はじめに
ジャフコは、まだ上場していない会社にお金を出すベンチャーキャピタルです。銀行や事業会社から資金を集めてファンドをつくり、創業まもない会社の株を買います。後継ぎのいない会社を丸ごと買い取る投資もしています。投資先が上場したり、別の会社に買われたりしたときに株を手放し、そこで利益を得ます。
ファンドを運用する手数料も、毎年受け取ります。出資する側から見ると、自分では目利きできない若い会社に、まとめてお金を預ける手段です。起業する側から見ると、銀行がまだ貸してくれない段階で資金を出してくれる相手です。
アジアと米国の運用会社はすでに譲渡し、いまは国内の投資に絞っています。今回いちばん引っかかったのは、この「譲渡したあと」の話でした。
比べる相手のない半年
2026年10月28日に出た中間決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 59億6,800万円 | — | — |
| 営業利益 | 15億7,000万円 | — | — |
| 経常利益 | 14億9,800万円 | — | — |
| 純利益 | 14億8,800万円 | — | — |
前年同期の欄が空いているのは、昨年度の途中で連結決算から個別の決算に切り替えたためです。前年の中間期は個別の数字を作っていない、と短信の4ページ目に書いてあります。
この半年は、売却益より運用手数料のほうが大きかった
売上高は、投資先の株を売った代金と、ファンドから受け取る手数料の2つでできています。
| 中身 | 金額 |
|---|---|
| 投資先の株の売却代金など | 40億600万円 |
| うち売却原価・評価損を引いた残り(キャピタルゲイン) | 14億6,300万円 |
| ファンドの管理報酬 | 18億5,900万円 |
| ファンドの成功報酬 | 1億100万円 |
株を売って得た差益より、毎年決まって入る管理報酬のほうが大きくなっています。管理報酬を押し上げたのは、2025年12月に立ち上げたSV8シリーズです。この半年で、SV8からの報酬はもう3億5,200万円あります。
SV8の総額は688億円まで集まり、前回のSV7の978億円を上回る額を目標に、募集を続けています。集まるほど、運用手数料の土台は厚くなります。
税金が1,000万円で済んでいる
税引前の利益は14億9,800万円です。それに対して、法人税等の合計は1,000万円しかありません。法人税、住民税及び事業税の3億5,600万円を、法人税等調整額のマイナス3億4,500万円がほぼ打ち消しています。
このため、純利益が税引前の利益とほとんど同じ大きさになりました。ここまでは損益計算書の数字です。調整額がなぜこれだけ出たのかは、決算短信には書かれていません。
売った2社のファンドに、まだ371億円が入っている
13ページ目の注記に、他社が運営するファンドへの出資の内訳がありました。「他社」のほとんどは、譲渡したばかりの2社です。
| 出資先 | 前期末 | 今回 |
|---|---|---|
| JIF Capital運営ファンド | 166億6,500万円 | 184億7,200万円 |
| Icon Ventures運営ファンド | 182億4,100万円 | 183億9,300万円 |
| その他 | 3億1,200万円 | 2億8,900万円 |
| 合計 | 352億1,900万円 | 371億5,500万円 |
この371億5,500万円は、総資産1,590億6,200万円の2割強にあたります。これは私の割り算です。会社を手放しても、その会社が運用するファンドへの出資は残っています。
しかも、この半年のキャッシュ・フロー計算書には、「他社ファンドへの払込による支出」が32億5,500万円載っています。……売ったのに、まだ払っている。
払う約束の残りも、同じ注記にあります。
| 今後払う約束 | 前期末 | 今回 |
|---|---|---|
| JIF Capital運営ファンド | 42億700万円 | 15億5,200万円 |
| Icon Ventures運営ファンド | 42億100万円 | 34億6,900万円 |
表の今回の欄を2社分足すと、50億2,100万円になります。2社のファンドには、まだそれだけの額を払い込む約束が残っています。
もう1つ、損益の出る場所が変わりました。譲渡のあと、これらの出資から出る損益は売上高ではなく営業外で扱うようになった、と短信の5ページ目に書いてあります。今回の他社ファンド運用損は2億1,900万円で、営業外収益の合計1億5,500万円より大きくなっています。経常利益が営業利益を下回ったのは、これが理由です。
半年の利益の倍以上を、配当で払っている
この半年に払った配当は35億900万円です。純利益14億8,800万円の倍を超えます。その結果、繰越利益剰余金は519億1,100万円から498億9,500万円へ減りました。
これは方針どおりです。年間の配当は、自己資本の6%か、配当性向50%か、大きいほうで決めると書いてあります。利益が少ない年は、蓄えから配ることになります。自己資本比率は84.7%、現金及び預金は601億2,200万円あるので、無理をしている配当ではありません。
営業キャッシュ・フローは56億7,000万円のプラスでした。ただし、その中には前期末に残っていた未収入金の回収30億4,100万円が入っています。この半年の商売だけで生まれた現金ではない、と私は受け取りました。
会社はどう説明しているか
会社は、投資先の新規上場が2社あり、買収投資では1社の株式を譲渡した、と書いています。そのうえで、キャピタルゲインは前事業年度の水準を下回り、成功報酬も株を手放す機会が少なかったので下回ったと説明しています。管理報酬はSV8の運用開始で上回った、とあります。
前年同期が無いかわりに、半年の数字を2倍して前期と比べた表が載っています。キャピタルゲインは前期の3割ほど、管理報酬は2割ほど上回る、という比べ方です。説明そのものは数字と合っています。
留保は1つです。この会社の売却益は、どの半年に上場が重なるかで大きく振れます。半年を2倍する比べ方は、管理報酬には合っていても、売却益にはあまり合いません。
業績予想は出していない
株式市場と新規上場市場の影響が大きく、業績予想は合理的に出せないので出さない、と短信に書いてあります。進捗率は作れません。
かわりに会社が示しているのは、配当です。年間133円を「最低額」として出しています。利益の見通しは出さず、配当の下限だけを約束している形です。
四半期ごとの流れは分かります。第1四半期の純利益は5億6,400万円でした。中間期の純利益14億8,800万円からこれを引くと、7月から9月の3か月で9億2,400万円を稼いだことになります。
私はどう読んだか
私は、この決算を良いほうに見ています。売却益が細った半年を、運用手数料が支えた決算だと考えています。理由は、管理報酬が売却益を上回り、しかもSV8の募集がまだ続いているからです。
そのうえで、心配性なので2つ頭に置いておきます。1つは、純利益が税金の調整で税引前とほぼ同じ大きさになっていることです。もう1つは、371億5,500万円の出資が、自分では運用していないファンドにあることです。その損益は営業利益の下に出るので、表紙の営業利益だけを追っていると気づきません。
上がるかは知りません。
出典
出典:決算短信(会社発表)

JIF CapitalとIcon Venturesのファンドへの出資を、今後どう扱うつもりなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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