はじめに
東京エレクトロンは、半導体工場に据え付ける装置を作っている会社です。シリコンの円盤に薬液を塗って回路の型を焼き付ける装置があります。不要な部分を削る装置、薄い膜を重ねる装置、出来上がったチップを一つずつ検査する装置もあります。買うのは半導体メーカーで、生産量を増やすと決めたときに注文が入ります。
いま工場を増やしているのは、生成AIを動かすデータセンター向けの半導体です。計算を受け持つチップだけでなく、計算途中のデータを置いておくメモリも足りなくなっています。どちらの工場にも装置が要ります。半導体の売れ行きより一歩手前の、設備投資の勢いがそのまま出てくる会社です。
8月17日の前の記事では、7月30日に出た第1四半期の決算を取り上げました。予想の欄が通期ではなく中間期までの数字だったことに引っかかりました。そのうえで、中間決算で通期予想がどう出てくるかを確かめる、と書いて終えています。熊本の地震の影響を会社が「軽微」としていた点にも触れました。
今回は、2026年10月30日に出た2027年3月期の中間決算です。ここで、通期の予想が出ました。
中間期の予想を、売上も利益も上回った
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆6,674億5,500万円 | 1兆1,796億6,800万円 | +41.3% |
| 営業利益 | 5,067億7,600万円 | 3,031億5,300万円 | +67.2% |
| 経常利益 | 5,144億100万円 | 3,068億9,600万円 | +67.6% |
| 純利益 | 3,769億2,900万円 | 2,416億2,600万円 | +56.0% |
売上は4割増え、営業利益は7割近く増えました。
7月に会社が出していた中間期の予想は、売上高1兆6,200億円でした。結果はそれを上回っています。前の記事では、後半の3か月に前半より多く売る計画を「強気だ」と書きました。実際には、計画のほうが控えめだったことになります。説明会資料の数字では、7〜9月の売上高は9,350億円で、四半期として過去最高です。
熊本地震の損失が、特別損失の欄に入っていた
前回の短信で、会社は7月28日の令和8年熊本地震について、業績への影響は「現時点において」軽微だと書いていました。その「現時点」から3か月が過ぎています。
今回の短信の損益計算書を見ると、特別損失の中に「災害による損失」という行がありました。前年同期には無かった行です。注記によると、中身は主に熊本地震による建物や生産・開発設備の原状回復と、在庫の廃棄です。すでにかかった費用と、現時点での見積りの費用が含まれています。
この行の金額は、手元の短信の文字からは読み取れませんでした。そこで、大きさの見当を別の数字から付けます。経常利益は5,144億100万円です。説明会資料の数字では、上期の税金等調整前当期純利益が5,077億円です。差はおよそ67億円で、特別損益をまとめた正味の額になります。これは私の引き算です。
同じ資料で見ると、第1四半期は経常利益と税引前の利益がほぼ同じでした。ですから、この差は地震のあった7〜9月に生じたものです。ほかの特別損益も混ざった数字ですが、上期の営業利益5,067億円と比べれば1%を少し超える程度です。「軽微」という言い方は、規模の面では崩れていません。
もう一つ、地元の工場の話があります。説明会資料によると、塗布現像装置と洗浄装置の事業は熊本の工場が拠点です。この事業の上期の売上高は、前年の下期より5割以上増えました。
……地震のあった半年に、地震の地元の工場が伸びていた。
在庫が増えないまま、売上が過去最高になった
前の記事では、棚卸資産の積み上がりを、悪い材料と受け取るか、受注の裏付けと受け取るかを考えました。今回はその続きに答えが出ています。
説明会資料の数字では、9月末の棚卸資産は7,474億円で、前の四半期より40億円減りました。売上が過去最高の四半期に、在庫は増えていません。前に作り溜めていた装置が、そのまま出荷に回ったことになります。7〜9月の営業キャッシュ・フローは3,511億円でした。短信の説明でも、現金が入った理由の一つに前受金の増加が挙がっています。
売上債権は増えていますが、売上が増えれば売掛金も増えます。ここは心配していません。
会社の説明は、データセンターと納期の前倒し
短信で会社は、これまで出していなかった通期予想を、顧客の最新の設備投資の動きを踏まえて公表すると書いています。理由として挙げているのは、データセンター向けAIサーバーの需要拡大です。
説明会資料ではもう一歩具体的に話しています。顧客から納期の前倒しや追加購入の要請が続いていること、下期に2兆円を超える売上を作る生産能力は確保済みであることです。メモリの一種であるDRAM向けの新規装置は、前四半期比で45%増えました。
説明そのものは数字と合っています。ただ、気になる点が一つあります。説明会資料では、7〜9月の売上のうち中国向けが36.4%を占めました。一方で会社は、通期の中国向けを30%台前半と見込んでいます。下期には中国の比率が下がり、ほかの地域が伸びを引き受ける前提です。
下期の営業利益は、前年の下期のほぼ倍
| 項目 | 通期予想 | 上期実績 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆7,000億円 | 1兆6,674億5,500万円 | 約45.1% |
| 営業利益 | 1兆1,690億円 | 5,067億7,600万円 | 約43.4% |
| 純利益 | 8,650億円 | 3,769億2,900万円 | 約43.6% |
約の付いた数字は、上期の実績を通期予想で割って出したものです。
折り返しの時点で、どの利益も半分に届いていません。下期を重く見込んだ予想です。下期の売上は、3兆7,000億円から上期の1兆6,674億5,500万円を引いて出します。答えは2兆325億4,500万円です。説明会資料にも同じ額が下期の予想として載っています。
下期の営業利益は、通期予想から上期の実績を引いて6,622億円になります。説明会資料にある前年の下期は3,217億円なので、ほぼ倍になります。純利益の伸びが4割台にとどまるのは、前年の下期に税引前の利益4,351億円が営業利益を大きく上回っていたためです。その上乗せが何だったのかは、今回の短信と説明会資料の中では見つけられませんでした。
配当は、分割前の株数で中間415円です。7月に出ていた予想の384円から、さらに上積みされました。10月1日に1株を5株に分けたため、期末の予想は分割後の108円で出ています。
私はどう読んだか
私はこの決算を良い内容だと考えています。理由は、前回気にしていた三つの点が、今回の決算でどれも悪い方向に転ばなかったからです。中間期の予想は上回りました。在庫の増加は止まり、現金が戻りました。地震の損失は利益の1%強に収まり、地元の工場は伸びています。
残る心配は下期の重さです。営業利益を前年の倍にする計画で、しかも中国の比率が下がる前提です。設備投資は客の都合で急に止まります。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.tel.co.jp/ir/library/report/kuoaek00000000iu-att/fy27q2tanshin-j.pdf
災害による損失そのものの金額と、見積りの費用が下期に増えるのかどうかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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