はじめに
ヤマトインターナショナルは、ワニのマークの「クロコダイル」という服のブランドの会社です。ポロシャツやニット、シャツ、上着といった普段着を自分たちで企画しています。主な売り場は、スーパーの衣料品売り場の一角に置いた自社のコーナーです。静岡の実家の近くのスーパーにも、紳士服売り場の奥にありました。父が休みの日に着ていたポロシャツも、たぶんこれです。
買うのは、長くこのブランドを着てきた客が中心です。会社はいま、次の世代の客を取りにいこうとしています。ほかに、海外の服のブランドの商標を持って使用料を受け取る事業と、自社のビルを貸す事業があります。物流は子会社が受け持っています。
本業の赤字が広がり、最終利益は増えました
10月9日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 198億8,200万円 | 194億4,400万円 | +2.2% |
| 営業利益 | △2億8,900万円 | △2億100万円 | — |
| 経常利益 | △1億円 | △6,200万円 | — |
| 純利益 | 2億300万円 | 1億4,300万円 | +42.1% |
売上は、前の期の減収から増収に戻りました。それでも営業損失は広がり、最終利益だけが増えています。上の3行と下の1行で、向きが合いません。
2年続けて、株の売却益が赤字を埋めています
損益計算書を下まで追うと、理由は特別利益の欄にありました。投資有価証券売却益の4億957万円が、経常損失をまるごと埋めています。
| 前の期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 経常損失 | △6,200万円 | △1億円 |
| 投資有価証券売却益 | 4億3,773万円 | 4億957万円 |
| 特別損失 | △1億3,064万円 | △4,156万円 |
| 税金等調整前当期純利益 | 2億4,508万円 | 2億6,731万円 |
引っかかったのは、前の期の欄です。前の期にも、同じ科目が計上されていました。……去年とまったく同じ形だ。
何を売ったのかは、短信には科目の名前までしか出てきません。決算説明資料には、政策保有株式を2028年度末までに簿価で3割減らす目標が書かれています。
売却益はこの方針から出ている、と私は受け取りました。方針である以上、持っている株が減れば、売れるものもいずれ尽きます。
現金が減った先は、仕入先への支払いでした
営業キャッシュ・フローは2期続けてマイナスです。中身を分けると、こうなります。
| 営業キャッシュ・フローの主な項目 | 前の期 | 今期 |
|---|---|---|
| 税金等調整前当期純利益 | 2億4,508万円 | 2億6,731万円 |
| 投資有価証券売却益(差し引き) | △4億3,773万円 | △4億957万円 |
| 棚卸資産の増加 | △3億1,373万円 | △1億1,717万円 |
| 仕入債務の減少 | △6億6,854万円 | △5億1,711万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △9億200万円 | △5億9,000万円 |
いちばん大きいのは仕入債務の減少です。貸借対照表では、電子記録債務が28億3,028万円から23億1,760万円へ減っていました。仕入先への支払いが進んだ分なので、使い道のはっきりした流出です。
気になるのは棚卸資産のほうです。商品及び製品は、23億7,297万円から25億1,004万円へ増えました。売上原価に含まれる在庫の評価の切り下げも、1,815万円から3,668万円へ倍ほどになっています。売れ残りが積み上がり、その値打ちを帳簿で削り始めている形です。
服の商売は黒字で、会社全体は赤字です
セグメントの表を開くと、赤字の出どころが分かります。
| セグメント利益 | 前の期 | 今期 |
|---|---|---|
| 繊維製品製造販売業 | 3億798万円 | 2億4,938万円 |
| 不動産賃貸事業 | 1億3,785万円 | 1億3,222万円 |
| 事業に配分していない管理部門の費用 | △6億4,734万円 | △6億7,069万円 |
| 営業損失 | △2億150万円 | △2億8,908万円 |
服の事業は、利益を減らしながらも黒字です。赤字になるのは、管理部門の費用を引いたあとでした。
