はじめに
とうもろこしから澱粉を取り出している会社です。澱粉は、米菓の生地や外食の揚げ物の衣に使われます。加工食品のとろみ付けにも入っています。紙を作るときにも使うので、製紙会社も買い手です。
澱粉をさらに分解すると、甘い液体になります。これが糖化品で、清涼飲料の甘みなどに使われます。売上の6割あまりがこの糖化品です。暑い夏ほど飲料が売れるので、天気で数字が動きます。
とうもろこしのうち澱粉にならない部分も、捨てずに副産物として売っています。原料のとうもろこしは米国から輸入しています。そのため、米国の穀物の値段、為替、船の運賃の3つが、そのまま仕入れに響きます。
売上は少し、利益は3割増えた四半期
7月31日に出た第1四半期決算です。対象は4月から6月の3か月です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 175億8,100万円 | 171億9,400万円 | +2.3% |
| 営業利益 | 10億3,900万円 | 7億8,100万円 | +33.0% |
| 経常利益 | 10億6,500万円 | 8億9,400万円 | +19.2% |
| 純利益 | 7億2,900万円 | 6億3,400万円 | +14.8% |
売上の伸びは2%ほどです。それに対して、営業利益は3割増えています。まずこの差がどこから来たのかを探しました。
原料は高くなったと書いてあるのに、売上原価がほぼ動いていない
短信の4ページ目で、会社は原料の話をしています。シカゴのとうもろこしの値段は前年より低い水準でした。それでも、円安と海上運賃の上昇で輸入価格が高くなり、原料調達コストは増加した、という説明です。
そのうえで損益計算書を開くと、売上原価は141億4,300万円から141億6,300万円へ。増えたのは2,000万円だけです。売上高は3億8,700万円増えています。つまり、増えた売上のほとんどが、そのまま粗利に残ったことになります。
……原料が高くなったと書いた同じ短信で、原価がほとんど動いていない。ここで引っかかりました。
増えた売上の9割近くは、副産物でした
手がかりは、同じ4ページ目にある部門別の説明にありました。この会社は事業が1つなので、セグメント情報の表は省略されています。そのかわり、説明文の中に部門ごとの売上が書かれています。
| 部門 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 澱粉 | 35億4千万円 | +2.1% |
| 糖化品 | 112億6千万円 | −0.3% |
| ファインケミカル | 6億3千万円 | +1.4% |
| 副産物 | 21億3千万円 | +19.1% |
出どころ:短信4ページ目の説明文。金額は会社の書き方のままです。
副産物の前年の売上は、21億3千万円を1.191で割って、およそ17億9千万円です。1年で約3億4千万円増えたことになります。売上全体の増加は3億8,700万円でした。その9割近くを副産物が占めています。売上の中心である糖化品は、わずかに減っていました。
副産物が増えた理由も、短信に書いてあります。主製品の出荷が増えて発生量が増えたこと。それに、一部製品の販売価格が前年同期を上回ったことです。ここまでは短信の数字と説明です。
副産物は、澱粉を作れば必ず出てくるものです。副産物のために原料を買い足すわけではないので、値段が良くなったぶんの多くは粗利に残ります。原料が高くなったぶんを、副産物の値段の改善が埋めた、と私は読みました。
原価を抑えたものは、ほかにもあります。9ページ目の注記によると、減価償却費は7億4,800万円から6億9,100万円へ減っています。差は5,700万円です。
経常利益の伸びが鈍いのは、持分法の利益が減ったから
営業利益は3割増えましたが、経常利益の伸びは2割に届いていません。本業の外で、減ったものがあるということです。
持分法による投資利益が、1億1,900万円から2,600万円に減っていました。出資先の会社が出した利益のうち、持ち分に当たるぶんです。どの出資先で何があったのかは、決算短信には書かれていません。
キャッシュ・フロー計算書のかわりに、貸借対照表を追う
私はいつも、短信の後ろのほうにあるキャッシュ・フロー計算書まで行きます。今回その場所には、「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」という注記がありました。第1四半期に作らない会社は、いまは珍しくありません。
そこで、貸借対照表で3月末から6月末への動きを追いました。
| 科目 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 130億4,200万円 | 151億8,600万円 |
| 電子記録債権 | 14億9,000万円 | 20億3,600万円 |
| 買掛金 | 22億200万円 | 12億7,800万円 |
| 賞与引当金 | 12億3,500万円 | 3億700万円 |
| 短期借入金 | 80億円 | 110億円 |
| 現金及び預金 | 3億3,800万円 | 2億6,100万円 |
出どころ:短信の四半期連結貸借対照表。
売った代金のうち、まだ受け取っていないぶんが膨らんでいます。その一方で、仕入先への支払いと賞与の支払いは済ませています。足りない分は、短期借入金を30億円増やして埋めた形です。同じ3か月の間に、自己株式も3億7,900万円から6億3,400万円に増えていました。
これが毎年の6月末の姿なのかどうかは、分かりません。短信の貸借対照表は3月末と比べているだけで、前年の6月末の残高は載っていないからです。4月から6月は、大型連休があり、夏に向けて出荷が増える時期です。売掛金が膨らむのは、売上の季節の形だと私は考えています。
会社の説明は、売上までは丁寧です
会社の説明は、販売の話が中心です。大型連休と外食の回復で、食品用の澱粉と糖化品は概ね堅調でした。製紙会社向けは、新聞や雑誌のデジタル化で数量が減っています。糖化品では、気温が例年より低めだったことと節約志向が重なり、飲料向けが伸び悩みました。
この販売の話は部門別の数字と合っているので、そのまま受け取ります。
一方で、営業利益が3割増えた理由は、短信の説明文には直接書かれていません。表紙には「決算補足説明資料作成の有無:無」とあります。表紙を見るかぎり、この決算について会社が用意した資料は、短信だけです。利益の理由は、損益計算書から組み立てることになります。
半分を超えた進み具合は、前年より遅いくらいでした
| 第1四半期 | 通期予想 | 進み具合 | 残り9か月に要る額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 175億8,100万円 | 655億円 | 約26.8% | 約479億1,900万円 |
| 営業利益 | 10億3,900万円 | 19億円 | 約54.7% | 約8億6,100万円 |
| 経常利益 | 10億6,500万円 | 20億円 | 約53.2% | 約9億3,500万円 |
| 純利益 | 7億2,900万円 | 15億円 | 約48.6% | 約7億7,100万円 |
約の付いた数字は、表紙の通期予想と第1四半期の実績から、私が割り算・引き算で出したものです。
営業利益は、3か月で通期予想の半分を超えました。この時期の目安は4分の1なので、ずいぶん先を走っているように見えます。それでも会社は、4月30日に出した予想を変えていません。
ところが前年と並べると、この進み具合は早すぎる数字ではありません。表紙の通期予想19億円には、前期比+51.8%と書いてあります。19億円を1.518で割り戻すと、前期の営業利益はおよそ12億5,200万円です。前年の第1四半期は7億8,100万円でした。前年は12億5,200万円の6割あまりを、最初の3か月で稼いでいたことになります。
| 営業利益 | 4月〜6月 | 7月〜翌3月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前期 実績 | 7億8,100万円 | 約4億7,100万円 | 約12億5,200万円 |
| 今期(4〜6月は実績、ほかは会社予想) | 10億3,900万円 | 約8億6,100万円 | 19億円 |
約の付いた数字は、表紙の増減率+51.8%から割り戻して引いたものです。
前年に4億7,100万円だった9か月で、今年は8億6,100万円を稼ぐ計画です。前年の1.8倍にあたります。
据え置きは自然なことだと考えています
私は、予想を動かさなかったのは自然なことだという見方をしています。理由は、この会社の利益はもともと年の初めに偏っていて、今年の進み具合は前年より遅いくらいだからです。控えめな予想を出しておいて、あとで引き上げる形にはなっていません。
心配性なので、下振れのほうを先に考えます。残りの9か月で前年の1.8倍が要り、その支えのひとつは副産物の値段です。糖化品の飲料向けが本番を迎えるのは7月から9月ですが、4月から6月の時点で、すでに気温に足を引かれていました。
この先どうなるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260728500472.pdf
原料が高くなったのに粗利が増えた理由のうち、副産物の値段で埋まったぶんとそれ以外のぶんの内訳は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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