9割増、映画のヒットでIP関連収入も倍増。そのうえで、関税の還付「など」により営業利益が増えた、という書き方です。

ソフトが強かったこと自体は、数字の裏付けがあるので受け取ります。ただ、還付の金額を伏せたまま「など」でまとめる書き方には、留保をつけます。利益が2.5倍になった決算で、その構成要素の一つだけ金額が無いのは、読み手として据わりが悪い。

通期予想に対して、どこまで来ているか

会社は5月に出した通期予想を据え置きました。

項目通期予想進捗率
売上高2,050,00025.3%
営業利益370,00038.5%
経常利益430,00047.9%
純利益310,00047.6%

(単位:百万円)

売上は4分の1で、ちょうど計画どおりの歩みです。ところが純利益は3ヶ月で半分近くまで来ています。予想を据え置いたということは、残り9ヶ月の純利益は前年の同じ期間から半減する置き方になっている、ということです(機械の計算では50.4%減)。

年末商戦を控えたゲーム会社が第1四半期の好調だけで予想を上げないのは、この会社に限らずよくあることです。それでも、進捗5割弱で据え置きという形は、会社自身が「この四半期の利益率は続かない」と見ている、と読むのが素直だと思います。関税還付が一度きりなら、なおさらです。

私はどう読んだか

読み方は2つあります。ソフトとデジタルの比率上昇で利益体質そのものが変わった、と読むか。一時的な還付と前年の反動で数字が派手に見えているだけ、と読むか。

私は後者寄りに読んでいます。理由は、会社自身が通期予想を1円も動かさなかったからです。営業利益率27.5%が実力なら、この据え置きは説明がつきにくい。ソフトが強いのは本当だと思いますが、この四半期の利益率をそのまま先へ延ばすのは危ないと見ました。還付の金額が分からない以上、切り分けは私の読み違いかもしれません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260803507617.pdf

米国IEEPAに基づく関税還付の金額は、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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