減損の注記にも、この構図が出てきます。会社は全社の単位で「2期連続で営業損失を計上していることから将来の回収可能性を検討しましたが、回収可能価額が帳簿価額を上回ったため、減損は不要と判断しました」と書いています。
その判定に使った事業計画の主な仮定として、短信は「売上高成長率及び売上高総利益率の予測」を挙げています。この売上高総利益率、つまり粗利率は、今期54.7%で、前の期から1.7ポイント低下しました。減損が要らないという判断は、来期の計画と同じ前提に乗っている、と私は読みました。
配当は、純利益より多く払っています
今期、配当として払った現金は3億2,604万円で、純利益の2億300万円を上回ります。
方針は「年間配当金14円以上を前提に、配当性向80%以上の安定配当」です。来期も年14円で、表紙の配当性向は142.6%となっています。14円という下限が先に決まっているので、利益が少ない年は、性向のほうが大きく振れる仕組みです。
営業キャッシュ・フローがマイナスなので、配当と自己株式の取得は、手元の資金と株を売った代金から出ています。現金及び現金同等物は1年で7億1,100万円減り、54億6,800万円になりました。自己資本比率は76.1%あり、すぐに困る残高ではありません。ただ、この形を続けられる年数には限りがあります。
粗利率が落ちた理由は、説明資料のほうにありました
短信の説明文は、物価高による生活防衛意識の高まりと、気候の変化で服を買うきっかけが変わったことを挙げています。ただ、なぜ粗利率が落ちたのかは、短信には書かれていません。
説明資料によると、定価で売るはずの月に苦戦したそうです。売り切れなかった在庫を先に値引きして売ったので、粗利率が落ちた、とあります。メンズの在庫の消化については、会社自身が「十分とは言えず」と書いています。
同じ資料には、女性向けの服が伸びて、通期で初めてメンズを上回ったともあります。メンズは、取引先の店の閉館で売場が減ったそうです。
この説明は、在庫と評価の切り下げが増えた短信の数字と合っているので、そのまま受け取ります。ただ、在庫の処理が終わっていないと自ら書いている以上、来期の粗利率の戻りは、まだ見込みの段階だと考えています。
来期の黒字は、下期に偏った計画です
説明資料によると、会社は10月2日に今期の業績予想を修正していて、着地はほぼその修正値どおりでした。来期の予想は、短信の表紙に上期と通期の数字が出ています。
| 上期(予想) | 下期 | 通期(予想) | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 約98億円 | 203億円 |
| 営業利益 | 3,500万円 | 約1億1,500万円 | 1億5,000万円 |
| 経常利益 | 8,000万円 | 約1億7,000万円 | 2億5,000万円 |
| 純利益 | 6,000万円 | 約1億4,000万円 | 2億円 |
約の付いた下期の数字は、通期予想から上期予想を引いた私の引き算です。
今期の営業損失2億8,900万円を埋めたうえで、来期は1億5,000万円の黒字を出す予想です。足し合わせると、動かす幅は4億3,900万円になります。売上の伸びは2%ほどの計画なので、ほとんどを粗利率の回復と費用で埋める形になります。
来期の黒字より、2年続いた本業の赤字を重く受け取っています
この決算は、本業の赤字が少し深くなった年だと考えています。最終利益が増えたのは、株の売却益によるものです。理由は、粗利率を押し下げた在庫が、期末にまだ増えたままだからです。来期の黒字転換も、減損が要らないという判断も、同じ粗利率の戻りの上に乗っています。
服の事業そのものは黒字で、財務も厚く、すぐに何かが起きる会社ではありません。心配性なので悪いほうから先に数えましたが、この先どうなるかは分かりません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.yamatointr.co.jp/wp-content/uploads/2026/01/261009_4Q_tanshin.pdf
来期の営業利益1億5,000万円を、粗利率をどこまで戻す前提で置いたのかは、短信からも説明資料からも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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