イリソ電子工業(6908)2026年3月期 通期決算分析――過去最高の売上を、まだ受け取れません

イリソ電子工業(6908)2026年3月期 通期決算分析――過去最高の売上を、まだ受け取れません 決算を読む

車の中で、電気の信号をつなぐ部品の会社です

イリソ電子工業は、コネクターを作っている会社です。コネクターは、基板と基板、基板と配線をつなぐ小さな差し込み口です。

いちばん大きなお客さんは自動車です。車の中で扱う情報が増えるほど、速く大量の信号を通すコネクターが必要になります。電気自動車やハイブリッド車の駆動まわりにも使われています。

ほかには、工場の自動化機械、ゲーム機、家電、電力の管理に使う機器向けがあります。製品の多くは、お客さんごとに設計する特注品です。

売上は過去最高、営業利益は横ばいでした

2026年9月30日に出た、2026年3月期の通期決算です。3月期の会社としては、かなり遅い発表です。第三者委員会から調査報告書を受け取ったのが9月28日で、短信はその2日後に出ています。

今回前年同期増減率
売上高619億6,100万円563億8,500万円+9.9%
営業利益54億3,600万円54億4,900万円−0.2%
経常利益61億3,200万円55億6,700万円+10.1%
純利益25億5,300万円25億1,200万円+1.6%

会社は、この売上を過去最高と書いています。

第三者委員会が、海外子会社の売上の前倒し計上を認めていました

短信の13ページ目、「追加情報」の欄に長い文章があります。海外子会社で、労務紛争に絡む不適切な金銭の支払いの疑いが出ました。2026年2月に調査委員会を置き、その後に別の問題が見つかっています。4月には、第三者委員会へ切り替えました。

委員会が見つけたものとして、短信には次のものが並んでいます。

  • 本社での、品質管理・品質保証に関するデータの改ざん
  • 複数の海外子会社での、売上の前倒し計上
  • 海外子会社での、未確定の決算数値の使用
  • 本社と海外子会社での、在庫と固定資産の損失計上の遅れ

会社はこれを受けて、過去の連結財務諸表を訂正すると書いています。訂正で売上や利益がいくら変わるのかは、決算短信には書かれていません。

引っかかったのは、表紙の注記事項です。過去の数字を誤りのために直したかどうかを示す「修正再表示」の欄が、「無」になっています。……いや、これは変だ。過去を訂正すると書いた同じ短信で、修正再表示は無い。前年同期の欄の数字が訂正後のものなのか、訂正前のものなのか、私には読み取れませんでした。

過去最高という言葉も、前年と比べた増減率も、この土台の上に乗っています。

売上が増えたのに、粗利は減っています

訂正の話をいったん脇に置いて、損益計算書の中を見ます。

前期今期
売上高563億8,500万円619億6,100万円
売上原価383億7,100万円443億9,300万円
売上総利益180億1,300万円175億6,800万円
販売費及び一般管理費125億6,400万円121億3,100万円
営業利益54億4,900万円54億3,600万円

売上の増えた額より、売上原価の増えた額のほうが大きくなっています。粗利は、前期の180億1,300万円から、今期は175億6,800万円になりました。差し引くと、4億4,500万円の減少です。営業利益が横ばいで済んだのは、販売費と一般管理費が減ったからです。

地域ごとの利益を並べると、偏りがはっきりします。

セグメント利益前期今期
日本43億7,800万円23億8,700万円
アジア33億9,100万円60億800万円
欧州1,000万円5億円
北米8,300万円100万円未満の損失

短信には親会社単体の業績も載っていて、単体の営業損益は7億9,600万円の赤字です。前期は11億7,600万円の黒字でした。

伸びたのはアジアで、前倒し計上が見つかったのも海外子会社です。ただ、この2つが関係あるのかは、短信からは分かりません。

最終利益は、補助金と調査費用がほぼ打ち消し合っています

経常利益が1割伸びたのは、本業の外の力です。営業外で為替差益が4億2,400万円出ています。前期は為替差損でした。

特別損益では、国から受けた補助金14億400万円と、第三者委員会などの調査費用13億3,400万円が、ほぼ同じ額で向き合っています。

税金も重くなりました。貸借対照表の繰延税金資産が、14億5,900万円から3億9,900万円へ減りました。損益計算書では、法人税等調整額が12億5,600万円の負担になっています。前期は4億300万円の戻りでした。税引前の利益は8割あまり増えたのに、最終利益がわずかしか伸びなかったのは、このためです。なぜ取り崩したのかは、決算短信には書かれていません。

現金は、きちんと入ってきています

私はキャッシュ・フロー計算書を先に確かめる癖があります。営業キャッシュ・フローは109億6,400万円のプラスでした。前期より1割ほど減りましたが、売上が立っているのに現金が入らない、という形ではありません。減価償却費の68億2,400万円が、利益の薄さを埋めています。

減った理由の一つは、仕入債務が減った分として24億5,100万円が出ていったことです。反対に、補助金の受け取り15億1,300万円が営業の中に入っています。

調査費用は、まだ大半が払われていません。貸借対照表には特別調査費用等引当金が12億8,400万円残っています。品質関連費用引当金も、新しく1億1,600万円立っています。

会社は原材料の値上がりを理由に挙げています

会社は短信の説明文で、利益面を「原材料価格高騰等の影響を受けたものの、原価低減や構造改革効果により」と書いています。損益計算書の形とは合っています。

ただ、この説明文には、前倒し計上や損失計上の遅れが今期の利益にどう効いたのかが出てきません。第三者委員会に触れているのは、純利益のところで調査費用に言及した一か所だけです。この説明は、半分だけ受け取っておきます。

来期は、営業利益を3分の1ほど減らす予想です

表紙に載っている来期の予想を並べます。

2027年3月期 予想金額今期比
売上高670億円+8.1%
営業利益35億円−35.6%
経常利益27億円−56.0%
純利益16億円−37.3%

売上は1割近く伸ばすのに、利益はどれも大きく減る予想です。気になるのは、経常利益が営業利益を下回っていることです。営業利益の35億円に対して、経常利益は27億円です。その差の8億円を、本業の外で失う見込みになります。

今期は逆で、経常利益の61億3,200万円が、営業利益の54億3,600万円を上回っていました。本業の外で、6億9,600万円を上乗せしていたことになります。この差の理由は、決算短信には書かれていません。為替の前提は、1ドル155円、1ユーロ180円です。人民元は、1元22円と置いています。

配当は、来期が「未定」です。今期は100円でした。表紙の配当性向は125.4%とあります。私の割り算は、配当の100円を1株利益の119.59円で割るものです。答えは84%ほどになります。どの数字を基にした率なのか、合わせることができませんでした。

私は、慎重な側で受け取りました

売上の数字は、訂正の影響が分かるまで横に置きます。そうしても残る事実が2つあります。売上が増えたのに粗利が減ったこと。会社自身が、来期の営業利益を大きく減らす予想を出していることです。

私はこの決算を、稼ぐ力が売上ほどは伸びていない決算だと考えています。理由は、この2つがどちらも会社自身の出した数字で、訂正がどちらに転んでも消えない種類の話だからです。現金の入り方と財務の厚さは確かで、そこは心配していません。上がるかは知りません。

表紙には「決算補足説明資料作成の有無:有」とあります。訂正の中身はそちらに書かれているのかもしれませんが、私はまだ開いていません。

出典

出典:決算短信(会社発表)

決算短信
決算短信 決算短信の資料はこちらをご覧ください。

過去の決算の訂正で、売上と利益がそれぞれいくら変わるのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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