東日本旅客鉄道(9020)2027年3月期 中間決算分析――退職給付の行き先が気になりました

東日本旅客鉄道(9020)2027年3月期 中間決算分析――退職給付の行き先が気になりました 日本株

首都圏の電車と、駅の中の商売

東日本旅客鉄道は、関東から東北にかけて鉄道を走らせている会社です。朝の通勤電車、出張の新幹線、改札でかざすICカード。首都圏に住んでいれば、この会社の何かに触れない日のほうが少ないと思います。

稼ぎ方は電車だけではありません。駅の中の売店や飲食店、駅ビルやオフィスの賃貸、ホテル、カードの決済も、このグループの仕事です。人が駅を通るたびに、運賃と買い物の両方でお金が落ちる作りになっています。私も埼玉から毎朝乗っていますが、運賃のほかにいくら払っているのかは、考えたことがありませんでした。

上期は、四つの利益がそろって前年を上回りました

10月30日に出た中間決算です。4月から9月までの半年分になります。

項目今回(上期)前年同期増減率
売上高1兆5,853億7,200万円1兆4,630億9,600万円+8.4%
営業利益2,629億600万円2,314億7,900万円+13.6%
経常利益2,301億3,800万円1,989億2,900万円+15.7%
純利益1,519億9,800万円1,472億2,700万円+3.2%

営業利益の伸びが売上の伸びを上回り、利益率も上がっています。純利益だけが、わずかな伸びにとどまりました。

増益分は、電車だけでまかなえていた

短信の9ページ目に、事業ごとの利益の表があります。前年同期と並べると、こうなります。

事業今回のセグメント利益前年同期
運輸1,775億2,900万円1,432億2,400万円
流通・サービス322億800万円315億4,400万円
不動産・ホテル412億2,600万円478億3,600万円
その他118億600万円86億1,200万円

運輸の利益は、今回が1,775億2,900万円、前年同期が1,432億2,400万円です。差し引きで343億500万円増えています。会社全体の営業利益は、今回が2,629億600万円、前年同期が2,314億7,900万円です。増加分は314億2,700万円になります。運輸の増加分だけで、全体の増加分を上回っています。

引っかかったのは不動産・ホテルです。売上は増えたのに、利益は1割以上減りました。駅ビルや賃貸は伸びている事業だと思い込んで開いたので、ここは予想と逆でした。なぜ減ったのかは、決算短信には書かれていません。

純利益の伸びを小さくしたのは、前年の株式売却益

営業利益が1割以上伸びたのに、純利益の伸びは小さい。損益計算書をたどって、その伸びを削っている行を拾い出しました。

項目今回前年同期
投資有価証券売却益77億8,800万円229億1,300万円
固定資産除却損98億3,000万円7億8,300万円
支払利息464億6,600万円399億9,300万円

いちばん大きいのは投資有価証券売却益です。前年の上期は、保有株を売った利益で膨らんでいました。固定資産除却損も、前年の10倍を超えています。ここまでは損益計算書の数字です。

この2つは毎年同じ額で出るものではありません。純利益の伸びが小さいのは本業の衰えではなく、前年との比べ方の問題だ、と私は考えました。

支払利息は性質が違います。前年より64億7,300万円増えました。こちらは一度きりの費用ではありません。

退職給付の負債が、半年で4,000億円近く減っていた

貸借対照表の負債の部で、ひときわ大きく動いた行がありました。退職給付に係る負債が、半年で4,787億9,700万円から803億6,900万円へ減っています。

従業員に将来払う退職金や年金のために積んでいた負債です。それが8割以上減っています。……いや、これだけの額を半年で払ったのなら、手元の現金がもっと減っているはずだ。

手がかりは、キャッシュ・フロー計算書の営業の部にありました。退職給付に係る負債の減少として3,994億6,400万円を差し引き、すぐ下で「退職給付制度移行に伴う未払金の増減額」として3,487億9,600万円を足し戻しています。差し引いた額のほとんどを足し戻しているので、現金はその分ほどは出ていっていません。

貸借対照表に戻ると、固定負債の「その他」が3,243億8,700万円から6,510億4,000万円へ膨らんでいます。退職給付の制度を別の形に移し、その分を未払金として抱え直した、と私は受け取りました。負債は消えたのではなく、呼び名を変えて「その他」の中に入っている、という見方です。

どの制度からどの制度へ移したのか、移行で損益にどれだけ影響が出たのかは、決算短信には書かれていません。損益計算書にも、移行の名の付いた行は見当たりませんでした。

稼いだ現金より、設備に使った現金が多い

前年と並べても、同じ形です。

今回前年同期
営業キャッシュ・フロー2,830億100万円2,912億3,500万円
投資キャッシュ・フロー△4,905億5,400万円△4,880億2,000万円
財務キャッシュ・フロー2,146億4,900万円1,035億9,900万円

本業で入ったのは2,830億100万円、投資で出ていったのは4,905億5,400万円です。引き算すると、2,075億5,300万円足りません。この差を、社債の発行で得た2,128億500万円などで埋めています。

鉄道は設備の商売なので、これ自体は珍しくありません。ただ、借りる額が増えれば利息も増えます。先ほどの支払利息の増加は、ここにつながっていると考えています。

短信の中で、会社が自分の言葉で書いたこと

この決算短信には、業績が伸びた理由を説明した文章が載っていません。表紙の注記は、業績予想について決算補足説明資料を見るよう案内しています。11月2日にアナリスト向けの説明会を開くとも書いてありますが、その資料はまだ開いていません。

会社が言葉を尽くしているのは2か所です。1つは事業区分の組み替えで、海外の子会社を「流通・サービス」から「その他」へ移しました。前年同期の数字も組み替え後の区分で並んでいるので、比べるのに支障はありません。

もう1つは、決算日のあとの出来事です。10月1日に、子会社のJR東日本不動産と伊藤忠商事グループの伊藤忠都市開発を合併させ、統合会社の議決権の60%を取得しました。沿線の土地を持つ側と分譲住宅を手がける側を合わせ、総合デベロッパーとして伸ばす、と書いています。のれんの額も、受け入れた資産の額も「現時点では確定しておりません」とあります。

不動産・ホテルが減益だった半年の直後に、不動産を大きくする手を打ったことになります。説明はそのまま受け取りますが、効果は数字が出るまで保留します。

通期予想に対して、利益は半分を超えている

表紙には、直近の業績予想から修正した、とあります。修正前の予想は短信に載っていないので、どちらへ動かしたのかはここでは分かりません。配当予想も修正されていて、年間88円です。前期は74円でした。

項目通期予想上期の実績進捗率下期に要る額下期の前年比
売上高3兆3,580億円1兆5,853億7,200万円約47.2%約1兆7,726億2,800万円約+9.4%
営業利益4,500億円2,629億600万円約58.4%約1,870億9,400万円約+2.3%
経常利益3,780億円2,301億3,800万円約60.9%約1,478億6,200万円約△3.2%
純利益2,650億円1,519億9,800万円約57.4%約1,130億200万円約+12.3%

約の付いた数字は、通期予想と上期の実績から私が引き算・割り算したものです。下期の前年比は、表紙の予想と増減率から前期の通期実績を割り戻し、そこから前年の上期を引いた前年の下期と比べています。

利益はどれも半分を超えています。それでも下期の経常利益は、前年の下期を少し下回る見込みです。上期の伸びを下期には持ち越さない前提になっています。

私はどう読んだか

私は、運輸で稼ぐ力が上がった決算だと考えています。理由は、営業利益の増加分を運輸だけで上回っているからです。純利益を削ったのも前年の株式売却益の反動と除却損で、どちらも毎年は出ない項目です。

心配性なので、気になる点も残ります。支払利息は毎期出ていく費用で、投資が稼ぎを上回る形が続く限り増えていきます。下期の経常利益を前年より低く見込んでいるのは、利息の重さを織り込んだ結果かもしれません。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

Access Denied

退職給付の制度を何から何へ移したのか、その移行が損益にどれだけ響いたのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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