はじめに
若い女性向けの服のブランド「ANAP」を持つ会社です。街で遊ぶときの普段着を、お店や通販で買う人が客層です。子ども服や雑貨も扱っていて、ほかのお店への卸売りや、ブランドの名前を貸す商売もしています。
前の期からは、服以外の事業も抱えるようになりました。エステやリラクゼーションのサロンを運営する子会社と、ビットコインなどの暗号資産を持つ投資の子会社です。借入金を返しきれなくなった時期があり、取引銀行と話し合って債務を減らしてもらう手続き(事業再生ADR)も通っています。
いまは、服屋とサロンと暗号資産の保有が、一つの会社にまとまった形です。このうちどれが損益を決めているのかを確かめたくて、短信を開きました。
この決算で何が起きたか
10月15日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 21億2,800万円 | 17億7,400万円 | +20.0% |
| 営業利益 | △21億5,500万円 | △14億5,600万円 | — |
| 経常利益 | △67億6,200万円 | △3億1,600万円 | — |
| 純利益 | △73億2,300万円 | △26億6,000万円 | — |
売上は2割増えました。それでも、表の下の段に行くほど赤字が深くなっています。
売上が2割増えて、粗利は半分になった
最初に引っかかったのは、損益計算書の売上総利益です。
| 項目 | 前の期 | 今期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 17億7,400万円 | 21億2,800万円 |
| 売上原価 | 8億9,000万円 | 16億9,300万円 |
| 売上総利益 | 8億8,400万円 | 4億3,500万円 |
売上原価がほぼ倍になり、粗利は半分になりました。売上100円あたりで見ると、前の期の粗利は50円近くありました。今期は20円ほどです。会社の説明文にも、売上高総利益率は20.4%と書いてあります。
なぜ原価率がここまで悪くなったのかは、決算短信には書かれていません。貸借対照表では、商品の在庫が2億1,600万円から1億2,100万円へ減っています。値を下げて在庫を売り切った分が混ざっているのかもしれません。
4つの事業は、どれも赤字だった
セグメントの表を開くと、報告している事業は4つともセグメント損失です。
| 事業 | 売上高 | 損失(今期) | 損失(前の期) |
|---|---|---|---|
| 店舗・卸売販売、ライセンス | 12億8,200万円 | △4億8,400万円 | △3億8,300万円 |
| インターネット販売 | 3億5,300万円 | △1億3,800万円 | △8,100万円 |
| エステ・リラクゼーションサロン | 4億9,200万円 | △5億6,200万円 | △2億6,200万円 |
| 投資関連 | — | △1,900万円 | △900万円 |
どの事業も、前の期より損失が広がっています。サロンは売上がほぼ横ばいのまま、損失が倍になりました。
表の右には「その他」の区分もあります。売上27万円に対して、損失が1億6,800万円です。前の期は小さな黒字でした。この区分で何をしているのかは、決算短信には書かれていません。
経常損失の6割強は、暗号資産の評価損
営業外費用に、暗号資産評価損43億7,400万円が載っています。経常損失67億6,200万円のうち、6割強がこの一行です。
前の期は逆で、暗号資産評価益12億1,800万円が営業外収益に入っていました。前の期の経常損失が3億円台で済んでいたのは、本業が良かったからではありません。評価益が営業損失を埋めていたからです。
つまり、この会社の経常損益は、持っている暗号資産の評価額で大きく振れます。服とサロンの赤字は、その下に毎年同じように積もっています。
現金は3億3,000万円、暗号資産は179億円
添付資料の10ページ目、キャッシュ・フロー計算書まで行きました。営業キャッシュ・フローは△22億7,200万円です。会社自身が、2019年8月期から8期続けてマイナスだと書いています。
投資キャッシュ・フローでは、暗号資産の取得に60億8,000万円を使っています。この取得額から、評価損の43億7,400万円を引きます。残るのは約17億円です。貸借対照表で暗号資産が増えた17億2,400万円と、ほぼ重なります。
その結果、総資産193億1,700万円のうち、暗号資産が179億7,600万円です。現金及び預金は3億3,000万円しかありません。
お金の出どころは財務キャッシュ・フローにあります。
| 主な項目 | 今期 |
|---|---|
| 短期借入金の返済 | △71億円 |
| 長期借入れによる収入 | 90億4,400万円 |
| 社債の発行 | 27億5,000万円 |
| 社債の償還 | △11億5,000万円 |
| 新株予約権の行使による収入 | 25億8,500万円 |
短期借入金50億円は、期末にゼロになりました。代わりに残ったのは、長期借入金88億6,500万円と社債16億円です。本業の赤字と暗号資産の買い増しを、借入れと社債と新株で賄った1年です。
親会社単体の純資産が、マイナスになっている
短信の2ページ目には、親会社だけの数字が参考として載っています。
| 親会社単体 | 前の期 | 今期 |
|---|---|---|
| 総資産 | 182億3,800万円 | 5億9,700万円 |
| 純資産 | 129億3,500万円 | △103億4,600万円 |
| 経常損失 | △58億9,100万円 | △258億1,400万円 |
グループ全体では純資産が79億8,000万円あります。それなのに、親会社だけで見ると103億円を超える債務超過です。……いや、これは変だ。グループの最終損失は73億円台なのに、親会社の経常損失は258億円あります。
親会社の資産がなぜ1年でここまで減ったのか、258億円の損失が何から生じたのかは、決算短信には書かれていません。表紙では決算補足説明資料が「無」とされていて、有価証券報告書は11月27日に提出予定とあります。暗号資産を子会社へ移したことと関係があるのかもしれません。
会社はどう説明しているか
4ページ目の説明文は、ブランドの作り直しを前に出しています。客の年齢層に合わせた商品づくり、原価率の見直し、SNSでの広告、通販の仕組みの全面的な見直しです。新しい子会社については「売上・利益ともに厳しい状況が続いております」と、自分で書いています。
インターネット販売は、不採算の他社サイトから撤退したと説明されています。それでも売上はほぼ倍になり、損失も広がりました。会社は「その効果は限定的」と認めています。
継続企業の前提についての注記もあります。会社は「継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます」と書いています。
本業が苦しいという説明は、そのまま受け取ります。理由は、セグメントの表と合っているからです。一方で「債務超過は解消しております」という一文は、グループ全体の話です。親会社単体のマイナスについては、決算短信の説明文の中で触れられていません。
来期の予想は「未定」
2027年8月期の業績予想は出ていません。グループ経営への転換を進めている最中で、合理的な数字を出すのが難しい、というのが会社の説明です。配当は来期も0円と書かれています。
会社が示したのは、配当を出さないことまでです。売上も利益も、来期をどう見込んでいるのかは分かりません。予想が無い以上、ここで進み具合を測ることもできません。
私はどう読んだか
私は、服とサロンの立て直しは、まだ数字に出ていないという見方をしています。理由は、売上が2割増えても粗利が半分になり、事業が4つとも前の期より損失を広げているからです。
最終損益を決めているのは、服ではなく暗号資産の評価額です。前の期の評価益がその構図を見えにくくしていました。どちらに振れるかは、私には分かりません。
心配性なので、いちばん頭に残っているのは親会社単体の純資産です。グループでは資産超過、親会社では大きな債務超過。この差の中身を、有価証券報告書で確かめるつもりです。
出典:決算短信(会社発表)
親会社単体の経常損失258億1,400万円が、何から生じたものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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