人のように答える機械を、売る前に作っている会社
pluszeroは、AIを軸にしたシステムを顧客ごとに設計して納める会社です。製造業や情報通信業の顧客が自社の課題を持ち込み、相談から開発、納品後の保守までを一社に任せる。そういう請負・準委任の仕事が、売上の土台になっています。
もう一つ、自分で名前を付けた技術があります。「仮想人材派遣」という、使う側から見て人間が応対しているように感じられる対話システムです。特許を取ったこの技術を、業務提携先に技術情報やライセンスとして提供し始めています。
つまり、受託で稼いだ現金を自社技術の研究に回し、その研究をライセンスという形で売れるものに変える途中の会社です。短信の4ページ目には、その順序がそのまま書いてあります。この構図を頭に置いて読みました。
売上が2割弱、利益が3割近く増えた
9月9日に出た第3四半期決算です。表紙の数字だけなら、文句のつけようがない9か月でした。
| 項目 | 今回(9か月) | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 13億6,100万円 | 11億6,300万円 | +17.0% |
| 営業利益 | 5億900万円 | 3億9,300万円 | +29.4% |
| 経常利益 | 5億900万円 | 3億9,300万円 | +29.3% |
| 純利益 | 3億2,400万円 | 2億5,100万円 | +29.3% |
売上より利益の伸びが大きい9か月です。営業利益率は前年同期の33.8%から37.4%へ上がっています。数字そのものは表紙に載っていますが、なぜ上がったのかは、その先をめくらないと分かりません。
原価が、売上ほど増えていない
損益計算書は8ページ目です。売上原価は前年同期の4億8,888万円に対して、今回は5億2,400万円でした。売上が17%伸びたのに、原価の伸びは7%ほどです。
一方の販売費及び一般管理費は2億8,085万円から3億2,782万円へ増えました。伸びは売上とほぼ同じ17%ほどです。この二つの率は、私が損益計算書から割り出したものです。
利益率が上がった場所は、はっきりしています。販管費ではなく、売上原価の側です。ここまでは損益計算書の数字です。同じ人数で高い単価の仕事をしたか、単価の高い仕事に人を寄せたか、と私は読みました。
研究開発の一部が、資産に姿を変えていた
ここで引っかかったのが、5ページ目の一文です。研究開発活動である仮想人材派遣の一部について「将来の収益獲得が確実になった」ため、中核技術のN4とPSFの一部を資産計上した、と書かれています。貸借対照表では、ソフトウエアの残高が1億4,329万円から2億7,391万円へ増えました。差し引き1億3,061万円の増加です。
費用として落としていたものを資産に載せれば、その分だけ利益は増えて見えます。だから利益率の改善のうち、どこまでが単価で、どこまでが振り替えなのかを分けたくなります。ただ、資産に振り替えた金額そのものは、決算短信には書かれていません。
分けられないなりに、手がかりはあります。研究開発費は、ふつう販管費に入ります。その販管費が売上と同じ速さで増えていて、原価の側だけが鈍いままです。振り替えで利益率が上がったのなら、先に販管費が軽くなるはずです。
……いや、原価に研究開発の人件費が混ざっていれば話は別だ。そこは短信からは分かりません。
もう一つ、資産にした分はあとから費用として戻ってきます。9ページ目の注記で、減価償却費は前年同期の4,845万円から7,299万円へ増えています。資産計上で費用が消えるわけではなく、払い方が変わっただけです。来期以降はこの償却が費用として乗ってきます。
2億円で自社株を買って、それでも現金は増えた
この会社の第3四半期短信には、キャッシュ・フロー計算書がありません。非連結の四半期では作らなくてよいので、珍しいことではありません。現金の動きは、貸借対照表の増減から追うしかありません。
現金及び預金は、期首の11億9,376万円から12億6,036万円へ増えました。増えた額は6,660万円です。同じ9か月のあいだに、2026年3月11日の取締役会決議で自己株式88,800株を1億9,993万円で買っています。売掛金も2,592万円減っています。
約2億円を自社株に使い、ソフトウエアにも投じたうえで、手元の現金が増えた計算です。自己資本比率は84.9%で、貸借対照表に借入金の科目はありません。現金の裏付けについては、心配する場所が見当たりませんでした。
単価が上がった、と会社は書いている
4ページ目の説明はこうです。製造業と情報通信業の顧客向けにプロジェクト型の契約単価が順調に増えた結果、売上は堅調に推移した、とあります。あわせて、業務提携先への技術情報の提供やライセンス供与、AEIの基礎技術をAPI化した提供といったサービス型の役務を実施し、研究開発の商用化を順次進めている、とも書かれています。
単価の話は、原価の伸び方と合っています。ここは受け取ります。ただ、サービス型の売上がいくらなのかは、決算短信には書かれていません。単一セグメントなので内訳の表もなく、資産計上の根拠になった「収益獲得が確実」な契約が、どの相手との何なのかも分かりません。
残り3か月に、前年の7割増の売上が要る
通期予想は据え置かれました。売上高20億1,000万円、営業利益7億4,300万円です。9か月の進み具合は売上で67.7%、営業利益で68.5%です。第3四半期の目安にする75%に、どちらも届いていません。この進捗率は、私が通期予想で割ったものです。
| 項目 | 通期予想 | 残り3か月に必要な額 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 20億1,000万円 | 約6億4,900万円 | 約+69.5% |
| 営業利益 | 7億4,300万円 | 約2億3,400万円 | 約+90.8% |
| 純利益 | 4億7,500万円 | 約1億5,100万円 | 約+31.2% |
約の付いた数字は、通期予想から9か月の実績を引き、前年の同じ3か月と私が比べたものです。
8月から10月の3か月で、前年の同じ時期より7割多い売上を上げ、営業利益をほぼ倍にする、というのが据え置いた予想の前提です。この会社の場合、期末に納品が寄るのかもしれません。
ただ、なぜ据え置けるのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに理由があるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。
利益は本物で、予想は古い、と考えています
この決算の受け取り方は二つあると思います。利益率の改善は単価の実力で、予想のほうが期初のまま古いという見方。もう一つは、利益率は資産計上で高く見えているだけで、第4四半期の大型案件で帳尻を合わせる見方です。
私は前者だと考えています。理由は、利益率の改善が販管費ではなく売上原価の側に出ていて、研究開発費の振り替えでは説明しにくいからです。現金も自社株買いを吸収して増えています。
それでも、残り3か月に前年の7割増を積む前提が動いていないことは残ります。心配性なので、達成できなかったときに何が起きるかより、達成できると会社側が判断した材料が何かのほうが気になります。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
この9か月で研究開発費のうちいくらを資産に振り替えたのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント