エンプラス(6961)2027年3月期 第1四半期決算分析――減った現金は設備に回ったと読みました

エンプラス(6961)2027年3月期 第1四半期決算分析――減った現金は設備に回ったと読みました 決算を読む

半導体を出荷前に試すための、差し込み口の部品

エンプラスは、樹脂を細かく成形して部品を作る会社です。いま中心にあるのは、半導体の検査で使うソケットです。できあがったチップを検査装置につなぐための受け口で、チップを差し込んで電気を通し、正しく動くかを確かめます。熱をかけて長く動かし、初期の不良をふるい落とす試験に使うソケットもあります。

買うのは、チップを作る会社や、検査を請け負う会社です。チップの形が変われば受け口も作り直しになります。新しい半導体が出るたびに、注文が生まれる商売です。

ほかに、光通信の部品、テレビの画面の裏で光を広げるレンズ、自動車の歯車、遺伝子検査に使う器具も作っています。事業は4つに分かれていますが、今回の決算は、そのうち半導体の1つでほとんど説明がつきます。

売上が4割増え、営業利益は2.5倍になった3か月

7月29日に出た第1四半期決算です。4月から6月の3か月分になります。

今回前年同期増減率
売上高125億7,200万円89億9,900万円+39.7%
営業利益23億2,900万円9億500万円+157.2%
経常利益24億400万円8億2,500万円+191.2%
純利益17億8,200万円3億6,200万円+391.9%

営業利益率は、前年の1割ほどから2割近くまで上がりました。増えた売上の多くが、そのまま利益に落ちています。

利益の9割近くを、半導体の事業が稼いでいる

事業売上 前年売上 今回利益 前年利益 今回
半導体(Semiconductor)48億8,800万円78億7,800万円8億6,600万円20億1,200万円
遺伝子検査(Life Science)5億1,600万円2億7,600万円△1,000万円700万円
光通信(Digital Communication)4億2,000万円4億5,700万円△4,300万円△1億2,100万円
自動車の歯車(Energy Saving Solution)31億7,300万円39億5,900万円9,200万円4億3,000万円

半導体の事業だけで、利益は20億1,200万円あります。全社の営業利益23億2,900万円の、9割近くがここから出ています。

短信の4ページ目によると、伸びたのはAIサーバー向けです。GPUとASICに加えて、今回は「新たにCPU関連の需要が増加しました」とあります。サーバー、自動車、スマートフォン向けのどれも増えています。

小さく引っかかったのは光通信です。売上は1割近く増えたのに、赤字は3倍近くに広がりました。AI向けの次世代品で量産が始まったと書かれていますが、赤字が広がった理由は短信には書かれていません。立ち上げの費用が先に出ている段階かもしれません。

純利益が5倍近くになったのには、前年の損が消えたことも効いています。前年同期には事業再構築費用が1億9,800万円あり、為替差損も1億5,700万円ありました。今回はそれぞれゼロと2,400万円です。ただ営業利益の段階で2.5倍なので、増益の中身は本業のほうです。

利益が出た3か月に、現金が67億円減っている

ここがいちばん長く見た場所です。3月末に238億1,700万円あった現金及び預金が、6月末には170億6,500万円になっています。減ったのは67億5,100万円です。純利益が17億8,200万円出た同じ3か月の話です。

この短信には、キャッシュ・フロー計算書が付いていません。11ページ目の注記に「作成しておりません」とあります。第1四半期では作らない会社もあるので、それ自体はおかしなことではありません。そのぶん、現金の行き先は貸借対照表の増減から追うことになります。

科目3月末6月末
現金及び預金238億1,700万円170億6,500万円
建設仮勘定92億5,200万円137億8,800万円
原材料及び貯蔵品32億9,500万円52億7,900万円
受取手形及び売掛金89億6,700万円105億4,900万円
ソフトウエア2億7,600万円22億6,900万円
ソフトウエア仮勘定21億400万円4億1,900万円

いちばん大きいのは建設仮勘定です。まだ完成していない設備にかけたお金を置いておく科目で、6月末から3月末を引くと、3か月で45億3,600万円増えています。原材料は19億8,400万円、売掛金は15億8,100万円の増加です。

……いや、これは消えたのではなく、形が変わっただけだ。

売掛金は、売上が4割増えれば増えるものなので、気にしていません。自己資本比率は86.9%のままです。建設仮勘定で何を作っているのかは、短信には書かれていません。原材料の積み増しが注文への備えなのか、部材を早めに押さえたのかも、短信には書かれていません。

もう一つ、この先の費用につながる動きがあります。ソフトウエア仮勘定が4億円ほどまで減り、その分がソフトウエアに移りました。作っていたシステムを使い始めた形です。使い始めれば償却が始まります。減価償却費は前年同期の5億2,400万円から7億8,400万円へ増えています。137億円を超える建設仮勘定も、完成すれば償却が始まります。

会社が自分で書いている、AIの先の心配

会社の説明は明快です。AIエージェントが広がってGPUとASIC向けの伸びが速まり、そこへCPU向けが加わりました。サーバー向けの需要はこの先も増えると想定し、供給網を分散させる取り組みを進めている、という書き方です。

半導体の事業の数字は、この説明どおりに動いています。そこは受け取ってかまわないと考えています。

一方で、同じ説明文の冒頭には、世界経済を下に振らせかねない材料として「AI投資の過熱に伴う調整の動き」が挙げられています。稼ぎの9割近くをAIサーバー向けに頼っている会社が、自分でその調整を心配として書いています。ここは頭に置いておきます。

遺伝子検査は、一部の量産品の生産終了と、米国の顧客の在庫調整で落ち込みました。テレビ向けのレンズも弱い、とあります。

7月から先を、会社はかなり控えめに置いている

第1四半期 実績上期 予想通期 予想通期への進み具合
売上高125億7,200万円243億円480億円約26%
営業利益23億2,900万円39億円64億円約36%

約の付いた数字は、実績を通期予想で私が割ったものです。

予想は4月30日に出したもので、今回は修正していません。上期の営業利益の予想は39億円です。そこから第1四半期の23億2,900万円を引くと、7月から9月の3か月は15億7,100万円です。第1四半期より3分の1ほど少なくなります。通期の予想は64億円です。上期の分を引くと、下期は25億円になります。半年でこれだけです。

残り9か月の営業利益は、通期予想から第1四半期の実績を引いた分です。前年の同じ期間と比べると、2割以上減る見込みになっています。売上のほうも、残り9か月は前年より5%ほど多いだけ、というのが私の引き算です。第1四半期の4割増とは、ずいぶん差があります。

私はどう読んだか

予想が4月末のまま古いのか、会社が後半の減速を本当に見込んでいるのか。この2つのどちらかです。

私は、予想が古いほうの見方をしています。理由は、CPU向けの需要は短信が「新たに」と書いているとおり今期に出てきたもので、4月末の予想には入りようがなかったからです。売上を残り9か月で5%しか伸ばさない見込みは、その前提のままに見えます。

ただ、利益の減速がまるごと作り話だとも考えていません。償却はすでに増えはじめていて、建設中の設備が動き出せばさらに重くなります。利益率が2割近い水準で続くかどうかは、そこで決まります。上がるかは知りません。

表紙には、決算補足説明資料を作ったとあります。予想を据え置いた理由はそちらにあるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260729/140120260729501621.pdf

建設仮勘定に積まれた137億8,800万円が何の設備で、いつ動き出すのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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